関西電力(9503) – 送電線に近接する樹木の保安伐採業務等に関する調査結果について

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開示日時:2022/06/13 15:00:00

損益

決算期 売上高 営業益 経常益 EPS
2018.03 313,363,200 22,755,100 23,169,200 170.01
2019.03 330,766,100 20,485,400 19,082,200 128.83
2020.03 318,425,900 20,695,700 20,053,800 145.55
2021.03 309,239,800 14,574,700 15,027,700 122.02

※金額の単位は[万円]

キャッシュフロー

決算期 フリーCF 営業CF
2018.03 62,326,600 62,326,600
2019.03 44,971,600 44,971,600
2020.03 46,340,800 46,340,800
2021.03 36,921,500 36,921,500

※金額の単位は[万円]

▼テキスト箇所の抽出

各 位 2022 年 6 月 13 日 関西電力株式会社 代表執行役社長 森本 孝 会 社 名 代 表 者 名 (コード:9503 東証プライム市場) 問 合 せ 先 T E L 経理部長 上西 隆弘 050-7105-9084 送電線に近接する樹木の保安伐採業務等に関する調査結果について 関西電力株式会社(以下、関西電力)は、グループ会社である関西電力送配電株式会社(以下、関西電力送配電)において、送電線に近接する樹木の保安伐採業務※で不適切な処理(6件)が判明したことを踏まえ、コンプライアンス委員会において、詳細な調査を実施することとしました。 関西電力は、本日、コンプライアンス委員会から、保安伐採業務等に関する調査報告書を受領しました。 今回の調査は、保安伐採業務における不適切処理の方法を網羅的かつ客観的に調査するとともに、その原因究明と再発防止対策の提言を行うことを目的に実施されました。調査の結果、前回に加えて、20件の不適切処理が、また、伐採以外の業務で3件の不適切処理が判明しました。 今回の事態について、重く受け止めており、改めて心からお詫び申し上げます。 不適切処理の本質的な要因として、 ・樹木が送電線に接触するまでに伐採を実行するという時間的制約 ・補償料に係る交渉余地の乏しい算定基準 ・事態を打開するための実効的な手段の乏しさ という伐採交渉業務に内在する構造的な問題が指摘されています。 関西電力送配電は、こうした指摘を真摯に受け止め、本報告書における提言を踏まえ、二度とこのような事態が起こらないようこれまでに取り組んできた再発防止対策に新たな取組みを追加し、徹底してまいります。 当社グループは、コンプライアンスを最優先にする企業風土の醸成を目指し、社会の皆さまからの信頼回復を成し遂げられるよう、引き続き、全力を尽くしてまいります。 ※法令(電気設備技術基準)に基づき、送電線と樹木の離隔を保持するため、樹木所有者(地権者)に承諾を得た上で協力会社に伐採業務を委託するとともに、地権者に補償料を支払っている。 以 上 別紙1:コンプライアンス委員会の調査結果の概要 別紙2:「再発防止策の提言」と再発防止対策 添付資料1:調査報告書(概要) 添付資料2:調査報告書 別紙1 1.調査対象事項 コンプライアンス委員会の調査結果の概要 調査事項①:関西電力送配電の電力所および送電センターが担当する伐採補償料の支払いに係る事案に関する調査、原因究明および再発防止対策 ※不適切処理の方法を漏れなく把握することを第一の目的に置いた上で、不適切処理が疑われる事案1,404件を抽出。そこから不適切処理の方法の類型ごとに補償額の大きなもの等の条件でさらに抽出し、サンプル調査(48件)を実施。また、アンケート調査により特定できた事案(8件)の調査を実施。 調査事項②:関西電力送配電が取り扱う調査事項①以外の伐採補償料の支払い業務における同種事例に関する調査 調査事項③:その他同種事例に関する調査 2.調査期間 2021年9月14日~2022年6月12日 3.本調査により不適切な処理が判明した事案 [調査事項①] (1)一定範囲に及ぶ地区の樹木所有者との伐採交渉で違反が行われていた事案 ・北陸支社のA送電センターにおいて、支社および電力所内の幹部も了解の上で、特定地区の樹木所有者に対して、社内の基準単価を超える高額補償料を支払っていた。(2014 年から 2016 年の間に3件) ・東海支社のC送電センターにおいて、1983 年頃から高額の統一単価が設定された地域があり、当該地区の樹木所有者に対して、支社および電力所内の幹部も了解の上で、社内の基準単価を超える高額補償料を支払っていた。(2011 年から 2017 年の間に9件) なお、2017 年以降、減額交渉を行い、現在は一部樹木所有者との間で基準単価での合意が成立している。 (2)個々の樹木所有者との伐採交渉で違反が行われていた事案 ・個々の樹木所有者との伐採交渉の結果、社内の基準単価を超える高額補償料を支払っていた。(2011 年から 2018 年の間に8件※) ※姫路電力本部1件、和歌山電力本部2件、東海支社2件、北陸支社3件 [調査事項②] ・社内規程に違反する補償料の支払いの事実は認められなかった。 [調査事項③] 個別の不適切処理事案 ・滋賀支店において、1998 年に落氷雪起因の瓦破損に関する修繕費を支払っているが、交渉記録には実害が生じていないにも関わらず、瓦が破損したものとして処理する旨の記載があった。 ・奈良支店の送電線昇圧工事において、1998 年にマンションオーナーに対して支払われた騒音や粉じんへの対策費用や、1999 年に工事完了後に支払われたマンション外壁の洗浄費用について、騒音の程度等を検討した形跡がないなど、不適切な処理が行われた可能性が高い。 ・奈良支店の送電線工事(2016 年から 2018 年)において、畑を借りる際に補償料が高額になるよう、実際よりも補償単価の高い作物でりん議書が作成される等の不適切であったと強く推認される処理があった。 4.調査事項①に関する要因の分析 ・本質的な要因は、①樹木が送電線に接触するまでに伐採を実行しなければならないという時間的制約、②基準額を超える補償料を主張する樹木所有者の要求を受け容れることが許されていないという交渉の余地の乏しい算定基準、③交渉が難航した場合に事態を打開するための実効的な手段が乏しいという、伐採交渉業務に内在する構造的な問題である。 5.