東レ(3402) – 有識者調査委員会による調査報告書の受領および今後の対応について

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開示日時:2022/04/12 16:00:00

損益

決算期 売上高 営業益 経常益 EPS
2018.03 220,485,800 15,646,400 14,035,600 59.9
2019.03 238,884,800 14,146,900 12,517,700 49.56
2020.03 221,463,300 13,118,600 11,437,100 34.58
2021.03 188,360,000 5,587,900 5,587,900 28.57

※金額の単位は[万円]

株価

前日終値 50日平均 200日平均 実績PER 予想PER
743.4 702.546 715.158 11.68 11.55

※金額の単位は[円]

キャッシュフロー

決算期 フリーCF 営業CF
2018.03 -1,874,500 12,918,000
2019.03 660,900 17,623,900
2020.03 8,562,000 22,576,700
2021.03 8,910,800 21,159,100

※金額の単位は[万円]

▼テキスト箇所の抽出

各 位 2022年4月12日 会 社 名 東レ株式会社 コード番号 3402 代 表 者 名 代表取締役社長 日覺 昭廣 問 合 せ 先 広報室長 松村 俊紀 TEL (03) 3245-5178 有識者調査委員会による調査報告書の受領および今後の対応について 東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)が 2022 年1 月 31 日付で公表しました、UL LLC(以下「UL」)の認証登録における不適切な対応を行った件について、同日付で有識者調査委員会を設置し、徹底的な調査と原因究明を行ってまいりました。 この度、同委員会より調査の結果判明した事実関係および再発防止策などを記載した調査報告書を受領しましたので、今後の東レの対応と合わせお知らせいたします。 東レは、有識者調査委員会よりの提言を真摯に受けとめ、以下の対応を行ってまいります。 1.提言のポイントと東レの対応 (1)コンプライアンス意識の強化 ① コンプライアンス教育の強化 提言の趣旨を踏まえた民間認証・規格に関しても徹底した教育の全社展開。 ② 品質保証への貢献度を評価指標に取り入れること 品質保証を含めたコンプライアンスへの貢献度をより重視する評価体系に見直す。 ③ 再発防止への取組状況の公表 再発防止策の実施状況を会社のウェブサイトなどで公表。 ④ 経営陣が本気度を示す行動を強化・継続すること 経営陣は常にコンプライアンスの重要性について発信するとともに、自己のコンプライアンスにおける責任・使命を宣言。 (2)UL 対応に関する作業手順および教育体制の確立 業務フローや関与者の責任・役割の文書化、ならびに UL ルールの教育および東レの認証管理システムに対する第三者機関による検証・監査。 (3)異なる事業に関する部門間での人事異動の実施、その他の交流の実施 事業分野をまたがる品質保証部署長の人事異動や経営レベルでの事業分野をまたがる人事異動の実施。異なる事業分野の役員・従業員が参加する本事案を教材とした研修の実施。 (4)品質保証部門または外部機関が UL 対応を確認する体制の構築 UL を含め認証業務における品質保証本部の具体的役割の文書化、および当該役割が実施されていることの第三者機関による検証・監査。 (5)品質保証部門の組織体制の強化(品質保証本部、他の部門または社外機関による品質保証課の活動の監視・監督) 品質保証本部内における各部署への監査の仕組み構築、および社外機関による品質保証-1 / 2 - 本部全体の業務監査を実施する。 (6)不適正行為が東レの管理部門等に対して報告されるようにするための体制の構築 ① 不適正行為の存在またはその疑いを認識した場合のルールの明確化 品質保証・製品安全管理規程に、提言内容(報告義務)の明記。 ② 内部通報制度の利用を促す体制の構築 内部通報制度の利用案内等への利用具体例の記載等の工夫。 ③ 品質保証部門による社内アンケート調査(一斉調査)の改良および継続 各従業員の回答が、自由記述欄まで含めて全て品質保証本部に直接届くようにするとともに、一斉調査においては、民間認証に関するルールの違反が調査対象に含まれることを具体的に記載。 2.関係者の処分 長期かつ組織的な本件不適正行為により、お客さまを含め社会へ甚大な迷惑をおかけし、会社の信用を著しく毀損した結果に対し、経営者としての責任を明確にすべく、ガバナンス委員会(社外取締役を委員長とした社外取締役が過半数の委員会)で責任者の範囲および処分内容を審議し、取締役会に答申します。 また、その他の不適正行為関与者に関しては、社内ルールに基づき、責任を明確にし、厳格に処分します。 調査報告書において、コンプライアンス意識の強化として、経営陣が本気度を示す行動を強化・継続することを指摘いただきました。経営の最重要課題の一つである「倫理と公正」について、各現場に対して経営陣の姿勢が十分に示されていなかったと真摯に受けとめ、経営陣の意識・行動を変革してまいります。コンプライアンスは経営の最重要課題であることを東レグループの隅々まで浸透させるべく、経営陣が従業員に対して、あらゆる機会をとらえて直接本気度を届け、そして従業員からの声を直接聞く風通しの良い企業文化を醸成してまいります。 製品の安全性に関しても、東レ製品を起因としてお客様の製品に問題が生じていないか急ぎ確認させていただいており、現時点で大きな問題を把握しておりませんが、今後も当該確認を加速して進めてまいります。 また、UL 以外の認証についても別途検証を行っており、問題があれば同様の対応を行ってまいります。 上記の再発防止策の進捗状況、安全性の確認状況、UL 認証の再取得状況等、今後も状況の進捗に合わせお知らせしてまいります。またその他公表すべき事実が判明しましたら、適宜公表してまいります。 関係者の皆さまにはご迷惑とご心配をおかけしましたことを、改めまして深くお詫び申し上げます。上述しました対応を含め、再発防止を経営陣の責任の下、役員・従業員が一丸となって徹底的に遂行し、信頼を回復し、あるべき東レの姿を再び皆様にお示しできるよう努力してまいります。今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。 以 上 -2 / 2 - 目 次 第1 当委員会の設置経緯及び概要 ……………………………………………………………………… 2 第2 東レの組織体制等 ……………………………………………………………………………………… 6 第3 THC 問題とその後の東レの品質保証体制・取組み ………………………………………. 12 第4 UL 認証制度の概要及び東レグループが UL 認証を取得している事業 …………….. 14 第5 東レの樹脂事業の取扱製品に発生した UL 認証問題 …………………………………….. 19 1 東レの樹脂事業の概要 ……………………………………………………………………………… 19 2 当委員会における不適正行為の判断方法等 …………………………………………………. 19 3 ABS 樹脂の不適正行為 …………………………………………………………………………….. 22 4 エンプラの不適正行為 ……………………………………………………………………………… 32 5 THC 問題以降の東レの対応に対する当委員会による評価 …………………………….. 41 第6 東レの樹脂・ケミカル事業以外の東レグループにおける UL 認証に関する問題の有無の調査 ………………………………………………………………………………………………… 49 第7 本件 UL 問題の原因分析 …………………………………………………………………………… 50 1 樹脂技術関連部署におけるコンプライアンス意識の不足 ………………………………. 50 2 UL 認証制度に関する知識・教育体制の不足 ……………………………………………….. 53 3 樹脂技術関連部署内でのみ人事異動が行われていたこと、樹脂技術関連部署の閉鎖的な組織風土 ………………………………………………………………………………………….. 53 4 実質的に技術部門のみで UL 対応が完結していたこと ………………………………….. 55 5 不適正行為が東レの管理部門等に対して報告されるようにするための体制の不足 ……………………………………………………………………………………………………………………. 56 第8 再発防止策の提言 ……………………………………………………………………………………. 59 1 コンプライアンス意識の強化 ……………………………………………………………………. 59 2 UL 対応に関する作業手順及び教育体制の確立 ……………………………………………. 61 3 異なる事業部門間での人事異動の実施、その他の交流の実施 ………………………… 62 4 品質保証部門又は外部機関が UL 対応を確認する体制の構築 ………………………… 62 5 品質保証部門の組織体制の強化 …………………………………………………………………. 63 6 不適正行為が東レの管理部門等に対して報告されるようにするための体制の構築 ……………………………………………………………………………………………………………………. 64 7 おわりに ………………………………………………………………………………………………… 65 1 第1 当委員会の設置経緯及び概要 1 当委員会の設置経緯 (1) 東レによる本件 UL 問題の発見・公表 東レ株式会社(以下「東レ」という。)の品質保証本部は、2021 年 11 月 22 日、同月に行われた品質問題に関するアンケート(毎年「一斉調査」として東レグループ内で行っているもの)に対する回答として、樹脂技術部所属の職員から、過去数十年にわたって、Underwriters Laboratories Inc.(米国の第三者安全科学機関。以下「UL」という。)が策定した UL94 規格にかかる認証(以下「UL 認証」ということがある。)を取得している製品について、UL により製品の難燃性を確認するために行われる Follow-Up Service と呼ばれる試験(以下「FUS」という。)において、UL に提出する試験片を作成する際、製品に難燃剤を添加するという不適正行為(以下、このような FUS における不適正行為を含めて、UL 認証に関する不適正行為(第 5 参照)を総称して「本件 UL 問題」という。)が行われている旨の申告を受けた。また、上記アンケートの取りまとめが行われている最中であった同年 12 月 8日、東レの品質保証本部は、東レ樹脂事業における UL 認証問題の有無を確認するよう社内に指示したところ、同月 10 日、同本部内の下部組織である樹脂・ケミカル品質保証部から、同本部に対し、ABS 樹脂並びにエンジニアリング・プラスチック(以下「エンプラ」という。)の一部について、本件 UL 問題が存在する旨の報告が東レは、2022 年 1 月 31 日、本件 UL 問題の概要についてプレスリリースにより公表するとともに、本件 UL 問題の本格的な調査を開始した。 あった。 (2) 当委員会の設置及び調査の委嘱 東レは、本件 UL 問題は東レにおいて長年継続されてきたと窺われること等から、東レ社内のみではなく、外部の有識者により構成される委員会を設置して本件 UL問題を検証する必要があると判断した。その頃、東レにおいては、子会社の東レハイブリッドコード株式会社(以下「THC」という。)における品質保証検査データ書換問題(以下「THC 問題」という。第 3 参照)について、2017 年 11 月 27 日に設置された有識者委員会(以下「THC 有識者委員会」という。)から提出された調査報告書(以下「THC 問題報告書」という。)における、再発防止策の提言を踏まえ、品質保証体制を強化し、上記(1)に記載したアンケートの実施も含めて品質に関する取組みを強化している最中であった。 