調査事項①に関する再発防止対策の提言 (1) 役職員に対する再発防止に向けた経営トップのメッセージおよび 定期的な教育・研修の実施 (2) 伐採交渉の現場の実情の直視と同種事案の掘り起こし (3) 交渉難航案件への組織的な対処 (4) 伐採交渉および合意ならびに補償料支払い手続きの透明性の向上 以 上 (1)役職員に対する再 発 防 止 に 向 けた 経 営 ト ッ プ のメ ッ セ ー ジ お よび 定 期 的 な 教育・研修の実施 (2)伐採交渉の現場の 実 情 の 直 視 と同 種 事 案 の 掘 り起こし (3)交渉難航案件への組織的対処 (4)伐採交渉および合 意な らび に 補償 料 支 払 手 続 の透明性の向上 「再発防止策の提言」と再発防止対策 別紙2 再発防止策の提言 実施中の再発防止対策 (継続) 強化する再発防止対策 (新たに追加) ○経営トップからメッセージを○調査報告書を踏まえ、経営トップ発信 からメッセージを発信 (2021.9 実施済) ○電気事業法に基づく伐採に関(2022.6) ○コンプライアンス、再発防止に係する職場教育を実施 (2021.9~実施中) る教育・研修の実施 (準備完了次第) ○コンプライアンスに係る職場ディスカッションの実施 (2021.11~実施中) ○交渉難航案件への組織的対応の強化(現場組織) (2021.9~実施中) ○業務フロー、検査方法見直し等による業務処理の適正化 (2021.9~実施中) ○交渉難航案件への組織的対応の強化(上位組織含む全社的対応) ※第三者を含めた補償料検討プロセスの適切性を検証する体制の整備 (準備完了次第) ○交渉難航案件に対する対応方針の明確化 (2022.6~) ○調査報告書の提言を踏まえた業務フロー、検査方法見直し等による業務処理のさらなる適正化 ※伐採承諾書の様式見直し、伐採補償以外の補償業務に関する運行ルールの明確化、伐採管理システムの仕様見直し等の対策を追加 (2022. 6~(システムの見直しは準備完了次第)) *調査事項③に関する調査および検討の結果を踏まえた対策を包含 以 上 調査報告書(概要)1 第1 調査の概要 1 調査開始の経緯 2021 年 6 月、関西電力送配電の X 電力所において、保安伐採業務の交渉担当者が、樹木所有者と伐採補償料の金額について交渉を行った際に、実際には伐採しない樹木も補償料額の算定基礎に含めて補償料額を水増しするとともに、伐採本数が水増しされた伐採工事の内容に基づき算出された過大な委託費をかんでんエンジニアリングに支払ったことが判明した。 上記事象の発覚を受け、大阪南電力本部において、過去 10 年分の保安伐採に係る伐採補償料の支払いについて当初調査を行った結果、実際の伐採工事とは異なる伐採内容に基づいて算出された過大な伐採補償料の支払いが行われていた事案が上記の事案を含め合計 6 件確認されたため、同年 9 月 14 日に開催された当委員会において、当委員会が主体となっての調査を開始することが決定された。 2 調査対象事項 調査事項① 本件(電力所及び送電センターの**〔係名〕が担当する伐採補償料の支払いに係る事案)に関する調査、原因究明及び再発防止対策の提言 調査事項② 関西電力送配電が取扱う調査事項①以外の伐採補償料の支払い業務における同種事例に関する調査 調査事項③ その他同種事例に関する調査 3 調査対象の抽出 当委員会は、調査事項①乃至③について、以下に述べる方法により調査対象を抽出し、抽出された事案について、関係書類の精査や関係者のヒアリングを実施した。 ⑴ 調査事項①について行った調査対象の抽出 ア 対象事案の抽出①(一定の基準による抽出) 当委員会は、調査事項①について、関西電力送配電の全電力本部の電力所及び 1 本調査報告書(概要)における略語は、調査報告書本文における略語のとおりである。 1 送電センターにおいて過去 10 年(2011 年 12 月 1 日から 2021 年 11 月 30 日まで)の間に伐採補償料の支払いが行われた事案のうち関西電力送配電による直営交渉が樹木所有者との間で行われた事案から、次の 6 類型に該当する特に不適切処理が疑われる二次抽出事案 1404 件を抽出した。この 6 類型は、当初 6 事案に係る不適切処理の手法、保安伐採業務の内容やそれまでの調査過程で判明した新たな不適切処理の手法を踏まえて策定したものである。 (6 類型の内容) 類型 1:不適切な処理に関する明らかな証拠となる資料やメモが残っている事案 類型 2:明らかに伐採補償額算定根拠〔樹種・樹径・本数〕と伐採実績が整合していない、又は明らかに伐採委託発注根拠〔樹種・樹径・本数〕と伐採実績が整合していない事案 類型 3:毎木調査と伐採をいずれも直営で実施している事案 類型 4:再毎木調査と直営による伐採の両方が行われている事案 類型 5:直営による毎木調査と所有者伐採の両方が行われている事案 類型 6:再毎木調査と所有者伐採の両方が行われている事案 上記の方法により抽出された 1404 件から次のア乃至ウで述べる方法により調査()()対象を抽出した。 (ア) A 送電センター及び B 送電センターの二次抽出事案の調査 A 送電センター及び B 送電センターの二次抽出事案については、不適切処理を疑わせる客観的証拠がある類型(類型 1 及び 2)の事案数が他の電力所又は送電センターと比較して多数に上ったことなどから、両送電センターの二次抽出事案12 件を独立した調査対象とした。 (イ) A 送電センター及び B 送電センター以外の電力所又は送電センターの二次抽出事案の調査 A 送電センター及び B 送電センター以外の 19 カ所の電力所及び送電センターについては、以下の方針に基づきサンプル調査を実施した。 まず、類型 1 については、いずれの事案についても不適切処理が行われた可能性が高いため、当初 6 事案に含まれる 1 事案を除く全 13 件を調査対象とした。 類型 2 については、毎木調査時点で作成された書類と伐採補償料の支払時点で作成された書類で伐採本数に大きな乖離があり、かつ樹木所有者に支払われた伐採補償料の金額が 100 万円以上の事案 8 件を抽出し調査対象とした。 また、類型 3~6 の事案については、伐採補償料の金額上位 2 件(合計 8 件)を抽出しサンプル調査を実施した。 2 (ウ) 全電力所及び送電センターの事案を網羅するための追加調査 当委員会は、上記(ア)及び(イ)の調査により、不適切処理の手法の網羅性を相当程度担保できたと判断したものの、上記調査対象には一部の電力所の事案が含まれていなかったため、上記ア及びイの調査対象とすることができなかった電力所の事案につき、電力所毎に調査対象 1 件(合計 7 件)を抽出しサンプル調査を実施した。 