そこで、東レは、THC 問題報告書を取りまとめた THC 有識者委員会を構成する2 委員と同一の委員に対し、THC 問題とその後の東レの品質保証に係る取組みへの対応の検証を含めた本件 UL 問題の調査報告及び再発防止策の検討を委嘱することが、本件 UL 問題の速やかな原因究明及び実効的な再発防止策の策定に有益であると考え、2022 年 1 月 5 日、THC 有識者委員会の各委員から、委員就任についての内諾を得た。 その後、東レは、2022 年 1 月 31 日、本件 UL 問題の概要を公表するとともに、上記委員内定者に対して正式に有識者調査委員への就任を要請し、同日、本件 UL問題の有識者調査委員会(以下「当委員会」という。)が発足した。 2 当委員会の概要 (1) 委嘱事項 上記の経緯を踏まえ、東レから当委員会に対して委嘱された事項は、東レ樹脂・ケミカル事業本部取扱製品に発生した UL 認証問題の実態解明のための調査、原因分析及び再発防止策の提案並びに東レグループにおける同様の製品の UL 認証に関する問題の有無の調査である。 (2) 当委員会の構成 ア 委員 (委員長) (委員) イ 補助者 当委員会の構成は、以下のとおりである。 藤田 昇三 弁護士(藤田昇三法律事務所)、元名古屋高等検察庁検事長 松尾 眞 弁護士(桃尾・松尾・難波法律事務所)、元東レ社外監査役 永井 敏雄 弁護士(卓照綜合法律事務所)、東レ社外監査役、元大阪高等(委員) 裁判所長官 当委員会は、補助者としても、THC 有識者委員会においても補助者として関与した弁護士を含む桃尾・松尾・難波法律事務所の弁護士 7 名(鈴木毅、角元洋利、高石直樹、山口敏寛、安部雅俊、麻生尚己及び佐野憲太郎)を選任し、当委員会の事務局担当として補助をさせた。 3 当委員会が実施した調査 3 (1) 調査実施期間 当委員会は、2022 年 1 月 31 日から同年 4 月 8 日までの間、調査及び調査結果に基づく検討を行った。この間、合計 9 回委員会としての会議を開催したほか、メール、電話、ヒアリング実施後の打合せ等の方法により、委員同士の協議を行った。なお、当委員会は、同年 1 月 5 日から同月 31 日までの間に実施された調査・ヒアリング・準備会合について、遡及的に当委員会の調査活動と扱うこととした。 当委員会は、以下の方法で調査を実施した。 (2) 調査実施方法 ア 関係資料の検証 当委員会は、東レ及び下記イからエによって得た又は提出を受けた、関連資料その他東レが本件 UL 問題に関して実施した調査や対外対応に係る資料を検討・検証した。 イ 関係者に対するヒアリング 当委員会は、代表取締役社長以下東レの現・元役職員合計 52 名(退職者を含む。)に対するヒアリングを実施した。ヒアリングの実施は、新型コロナウイルスの感染拡大状況にも配慮し、主として委員が所属する法律事務所の会議室等と東レ各部署の間をウェブ会議システムで接続する方法によった。 ウ フォレンジック調査 当委員会は、データの保全が必要であると考えられる東レの役職員(退職者を含む。以下同じ。)を選定し、株式会社 FRONTEO の補助を受けつつ、対象となる役職員が使用している又は過去に使用したことのあるパソコンのデータ、並びに、電子メール及びこれに添付された各種ファイルの保全作業を実施し、重複したデータ等を削除の上、期間及びキーワードによって絞り込みを行って抽出した関連性があると窺われたデータについて、レビューを実施した。 エ アンケート調査 当委員会は、樹脂・ケミカル事業本部、同事業に関係する生産本部の各部署及び樹脂・ケミカル品質保証部所属の役職員を含む、UL 認証に関係する製品を扱う東レの全事業部及び国内・海外子会社の役職員を対象として、2022 年 2 月 8 日4 から同月 18 日にかけて、UL 認証の取得や FUS における不適正行為の有無等について報告を求める旨のアンケート調査を実施した。 樹脂・ケミカル事業本部、同事業に関係する生産本部の各部署及び樹脂・ケミカル品質保証部所属の役職員に対するアンケート調査においては、対象となった226 名の全員から回答を得た。アンケートにおいて具体的な報告が行われた事項については、当委員会がヒアリングや追加の資料提出を求めるなどし、本件 UL問題の実態解明に活用した。 