イ 対象事案の抽出②(アンケート結果による抽出) 当委員会は、本調査実施時に関西電力グループに属する会社に在職している者のうち、2011 年 12 月 1 日から 2021 年 11 月 30 日までの 10 年間に、①伐採業務を所管する係(担務)及び②①以外で地権者に金銭を支払う業務を所管する 係(担務)に所属したことのある者全員を対象として、アンケート調査を実施した。 アンケート対象者は、具体的には、過去 10 年間に関西電力送配電の工務部、用地部、配電部及び系統運用部に所属していた者並びに過去 10 年間に関西電力の総務室(用地部門)、立地室及び再生可能エネルギー事業本部に所属していた者であり、該当者は 6594 名であった。 上記アンケート調査の結果、伐採補償料の支払いについて不適切な処理があったとの回答があり、かつ具体的に事案を特定できた 8 件についても、上記アで抽出した事案の調査と並行して調査を実施した。 なお、当委員会は、本調査のために、2021 年 12 月 21 日から 2022 年 6 月 12 日まで、潮見坂綜合法律事務所の代表番号にホットラインを設置し、関西電力送配電工務部及び用地部並びに関西電力の総務室(用地部門)、立地室及び再生可能エネルギー事業本部に周知したが、設置期間中の受電件数は 0 件であった。 ⑵ 調査事項②について行った調査対象の抽出 当委員会は、関西電力送配電の用地部、配電部及び系統運用部の 3 部門の関係者からのヒアリングにより、調査事項②の調査対象業務を特定した。 ⑶ 調査事項③について行った調査対象の抽出 本調査においては、余件調査として、上記事案と同様の構造を持つ不正事案がないかという観点から、樹木所有者を含む地権者に対するその他の支払いに係る事案3 の調査を実施した。これが調査事項③の「その他同種事例に関する調査」である。 この調査にあたっては、関西電力送配電については、工務部及び用地部の担当者のヒアリングにより、関西電力については、経理部で取り扱っている伐採補償料以外の樹木所有者を含む地権者に対する支払に関するデータにより調査対象業務を特定した。 ⑷ 全調査事項に共通して行った調査対象の抽出 前記⑴イの調査事項①についてと同様、アンケート及びホットラインにより情報の提供を受けた事案についても、調査事項②及び③の調査対象とすることとした。 第2 調査事項①に関する調査及び検討の結果 1 前提事実 ⑴ 保安伐採の概要 ア 保安伐採の目的等 樹木等が送電線に接触した場合、電気の供給に重大な支障が生じるだけでなく、火災の発生等により公共の安全が阻害されるおそれもある。そのため、電気事業法(昭和 39 年法律第 170 号)第 39 条第 1 項及び第 56 条第 1 項の規定に基づき定められた電気設備に関する技術基準を定める省令(平成 9 年通商産業省令第 52号)の第 29 条は、「電線路の電線又は電車線等は、他の工作物又は植物と接近し、又は交さする場合には、他の工作物又は植物を損傷するおそれがなく、かつ、接触、断線等によって生じる感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。」と定めている。 関西電力送配電は、樹木の生育を考慮しつつ、技術基準の遵守、電気事故及び電気火災(山火事)防止、設備維持のために、保安伐採を実施している。関西電力送配電は、架空電線と樹木の離隔距離が法定離隔距離を下回るまでに近接樹木を計画的に処理するため、架空送電と樹木の離隔距離に応じて樹木をランク付けして、ランクの状況に応じて伐採業務を進めている。 イ 伐採補償料の定め方 4 保安伐採の対象である樹木は第三者の所有権の対象物であるから、当該樹木を 伐採するためには樹木所有者の承諾が必要である。関西電力送配電は、保安伐採の実施に当たり、樹木所有者との間において、伐採の実施とその対価である補償料について合意し、伐採実施後に当該合意に基づいて樹木所有者に対し補償料を支払っている。 関西電力送配電では、樹木所有者に対して支払うことができる補償料の上限が立木等損失補償取扱要綱指針において定められており、当該規程では、伐採する樹木の樹種や樹径等に応じて補償料の上限額が定められることとされている。 ⑵ 保安伐採業務の具体的内容 保安伐採業務は、概ね、①離隔調査、②用地調査、③毎木調査、④補償料シミュレーション、⑤伐採交渉、⑥法申請、⑦伐採工事及び⑧補償費支払いの各業務により構成される。 ア 伐採管理システムによる情報管理 2002 年より、関西電力送配電においては、伐採管理システムが導入され、保安伐採業務に関する情報の記録・保存が伐採管理システムにより行うことが可能に関西電力送配電は、外部事業者によるヘリ航測や巡視等の方法により、架空送電線に近接する樹木の有無、この調査により発見された樹木と架空送電の近接状況の調査を実施する。 関西電力送配電では、この調査の結果に基づいて、伐採管理システム上において、一定範囲の樹木群を対象とする「カタマリ」と呼ばれる管理単位を定める。 離隔調査の結果により樹木の伐採が必要と判断されたカタマリについては、用地調査が行われる。具体的には、当該土地及び樹木の所有者の調査、法令等に基づく制限内容の調査、立入承諾書の徴収、境界確認などが行われる。 なった。 イ 離隔調査 ウ 用地調査 エ 毎木調査 5 用地調査が終わると毎木調査が行われる。ここでは、調査範囲内にある樹木について、土地及び樹木の所有者ごとに、樹木の種類、胸高直径及び本数の調査が行われる。 毎木調査の結果については、伐採管理システム上で、電力所・送電センターの保守担当者から報告がなされ、電力所・電力センターの所長又は課長、或いは、電力所等の長が指示した場合には係長が承認する。 毎木調査の結果が承認されると、その後に入力内容を変更することはできない。毎木調査結果の承認がなされた後に、伐採工事の内容を当該調査結果とは異なるものとしたい場合には、再度毎木調査を実施し、その結果を伐採管理システムに登録することが必要である(再毎木調査)。 オ 補償料シミュレーション 毎木調査が終わると、電力所・送電センターの伐採用地担当者が補償料のシミュレーションを行う。 補償料の金額は、伐採管理システムに登録された毎木調査の結果(樹種、胸高直径、本数)に立木等損失補償取扱要綱指針で定められた基準を当てはめることにより算出されるものである。補償料シミュレーションで保守担当者がシステムに入力することになる主な項目は、①伐採実施者区分(先方伐採・当方伐採の別)、②伐採方法(枝払い・芯止め・根切の別)、③伐採方法、集積距離、索道架設距離に応じた補償単価の調整に係る係数、④補償係数(立木等損失補償取扱要綱指針に基づき上限単価を適正に補正するための係数)などである。 カ 伐採交渉 キ 法申請 電力所・送電センターの伐採用地担当者は、樹木所有者との間で伐採の可否と補償料の金額について交渉を行い、伐採承諾書を徴収する。 伐採承諾書には、各電力所・電力センターにおいて所定の必要事項を定めて記載した上で樹木所有者の署名・押印がなされている。本調査において確認した伐採承諾書については、カタマリごとに設定されている管理番号、伐採補償料の総額、振込先に関する情報、根切り・芯止めの別等の伐採の条件などが記載されているが、伐採対象の樹木の樹種・直径・本数の記載はなかった。 伐採工事の実施にあたって、森林法をはじめとする関係法令の定めにより、行6 政庁への許可申請又は届出などの行為を要することがある。これに必要な申請書類の作成及び申請手続に関する業務が法申請と呼ばれている業務である。 ク 伐採工事 電力所・送電センターの保守担当者は、かんでんエンジニアリングの担当者から伐倒作業の完了報告を受けた後、すみやかに樹木所有者と承諾書に記載された伐採条件に適合した伐倒作業がなされているか現地確認を行う。ヒアリングの結果によれば、この現地作業は、ときおり抜き打ちで実施されることもあるが、多くは、請負付託処理に基づいて伐採工事を受注するかんでんエンジニアリングから提出される竣工報告書と写真の確認をもって上記「現地確認」に代えている。この写真の内容から、毎木調査結果と実際の伐採結果の同一性を確認することはほとんど不可能である。 ケ 補償費支払い 伐採工事完了後、電力所・送電センターの伐採用地担当者は、伐採管理システム上で、樹木所有者から提出された伐採承諾書に基づいて、補償費支払いりん議を作成し、電力所・電力センターの所長又は課長の承認を得る。補償費支払いりん議は、必ず伐採管理システム上で行われなければならないとはされていない。実務上、伐採管理システムに登録されたデータとは別に補償費支払いりん議に係る情報を記録したファイルを作成して伐採管理システム外で処理することが可能である。 補償費支払いりん議の承認がなされると、基幹重点情報システムで会計データの入力が行われ、これに基づいて補償費の支払いが実行される。伐採管理システムと経理に関する基幹重点システムは別々のシステムとして構築されている。2019 年までは、伐採管理システムと経理システムとの連携が図られておらず、経理システムに必要な情報を直接入力することが必要であったが、2019 年以降は、システム連携が図られ、経理システムへの情報の直接入力は必要なくなった。但し、同年以後も引き続きデータ連携によることなく経理システムに必要な情報を直接入力することは可能である。 ⑷ かんでんエンジニアリングに対する保安伐採業務の請負付託処理 関西電力送配電の立木等損失補償取扱要綱指針上、電力所・送電センターの長の判断に基づき、保安伐採業務について請負付託処理を実施することができることと7 されている。実際には、上記の保安伐採業務のうち、カタマリ作成、離隔調査、用地調査、毎木調査、伐採交渉、法申請及び伐採工事は、関西電力送配電自らが実施するのではなく、かんでんエンジニアリングに委託するのが原則的形態となっている。関西電力送配電からこれらの業務を受託したかんでんエンジニアリングは、下請協力会社に対して、各業務を再委託することがあり、かかる場合は実際の作業は下請協力会社により行われている。 例外的に、これらの業務を関西電力送配電の従業員が行うこともある。このような業務形態は、「直営」と呼ばれている。 ⑸ 伐採交渉が難航した場合の対処方法 ア 伐採交渉業務の直営への切替 伐採交渉において、かんでんエンジニアリングの担当者による樹木所有者との交渉を一定回数経ても伐採承諾を得られない場合は、交渉不調として関西電力送配電に案件が返却され、以後、電力所・送電センターの伐採用地担当者による直営での伐採交渉が行われる。 イ **〔会議体名〕への報告 電力所・送電センターの長は、交渉難航案件のおそれがあるものについて、**〔会議体名〕にて報告及び情報提供を行う。 **〔会議体名〕及び**〔会議体名〕では、電力所・送電センターの長から報告された交渉難航案件のおそれがあるものについての情報共有や処理方針の決定な電力本部送電グループ長及び電力所・送電センターの長は、交渉難航案件のうち法的措置を行う必要がある案件について、本店送電グループの長に報告する。 どが行われている。 ウ 本店送電グループへの報告 エ 電気事業法による伐採 (ア) 制度の概要 電気事業法第 61 条 1 項による伐採を行うための要件は次の 3 つである。 8 ① 植物が電線路に障害を及ぼし又は及ぼすおそれがあること ② やむを得ないときであること ③ 経済産業大臣の許可を受けること ①の要件については、植物が電線に接触している場合は当然であるが、法定離隔距離が保たれていない場合にも、最悪の自然条件の下では地絡事故等の発生も想定されることから、法定の離隔距離が保たれていない場合又は現状のまま放置しておくと間もなく法定の離隔距離を保つことができなくなることが予想される場合等も含まれると解されている(経済産業省令和 2 年 6月「電気事業法第 61 条に基づく植物の伐採等に関する指針」3~4 頁)。 ②の要件については、この要件に当たるのは、植物の所有者が合理的な理由なく協議を拒否している、又は社会通念に照らして著しく過大な補償を要求している等協議の進展の余地が小さく当事者間での合意が困難と認められる場合や、植物の所有者が不明の場合等実質的に協議を行うことができない場合であると解されている(経済産業省令和 2 年 6 月「電気事業法第 61 条に基づく植物の伐採等に関する指針」4~5 頁)。 電気事業法第 61 条第 1 項による伐採の方法は、原則として枝打ち又は芯止めとされている(経済産業省令和 2 年 6 月「電気事業法第 61 条に基づく植物の伐採等に関する指針」10 頁)。そのため、電気事業法第 61 条第 1 項に基づく伐採を行ったとしても、一定の期間が経過した後に、再び樹木所有者との間で伐採交渉が必要になることがあり得る。 (イ) 電気事業法第 61 条第 1 項に基づく許可申請に係る実務の概要 電気事業法第 61 条第 1 項に基づく伐採を行おうとする場合、伐採対象を特定し、それが上記①の要件を満たすことを明らかにするため、当該案件を所管する電力所・送電センターにおいて、樹木所有者の立入承諾を得た上で、現地の測量が行われる。樹木所有者の立入承諾が得られない場合は、電気事業法第 59 条第 1 項により経済産業局長等の立入許可を得た上で、現地の測量が行われる。