なお、アンケート調査のうち東レの樹脂・ケミカル事業以外の調査に関しては、下記第 6 において記載するとおりである。 オ 現地調査 当委員会は、千葉工場(トヨラック技術室、千葉樹脂品質保証課(以下「千葉品証課」という。)、千葉殖産株式会社(以下「千葉殖産」という。)検査課内)及び名古屋工場(樹脂技術部、名古屋樹脂・ケミカル品質保証課(以下「名古屋品証課」という。)、名南サービス株式会社(以下「名南サービス」という。)事務所内)の現地調査を行った1。 (3) 会社の当委員会の調査への協力 当委員会では、東レに対し、当委員会が決定した調査方法に従って調査を実施することにつき必要な協力をするよう要請し、十分な協力を受けた2。 4 調査上の限界 る。 当委員会の調査や本調査報告書に関しては、以下に述べる限界に留意する必要があ 当委員会の調査は、法的な強制力を持たない任意調査であり、当委員会が関係者 1 具体的には、新型コロナウイルスの感染拡大状況にも配慮し、東レの法務・コンプライアンス部門の職員が各工場を訪問し、東レ関係者から案内を受け、その様子を委員はウェブ会議システムを通じて視聴し、適宜質問をし、確認を求めた資料及び場所の投映を受ける方法により実施した。千葉工場及び名古屋事業場においては、ペレットから試験片を成形するプロセスや試験片の燃焼試験の様子についても検証した。 2 当該協力には、当委員会の求めがある場合には、東レに属する資料、情報、役職員へのアクセスを当委員会に認めること、役職員に対して、当委員会による調査に対する優先的な協力を業務として命令すること、適切な会社スタッフを選定し、当委員会の調査を補助する体制を整えることが含まれる。 5 から開示を受けた資料等及びその前提事実並びに関係者の供述に誤りがある場合、本調査報告書作成までに東レグループから開示されなかった事実がある場合等には、本調査報告書における認定が変更される可能性がある。 UL 認証についての非公開情報等は、UL の営業秘密が含まれ得るため、本来であれば具体的に記載すべき点であっても、記載を省略又は抽象化した部分が存在する。 当委員会は、可能な限り不適正行為の発生・経緯を客観的に示す資料の収集に努め、関係部署に保管されていた相当古い時期の資料の一部を含む記録を検討した。しかし、相当古い時期の資料については既に廃棄されているものも多く、収集・検討することができた資料には限りがあった。また、東レにおける電子メールの保存期間及び職員に貸与されるパソコンの人事異動に際するデータ消去等により、フォレンジック等によって収集できた電子データや資料の多くは比較的最近のも 本調査報告書は、発生原因の究明並びに再発防止策の策定・提言のためにのみ用いることが予定されているもので、関係者の法的責任の追及や社内処分を目的とのに限られている。 したものではない。 第2 東レの組織体制等 1 東レの組織体制 (1) 東レの組織体制の概要 東レの組織は、①関連事業本部、繊維事業本部、樹脂・ケミカル事業本部、フィルム事業本部、複合材料事業本部、電子情報材料事業本部、医薬・医療事業本部、及び水処理・環境事業本部の 8 つの事業本部、②技術センター、生産本部、エンジニアリング部門及び研究本部の 4 つの技術部門、並びに③経営企画室、品質保証本部、総務・コミュニケーション部門、法務・コンプライアンス部門、人事勤労部門、財務経理部門、知的財産部門、情報システム部門、購買・物流部門等のスタッフ部門により構成されている。 (2) 樹脂・ケミカル事業本部・品質保証本部・生産本部の概要 本件 UL 問題には、東レの上記組織のうち樹脂・ケミカル事業本部、品質保証本部及び生産本部が関係している。これらの組織の概要は、以下のとおりである。 なお、以下の組織はいずれも本調査報告書作成時点のものであるが、本件 UL 問題は長期間にわたって継続しており、その間に組織変更や名称変更が行われている 6 ため、過去の組織体制と異なる場合がある。 ア 樹脂・ケミカル事業本部 樹脂・ケミカル事業本部は、ABS 樹脂(トヨラック®)、ナイロン樹脂(アミラン®)、PBT 樹脂(トレコン®)、LCP 樹脂(シベラス®)及び PPS 樹脂(トレリナ®)などの販売業務を取り扱っている(なお、括弧内は商標名である。)