この場合の測量では、近接樹木のみを確認すれば足りる隔離調査とは異なり、樹木 1 本毎の測量が必要になる上に、樹種・直径・本数等を確認する毎木調査とは異なり、各樹木について地表からの高さや架空送電線との距離を調査しなければならないため、相当な負担が生じる。 電力所・送電センターでは、測量の結果に基づいて、伐採許可の申請に必要な書類(伐採許可申請書、交渉経過記載書面、位置図、対象植物明細書、対象植物平面図、実測縦断図、対象植物横断図等)の作成が行われる。 許可申請のための書類には、上記②の要件を満たすことを明らかにするた 9 め、それまで電力所・送電センターで行われてきた交渉の経過も記載される。実際に関西電力送配電が作成・提出した申請書類によれば、交渉経過記載書面には、植物の所有者らとの間で 1 年数ヶ月もの期間をかけて合計 10 回以上に及ぶ交渉が行われた旨が記載されており、相当程度長期間にわたり繰り返し交渉を行った末に申請に至っている。 電気事業法第 61 条第 1 項に基づく伐採についての標準的なスケジュールとしては、伐採許可の申請の約 4 ヶ月前までに現地測量の工事発注を行い、申請の約 1 ヶ月前までに産業保安監督部、経済産業局との事前協議を開始する。実際に許可がなされる時期は、申請から約 2 ヶ月が経った頃となるのが一般的である。 2 当初 6 事案に係る事実 ⑴ 当初 6 事案①(**〔送電線名〕No.**〔区間番号〕の事案) 2017 年 11 月頃に行われた当初の毎木調査の結果によれば、伐採対象の樹木の本数は 495 本であった。 樹木所有者との伐採交渉において、x 氏は、補償料シミュレーションにおいて立木等損失補償取扱要綱指針に上記の毎木調査結果をあてはめて算出された補償料(**〔金額〕円)に迫る**〔金額〕円の伐採補償料を提示したが、樹木所有者の承諾は得られず、樹木所有者より、総額**〔金額〕円以上であれば伐採に応じる旨の意向を示されたため、再毎木調査を実施して伐採範囲を拡大し、その結果拡大された範囲については、補償料算定の基礎にはするが実際には伐採しないことを決めた。 再毎木調査結果(伐採面積 2109 ㎡、伐採対象樹木 990 本)に基づいて行われた補償料シミュレーションの結果、補償料の上限額は約**〔金額〕円と算出された。 2020 年 12 月 2 日、x 氏は、伐採本数を 495 本とすることを前提として樹木所有者から伐採承諾書を取得したうえで、当初の毎木調査結果の 495 本のみを実際に伐採樹木所有者に対しては伐採補償料**〔金額〕円が支払われた。本件の伐採工事に係る委託料の金額は、再毎木調査の結果に基づき算出されたものであって、実際の伐採本数に基づき算出されたものではなかった。 x 氏の上司が本件の違反行為の存在を認識していたとは認められず、それを認識し得たとも認められない。 ⑵ 当初 6 事案②(**〔送電線名〕No.**〔区間番号〕の事案) した。 10 2017 年 5 月頃に行われた当初の毎木調査の結果は、対象箇所①は伐採面積 690 ㎡、伐採本数 135 本、対象箇所②は伐採面積 712 ㎡、伐採本数 161 本であった。 x 氏は、樹木所有者との交渉において、立木等損失補償取扱要綱指針に上記の毎木調査結果をあてはめて算出された補償料を上回る**〔金額〕円を要求されたため、この要求に応ずる以外にないと考え、**〔金額〕円を支払う内容で樹木所有者の承諾を得た。 2018 年 2 月、x 氏は、妥結した補償料と毎木調査の結果を整合させるため、再毎木調査により伐採本数を増やすこととして、かんでんエンジニアリング担当者に再毎木調査で増量して欲しい樹木の本数を直接伝えた。かんでんエンジニアリングは、x 氏からの指示通りに再毎木調査を実施し、その結果を伐採管理システムに入力した。この再毎木調査により、伐採管理システムに入力された毎木調査結果のデータ上、上記対象箇所②の伐採面積は 870 ㎡、伐採本数は 202 本にそれぞれ増加した。 x 氏は、かんでんエンジニアリング担当者に対し、伐採管理システムに入力されているデータ内容(再毎木調査結果)と異なるにもかかわらず、上記対象箇所②は当初毎木調査における本数(161 本)のみを伐採することを依頼した。この依頼の趣旨に沿って、かんでんエンジニアリングにより伐採が行われた。 再毎木調査により増量された上記対象箇所②の 41 本は伐採されていないにもかかわらず、再毎木調査後の増量本数を基礎に伐採管理システム上で計算された補償料が樹木所有者に支払われた。また、再毎木調査後の増量本数を基礎に計算された委託費がかんでんエンジニアリングに支払われた。 x 氏の上司が本件の違反行為の存在を認識していたとは認められず、それを認識し得たとも認められない。 であった。 ⑶ 当初 6 事案③(**〔送電線名〕No.**〔区間番号〕の事案) 2018 年 3 月に行われた当初の毎木調査結果は、伐採面積 389 ㎡、伐採本数 412 本x 氏は、樹木所有者との交渉において、立木等損失補償取扱要綱指針に上記の毎木調査結果をあてはめて算出された補償料を上回る**〔金額〕円を要求されたため、毎木調査結果と整合する補償料**〔金額〕円を隔年で 3 回支払うことにより総額**〔金額〕円を支払う方法を樹木所有者に提案して承諾を得た。 x 氏は、1 回目の伐採工事後、2 回目の補償料支払と毎木調査結果を整合させつつ、同時にかんでんエンジニアリングに支払う委託費を節約するため、架空の用地調査及び毎木調査を直営で実施することとした。そこで x 氏は、過去の毎木調査結果を参考に架空の調査結果(伐採面積 389 ㎡、伐採本数 473 本)を伐採管理システムに入力した。x 氏は、実際には伐採していないにもかかわらず、x 氏 1 名で架空の直営 11 伐採工事(対象本数は 473 本)を実施したものと装った。その後、架空の毎木調査結果を基礎に伐採管理システム上で計算された補償料が樹木所有者に支払われた。なお、本件においてかんでんエンジニアリングに対する委託費の過払いは発生していない。 x 氏の上司の中には、伐採管理システムに登録された毎木調査の結果のとおりに伐採がされていない可能性を認識し得たと認められる者がいた。但し、当該上司が本件の違反行為の具体的内容まで認識していたことや本件の違反行為に積極的に関与していたことを認めるに足りる証拠はなく、これらの事実は認められない。 ⑷ 当初 6 事案④(**〔送電線名〕No.**〔区間番号〕の事案) x 氏は、前任者から、当該案件では樹木所有者の要求に応じるため、伐採工事は 3年に一度の頻度で行うが、補償料は毎年支払っている旨の引継ぎを受けた。