。同事業本部は、主に樹脂事業部門とケミカル事業部門に分かれており、樹脂・ケミカル事業本部長がその統括責任者となっている。 イ 品質保証本部(樹脂・ケミカル品質保証部) 樹脂・ケミカル事業の品質保証に関しては、東レ全体の品質保証業務を統括する品質保証本部の下、樹脂・ケミカル品質保証部が、樹脂・ケミカル事業に含まれる各事業の品質保証全般の本部として、同事業の品質方針の策定及び各関係部署への展開・フォローや各事業の品質管理システムの構築・維持・向上等の役割を担っている。 千葉品証課は千葉工場における品質保証責任部署として、トヨラック技術室が開発する ABS 樹脂製品について、名古屋品証課は名古屋事業場における品質保証責任部署として、樹脂技術部が開発する樹脂製品について、それぞれ品質マネジメントシステムの構築、維持及び向上、製品設計開発における進階審査等の役割を担っている。 ウ 生産本部(樹脂・ケミカル技術・生産担当) 生産本部は、生産工場と技術スタッフ部署で組織される。ABS 樹脂製品については、千葉工場のトヨラック技術室が、材料開発、用途開発、生産技術開発を行っており、ナイロン樹脂、PBT 樹脂、LCP 樹脂、PPS 樹脂等のエンプラ製品については、名古屋事業場内にある樹脂技術部が材料開発、用途開発、生産技術開発を行っている(なお、樹脂技術部は物理的には名古屋事業場内にあるが、組織上は名古屋事業場と並列の関係にある。)。 生産本部の樹脂・ケミカル技術・生産担当(以下「樹脂ケミ生産担当」という。)は、トヨラック技術室及び樹脂技術部を含む樹脂・ケミカル製品の生産管理、工程改善、技術開発等を監督している。 7 千葉工場においては、トヨラック技術室内の製品開発 I グループ(以下「製品開発 IG」という。)が、ABS 樹脂の開発業務を行うとともに、UL 認証に関する業務も行っている。 また、千葉工場においては、東レの関連会社である千葉殖産が、工場内の請負作業(ABS 樹脂の生産付帯作業)を担っている。FUS の際に UL に提出する試験片を作成する業務は、千葉殖産の検査課において行われている。 8 名古屋事業場内にある樹脂技術部では、樹脂開発室内に、素材ごとのグループ(ナイロン-G、PBT-G、LCP-G 及び PPS-G)があり、各素材の生産技術開発等(UL 認証に関する業務を含む。)を担っている。また、樹脂加工技術室内にトレカ樹脂のグループがあり、同素材の生産技術開発等を担っている。 名古屋事業場内では、東レの関連会社である名南サービスが工場内の請負作業(樹脂・ケミカル品の生産付帯作業)を担っている。FUS の際に UL に提出する試験片を作成する業務は、名南サービスにおいて行われている。 (3) APG(Action Program Growth) 上記(2)は、樹脂・ケミカル事業本部、品質保証本部及び生産本部を機能ごとの「縦のライン」に沿って説明したものである。東レでは、かかる縦のラインとは別に、事業ごとに営業部門と生産技術部門をいわば「横の関係」としてまとめた APG(Action Program Growth)という概念上の組織を組成している。いずれの APG においても、議長を営業系の役職員が務め、副議長を生産技術系の役職員が務めている。 樹脂・ケミカル事業の APG(以下「樹脂・ケミカル APG」という。)は、樹脂・ケミカル事業本部と樹脂・ケミカル事業に関係する生産本部の各部署(トヨラック技術室と樹脂技術部もこれに含まれる。)で組織されており、樹脂・ケミカル事業本部長が議長を務め、生産本部の樹脂ケミ生産担当が副議長を務めている。そして、樹脂・ケミカル APG は月次で全体会議を開催している。 9 また、樹脂・ケミカル事業においては、樹脂・ケミカル APG の全体会議に加えて、トヨラック、ナイロン樹脂、PBT 樹脂、LCP 樹脂、PPS 樹脂という事業別に、幹部役職員のほか事業部門、生産部門、技術研究部門の各関係者が情報共有を行う場として、「生販会議」という会議が四半期に 1 回程度の頻度で開催されている。 2 東レのコーポレート・ガバナンス体制 東レは、監査役会設置会社であり、法定の機関として株主総会、取締役及び取締役会、監査役及び監査役会並びに会計監査人を設置している。