本件以前から当該樹木所有者との間に立木等損失補償取扱要綱指針に違反する合意が存在していたものと思われる。 x 氏は、上記の引継内容に沿って、2017 年以降、伐採しない年度は x 氏が直営により用地調査及び毎木調査を実施したものと仮装して、過去に実施した調査結果を参考に架空の調査結果を伐採管理システムに入力した。そして、x 氏は、伐採しない年度においては、実際には伐採していないにもかかわらず、x 氏 1 名で直営伐採工事を実施したものと装った。 2017 年度、2018 年度、2020 年度及び 2021 年度において、実際には伐採されていないにもかかわらず、架空の毎木調査結果を基礎に伐採管理システム上で計算された補償料が樹木所有者に支払われた(4 年分で約**〔金額〕円の過払い)。なお、これらの事案において、かんでんエンジニアリングに対する委託費の過払いは発生していない。 x 氏の上司の中には、伐採管理システムに登録された毎木調査の結果のとおりに伐採がされていない可能性を認識し得たと認められる者がいた。但し、当該上司が本件の違反行為の具体的内容まで認識していたことや本件の違反行為に積極的に関与していたことを認めるに足りる証拠はなく、これらの事実は認められない。 ⑸ 当初 6 事案⑤ ア **〔送電線名〕No.**〔区間番号〕の事案 2017 年 12 月に実施された毎木調査の結果は、伐採面積 1,114 ㎡、伐採対象587 本(そのうち杉は 23 本、桧は 304 本)であった。 12 y 氏は、樹木所有者に対し、上記樹木を伐採することを前提として算出した補償料**〔金額〕円を提示したが、樹木所有者から、以前から杉と桧は 20 本までしか伐採を認めていないと主張され、当該主張を受け容れて、杉及び桧は合計 20本までしか伐採しないことを説明し、伐採補償料を**〔金額〕円とすることで伐採の承諾を得た。 れた。 その後、y 氏は、かんでんエンジニアリングの担当者に対して、杉と桧の伐採本数を毎木調査の結果とは異なる 20 本とすることを依頼し、本件の伐採が行わ2019 年 3 月、樹木所有者に対しては、補償料として、上記の毎木調査の結果を前提として算出された**〔金額〕円が支払われた。また、同月、かんでんエンジニアリングに対しては、委託費として、上記の毎木調査の結果を前提として算出された**〔金額〕円が支払われた。 識し得たとも認められない。 y 氏の上司が本件の違反行為の存在を認識していたとは認められず、それを認 イ **〔送電線名〕No.**〔区間番号〕の事案 2020 年 8 月に実施された毎木調査の結果は、伐採面積 1,063 ㎡、伐採対象 403本(そのうち杉は 25 本、桧は 265 本)であった。 y 氏は、上記アの事案と同様、杉と桧は 20 本までしか伐採しないが、補償料の金額は毎木調査結果を前提に算出した**〔金額〕円を提示することとして、この内容で樹木所有者より伐採の内諾を得た。 その後、y 氏は、かんでんエンジニアリングの担当者に対して、杉と桧の伐採本数を毎木調査の結果とは異なる 20 本とすることを依頼し、本件の伐採が行わ2021 年 3 月、かんでんエンジニアリングに対しては、上記の毎木調査の結果を前提として算出された額の委託費が支払われた。同年 4 月、樹木所有者に対しては、補償料として、上記の 毎木調査結果の内容を前提として算出された**〔金額〕円が支払われた。 識し得たとも認められない。 y 氏の上司が本件の違反行為の存在を認識していたとは認められず、それを認れた。 ⑹ 当初 6 事案⑥(**〔送電線名〕No.**〔区間番号〕の事案) 2019 年 8 月、2 カ所の伐採対象範囲について毎木調査が実施された。 y 氏は、樹木所有者に対し、上記 2 カ所の伐採の補償料として**〔金額〕円を提 13 示したが、樹木所有者の承諾を得ることができなかったことから、当初の伐採範囲に当該樹木所有者が所有する隣接地を伐採範囲に加えて補償料を増額するため、追加で毎木調査を実施することにした。 y 氏は、かんでんエンジニアリングの担当者に対し、追加で毎木調査を実施した範囲については樹木を伐採しないでほしい旨を伝え、かんでんエンジニアリングの担当者はこれを了解した。 2020 年 12 月、y 氏は、樹木所有者から、伐採補償料を合計**〔金額〕円とすることで伐採の承諾を得たが、樹木所有者との間では、2 度目の毎木調査の対象である樹木は伐採しない旨の合意がなされた。 2021 年 5 月、樹木所有者に対しては、補償料として、上記の毎木調査結果の内容を前提として算出された**〔金額〕円が支払われた。一方、かんでんエンジニアリングに対する委託料については、その支払いがなされる前に本件事案が発覚したことから、過払いにはなっていない。 y 氏の上司が本件の違反行為の存在を認識していたとは認められず、それを認識し得たとも認められない。 3 追加調査により不正な処理が判明した事案 ⑴ 判明した事案の概要 ア 一定範囲に及ぶ地区の樹木所有者との伐採交渉で違反が行われていた事案 (ア) A 送電センターにおける**〔地名〕地区の事案 緯がある。 この事案では、過去の関西電力水力発電所の建設時の樹木所有者との交渉結果に基づき、指針の定める基準単価を超える補償料を継続して支払ってきた経当該地区における統一価格は存在せず樹木所有者毎に異なるが、杉の補償料を樹径等にかかわらず 1 本**〔金額〕円を超える金額とするケースなどがあり、この事案の電力所では後述する複数の方法(後記⑵)を組み合わせて高額補償料を支払ってきた。 以上の手法は交渉担当者が単独で実行したものではなく、電力所内の幹部や役職員といった上長も了解の上で実行されている。さらに電力所内に留まらず、当該地区における高額補償問題は、北陸支社の幹部や用地グループも参加する**〔会議体名〕の場にも報告されている。 社内規程に違反する伐採補償料の支払いが行われたものとしては、以下に掲14 げる 3 件が確認された。 伐採承諾の時期 2014.2.5 2014.3.4 2014.10.21 2014.11.17 2016.2.17 2016.4.27 総額 伐採補償料の金額 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 14,199,400 円 (イ) C 送電センターにおける**〔地名〕地区の事案 この事案の地域においては、従前から高額の統一単価が存在していた。このような高額単価を正規の方法で支払うことは不可能であるため、当該事案の電力所では後述する複数の方法(後記⑵)を組み合わせて高額補償料を支払っていた。 