体制の概要は下記のとおりである。 【第 140 期有価証券報告書342 頁記載のコーポレート・ガバナンス体制模式図から引 用】 東レの取締役は 12 名(うち社外取締役 4 名)、監査役は 5 名(うち社外監査役 3 名)であり、会計監査人として EY 新日本有限責任監査法人を選任している。 また、任意の機関として、取締役 7 名(うち社外取締役 4 名)からなるガバナンス委員会、内部監査部門である監査部、経営会議、及び倫理・コンプライアンス委員会、 3 https://www.toray.co.jp/ir/pdf/lib/lib_a575.pdf 10 サステナビリティ委員会、リスクマネジメント委員会、CSR 委員会等の諮問委員会を設置している。 3 東レの品質保証体制 東レは、2016 年の THC 問題以降、品質保証体制を強化することとし、東レグループ全体の品質保証業務を統括する役員(品質保証本部長)を選任し、東レグループ全体の品質保証体制の整備推進と実効性を監督する品質保証本部を創設した。また、東レ全社の品質保証に関する組織並びに各事業本部及び生産本部における品質保証部・室を品質保証本部の傘下に編入し、さらに、東レの各工場における品質保証課・室を品質保証本部の傘下に編入した(詳細は第 3 にて記載する。)。 品質保証本部の下部組織として設置されている品質保証企画管理室及び製品安全企画管理室では、品質保証及び製品安全に関する東レグループ全体の本部として、品質保証・製品安全に関わる東レ及び東レグループ全体の方針・施策の企画・立案・調整及び推進、品質保証・製品安全に関わる東レグループ全体のシステム構築及びその維持向上並びに会社に重大な影響を与える品質保証・製品安全問題への対応等の役割を担っている。 各事業に応じて設置されている品質保証部・室では、各事業の品質保証全般の本部として、各事業の品質方針の策定及び各関係部署への展開・フォローや各事業の品質管理システムの構築・維持・向上等の役割を担っている。 11 各工場に所在する品質保証課・室では、各工場における品質保証責任部署として、工場の品質マネジメントシステムの構築、維持及び向上、製品設計開発における進階審査等の役割を担っている。 4 東レの内部通報制度の概要 (1) 「企業倫理・法令遵守ヘルプライン」 東レは、2003 年度に内部通報(相談)制度「企業倫理・法令遵守ヘルプライン」を設置し、2010 年度から国内関係会社にも適用している。同制度の概要は以下のとおりである。 適用対象事案 各種の法令違反、就業規則などの社内ルール違反、セクハラ・パワハラなどの人権侵害、社会規範からの逸脱についての通報(発生が疑われる場合、発生のおそれがある場合も対象に含まれる。) 利用対象者 本内部通報(相談)制度適用対象となる東レ及び東レの国内関係会社で働いている全ての人 受付窓口 まずは、上司に通報する。 上司に伝えにくい事案の場合は、東レ及び東レの国内関係会社各社内に設置する社内窓口に伝える。 社内窓口に伝えることも難しい場合は、社外窓口に通報する。 (2) 「重大不正事案に関する内部通報制度」 上記に加えて、2016 年度からは、東レが東レグループ各社から直接通報を受け付ける「重大不正事案に関する内部通報制度」が設けられている。同制度は、独占禁止法違反、贈収賄規制違反、不正会計(監査指摘事項や刑事事件となるもの)及びデータ偽装を対象としており、東レグループで働いている全ての人を利用対象者としている。同制度の受付窓口は東レのコンプライアンス部であり、通報手段は E-mail のみとされている。 第3 THC 問題とその後の東レの品質保証体制・取組み 1 THC 問題の概要 (1) THC 問題 東レの子会社の一つである THC では、2016 年、コンプライアンスに係るアンケ12 ート調査の結果、品質保証室による製品(タイヤコード及びブレーキホース用コード等)の品質保証検査において、実測した検査データとは異なる数値をもとに検査成績表を作成・発行しているのではないかとの疑義(THC 問題)が生じた。 