本件は、電力所の伐採交渉担当者が単独で実行したものではなく、電力所内で共有される交渉議事録等にも統一単価で高額補償を行う旨が明記されており、電力所内の幹部や役職員といった上長も了解の上で実行されている。さらに電力所内に留まらず、当該地区における高額補償問題は、東海支社の幹部や用地グループも参加する**〔会議体名〕の場にも報告されている。 その後の経緯として、2017 年に一部送電線の鉄塔立替工事が実施された際、線下樹木の伐採対象箇所の樹木所有者との間でそれまでの単価の約半額で伐採する旨の合意が成立した。これにあわせて、一部樹木所有者との間では、以後の伐採補償料は関西電力送配電が定める基準による旨の合意も成立している。 上記の立木等損失補償取扱要綱指針に違反する伐採補償料の支払いが行われた事案としては、以下に掲げる 9 件が確認された。 伐採承諾の時期 2011.8.31 2011.8.26 2011.12.5 2012.3.15 2012.3.2 2012.3.2 2012.9.25 2013.12.17 2015.12.4 2017.8.18 総額 伐採補償料の金額 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 36,458,100 円 15 イ 個々の樹木所有者との伐採交渉において違反が行われていた事案 以下に挙げる 8 件の事案では、個々の樹木所有者との伐採交渉の結果、立木等損失補償取扱要綱指針に違反する伐採補償料の支払いが行われた。 電力本部名 東海電力本部 北陸電力本部 北陸電力本部 伐採承諾の時期 2011.6.9 2012.2.23 2013.2.12 2012.3.2 北陸電力本部 2012.3.6 東海電力本部 2012.4.27 和歌山電力本部 姫路電力本部 和歌山電力本部 2016.9.6 2017.2.27 2017.10.3 2018.4.13 2017.9.1 総額 伐採補償料の金額 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 **〔金額〕円 11,473,800 円 ⑵ 立木等損失補償取扱要綱指針に違反する補償料の支払いを実行する方法 上記⑴で述べた各事案において立木等損失補償取扱要綱指針に違反する補償料の支払いを実行するためにとられた方法は次に述べるとおりである。 ア 伐採管理システムに事実とは異なる情報を登録する方法 (ア) 毎木調査の結果として事実とは異なる情報を登録する方法 伐採管理システムに事実とは異なる情報を登録するため、再毎木調査や直営による毎木調査を実施したこととして、樹木所有者と合意した補償料の金額に見合うように虚偽の毎木調査結果を伐採管理システムに登録するという方法がとられた事案が認められた。この方法が採られる事案においては、伐採樹木の本数、樹種、樹径等を偽装する事案が認められ、これらのうち伐採樹木の本数又は樹種を偽装する事案では、伐採管理システムの登録情報と事実が異なることを知る者に伐採を行わせる方法、具体的には、先方伐採、直営による伐採、或いは、かんでんエンジニアリングと意を通じるなどの方法が情報の偽装と併せて行われたものがあった。なお、上記の方法のうち、少16 なくとも伐採樹木の本数について、かんでんエンジニアリングに委託する伐採工事の本数が実際よりも増量された場合には、同社への委託料が過払いと(イ) 補償料シミュレーションにおいて事実とは異なる情報を伐採管理システムになる。 登録する方法 毎木調査結果を偽装するのではなく、補償料シミュレーションの際に事実と異なる情報を入力することによって伐採補償料を増額する手法である。 この方法が採られる事案においては、集積距離調整係数及び索道架設距離別調整係数を偽装する事案や、用材林と天然林の区別の偽装を行う事案が認められた。これらの方法による場合、かんでんエンジニアリングに対する委託料の金額を決定する要素についての偽装はないため、委託料の金額に影響はない。 イ 経理システムに伐採管理システムとは異なる内容の情報を入力する方法 伐採管理システムには正しいデータを入力する一方で、伐採管理システムで作成された補償料明細書のエクセルデータをローカル PC にダウンロードした上で、当該エクセルデータの樹種・樹径等を書き換え、書換後の補償料明細書を支払稟議書に添付し、当該明細書に記載された補償料の支払いの承認を得るということが可能である。 この方法による場合、高額の補償料を支払う旨の決裁を通しつつ、伐採工事を委託するかんでんエンジニアリングには樹種・樹径・本数等が正しいデータを渡して実際に伐採するため、同社への委託料の過払いは発生しない。 ウ 基準外単価を適用する方法 基準単価によりがたい場合等の例外的な場合には、事前に電力本部長等の承認を得て基準外単価を適用することが認められている。 もっとも、ある事案においては、樹木所有者と高額単価による補償料支払いを合意した場合に、基準外単価を適用する場合の同指針の算定基準によらずに、樹木所有者と合意した高額補償料を同システムに入力して支払っていた。当該方法の場合、伐採管理システムに入力された樹種・樹径・本数等のデータは正しいため、かんでんエンジニアリングに支払う委託料の過払いは発生しない。 17 エ 芯止め伐採の相当性がないにもかかわらず芯止めの方法により伐採する方法 ある事案では、樹木所有者による基準単価を上回る補償要求に合わせる形で、当初の芯止め伐採の段階で既に樹木所有者との間で(芯止め伐採の約 1 年後に)根切伐採をすることについてまで合意されていたにもかかわらず、芯止め伐採及び根切伐採を行いその両方の補償料を支払っており、少なくとも芯止め伐採の相当性を欠くものであったとして、立木等損失補償取扱要綱指針の違反があったというべきである。 この方法による場合、かんでんエンジニアリングに対する委託料は、当初の芯止め伐採に係る工事は不要であったという意味で過払いであったと考えられる。 4 立木等損失補償取扱要綱指針に違反する補償料支払いが行われた要因の分析 ⑴ 伐採交渉担当者が違反行為に及んだ動機 本件調査の結果、伐採補償料の交渉を担当する伐採用地担当者が、樹木所有者、かんでんエンジニアリング、協力会社など関係者から金銭などの利得を得たとの事実は認められず、各事案の交渉担当者が本件の違反行為に及んだ主たる要因は、以下のとおり、保安伐採の構造的問題にあると考えられる。 ア 基準額を超える補償料を主張する樹木所有者との伐採交渉の困難さ 送電線に樹木が接触することによる電気供給上の支障や、火災の発生等により公共の安全が阻害されることを防ぐためには、樹木所有者と交渉して伐採の実施及び伐採補償料の金額についての承諾を得ることが必要になるが、時間の経過に伴い樹木の生育が進み送電線と樹木の離隔距離が縮まるので、樹木所有者からの承諾獲得のための交渉に充てられる時間には限りがある。 また、一旦保安伐採を行っても、架空送電の下に樹木が生育している以上、再び樹木が架空送電に近接して保安伐採を行う必要が生じてくるので、伐採交渉は一回限りで終わるものではなく、長期にわたり継続的に実施されていく。長期にわたって保安伐採を円滑に行うためには、樹木所有者との間で良好な関係を維持していくことが必要になるから、樹木所有者からの無理な要求でも受け容れざるを得ないという状況が生じてくる。 伐採交渉における中心的な交渉事項は伐採補償料であるが、立木等損失補償取扱要綱指針では、樹木所有者が主張する金額に応じて基準額を超える補償料を合意することは認められていない。加えて、伐採交渉での交渉事項は、伐採補償料18 の金額だけであり、他の条件を提示してそれと引き換えに伐採補償料について承諾を得るという交渉ができない。そのため、基準額を超える伐採補償料を主張する樹木所有者との交渉に当たる関西電力送配電の担当者にとって、伐採交渉をまとめるための材料が極めて乏しい。 ここで指摘したことを踏まえると、立木等損失補償取扱要綱指針に従った内容で基準額を超える伐採補償料を主張する樹木所有者との交渉をまとめることは、困難な業務であるといえる。 しかも、本件調査の対象とした事案の中には、過去に立木等損失補償取扱要綱指針による上限額を超える金額で伐採補償料が合意されていたというものがあるが、このような場合には、樹木所有者は、過去の合意を関西電力送配電との交渉の出発点に置くため、伐採交渉の担当者が立木等損失補償取扱要綱指針に従った金額で樹木所有者の伐採についての承諾を獲得することが一層困難になる。また、一部の事案では対象地域一帯の樹木所有者が相互に協力して立木等損失補償取扱要綱指針の定めによる上限額を超える金額を主張しており、この場合も樹木所有者からの承諾の獲得が一層困難になる。 イ 交渉難航事案を打開するための実効的な手段が乏しいこと 伐採交渉が難航している事案を打開するための手法としては、電気事業法第 61条に基づく伐採がある。 電気事業法に基づいて樹木を伐採する場合、原則として芯止めによることとされており、法定離隔距離との関係で最低限必要なもののみが伐採の対象となる。その結果、電気事業法に基づいて樹木所有者の承諾を得ることなく樹木を伐採できたとしても、芯止めした枝以外の枝が生育して再び送電線との離隔距離が縮まり、再び法定離隔距離を下回るようになるまでにそれほど時間はかからないことが想定される。その場合、再び当該樹木の伐採が必要となるが、この場合の伐採交渉は、法的手続という強硬手段により樹木を伐採されて態度を硬化させた樹木所有者との間で行われることになるので、伐採についての承諾の獲得が一層難しくなる。結局、電気事業法による伐採をしても、一時的に交渉が難航している状況をしのぐことはできても、当該樹木所有者との関係を根本的に解決することはできない。 また、電気事業法による伐採を実行するためには、まず、電力所の上位機関である支店で開催される**〔会議体名〕、さらには、その上位の本店へと手続をエスカレーションしなければならない。そのうえ、現地における特別な測量調査の実施、伐採当日の多数の職員による立会いなど、実務上の負担も少なくないことに加えて、電力所によっては、過去に電気事業法伐採を行った事案数が乏しく、 19 ノウハウ等が担当者レベルに十分に浸透していないと思われる事案も見られた。 以上述べたことによれば、現時点では、電力所や電力センターで伐採交渉業務の実務に当たっている担当者にとって、電気事業法第 61 条に基づく伐採が、必ずしも交渉難航事案を打開するための実効的な手段であるとは言い切れない。 このほかに、交渉が難航する樹木所有者との関係を打開するための手立てとしては、鉄塔の高さの変更等の設備変更工事によって伐採交渉の機会自体を減らすということもあり得るが、これを実行するためには、工事の実施に必要な社内関係者の了解を取り付けた上で、相当な時間及び費用を掛ける必要があるため、設備変更工事が交渉難航事案を打開するための実効的な手段となり得る場合は限ら以上のとおり、保安伐採の交渉は交渉難航事案を打開するための実効的な手段は乏しいのが現状である。 れる。 しさである。 ⑵ 立木等損失補償取扱要綱指針に反する補償料の支払いが正当化される要因 交渉担当者が立木等損失補償取扱要綱指針に違反する補償料の支払いに応じる自らの行為を正当化する第 1 の要因は、送電線の安全確保という違反行為の目的の正次に、違反行為に及ぶことの費用対効果が大きいことも正当化の要因として挙げられる。すなわち、立木等損失補償取扱要綱指針に違反する補償料の支払いに応じると、会社として、送電線の安全確保という上記の利益を確保できるだけでなく、電気事業法による伐採を実行する場合に生じる様々な負担を回避できるというメリットも享受できる。一方、伐採する樹種、樹径、本数などを偽って立木等損失補償取扱要綱指針に違反する補償料を支払ったとしても、水増しされた補償料の金額やかんでんエンジニアリングらに対する工事委託料分の金額は、それほど多額ではない。このように、立木等損失補償取扱要綱指針に違反する金額の補償料を支払ってでも樹木所有者から伐採の承諾を得ることは費用対効果が大きく、このことは、交渉担当者が自らの違反行為を正当化する要因となっていたと考えられる。 ⑶ 立木等損失補償取扱要綱指針に反する補償料の支払いを可能にする機会の存在 ア 伐採承諾書に伐採の対象である樹木の種類や本数等が記載されていないこと 保安伐採について、関西電力送配電と樹木所有者の間の合意内容の証拠となる伐採承諾書には、伐採補償料の総額や伐採の条件は記載されているが、補償料の算定の前提となる伐採する樹木の樹種、本数、胸高直径などの情報は記載されて20 いない。このことは、補償料の算定の前提情報とは異なる内容での合意を可能にし、樹木所有者が都合良く立木等損失補償取扱要綱指針に違反する補償料の支払いを受けることを可能にするとともに、問題の発覚を困難にした要素の 1 つであるといえる。 ではないこと イ 伐採管理システムによる情報の記録・管理による違反行為の抑制が完全なもの伐採管理システムにおける伐採補償料の算定は、毎木調査の結果に基づいて行われる。この毎木調査の結果は、ひとたび伐採管理システムに登録されると、以後その内容を変更することができないこととなっている。これにより、毎木調査の結果が出た後の交渉の結果に応じて補償料の算定の前提情報を変更することができないため

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