THC 及び東レは、THC 問題について調査を進め疑義として報告された事象が存在することを確認するとともに、原因分析や再発防止策の策定・実施を進めた。また、東レは、2017 年 11 月 27 日、THC 及び東レが進めてきた THC 問題に対する調査及びそれに基づく再発防止策の策定や対外対応の実施の総括として、これらの妥当性について社外の有識者による調査及び評価を受けることとし、当委員会の委員と同じ委員からなる THC 有識者委員会を設置した。 THC 有識者委員会は、THC 及び東レが進めてきた調査等に対する調査及び評価を行い、東レとして品質保証部門の権限や責任を増加させて東レグループ全体における品質保証コンプライアンスを強化するという再発防止策に係る提言を含む同年 12 月 25 日付け調査報告書(THC 問題調査報告書)を提出し、東レは、THC 問題調査報告書を公表するとともに、下記の品質保証体制の改善を含む再発防止策を講じた。 (2) 東レグループにおける第 1 回一斉調査 東レは、THC 問題を契機として、東レグループ全社における品質データに関するコンプライアンスの状況について、東レグループの品質データを取り扱う職員及び管理監督者 9,727 名に対してアンケート方式で幅広く回答を求め、場合により、データの確認や関係者へのヒアリング等の追加調査を行った(以下「第 1 回一斉調査」という。)。また、東レは、第 1 回一斉調査の方法、内容、結果、当該結果を受けての施策等の妥当性についての調査・評価も、THC 有識者委員会に引き続き委嘱した。 東レは、第 1 回一斉調査の結果として法令違反及び顧客の製品の安全性に影響がある案件が確認されなかったため個別案件については公表をせず、調査方法の概要、今後の品質保証に向けた取組み及び第 1 回一斉調査の終了時における有識者委員会議事録を公表した。 2 THC 問題後の東レの品質保証体制 THC 問題調査報告書の受領後、東レは、上記第 2・3 のとおり、品質保証体制を強化することとし、①2018 年 2 月に東レグループ全体の品質保証業務を統括する役員(品質保証本部長)を任命し、②同月に東レグループ全体の品質保証体制の整備推進と実効性を監督する品質保証本部を創設した。 13 また、東レは、③同年 4 月には、東レ全社の品質保証に関する組織並びに各事業本部及び生産本部における品質保証部・室を品質保証本部の傘下に編入し、さらに、2019年 4 月には東レの各工場における品質保証課・室を品質保証本部の傘下に編入して、東レの品質保証組織の事業部からの独立性を確保し、品質保証の実効性を図る取組みを行ってきた。 3 THC 問題後の東レの品質保証への取組み(アンケート等) 東レは、新設された品質保証本部を中心として、THC 問題報告書における提言内容及び第 1 回一斉調査から抽出した問題点を整理し、①東レグループ全体の品質保証に関する仕組みの強化、②不正をしない人作りと職場風土の醸成、③品質(保証)に関する顧客との契約の適正化、④測定装置の適切な維持・管理及び近代化・充実、⑤不正をさせない品質データ管理システムの整備を重点課題として挙げて、東レグループ全体における品質保証体制の向上に取り組んで来た。また、東レは、これらの重点課題に関連して、品質保証に関する複数のガイドラインの策定や、品質保証部門による現場の巡回、品質コンプライアンス教育の実施などを行ってきた。 さらに、東レは、THC 問題を契機として行った第 1 回一斉調査の後も同様の調査を継続して行うこととし、2019 年及び 2020 年にも東レグループの品質データを取り扱う職員及び管理監督者(第 1 回一斉調査と同様の人数が対象とされた。)に対して一斉調査を実施しており、2020 年からは、毎年 11 月をコンプライアンス月間として一斉調査を実施することとし、一斉調査により把握された問題点については、対応・是正を行ってきた。 そして、第 1 回一斉調査、2019 年及び 2020 年の一斉調査においては、千葉工場及び名古屋事業場のいずれからも ABS 樹脂又はエンプラについての本件 UL 問題の存在は申告されなかったが、2021 年 11 月における一斉調査において本件 UL 問題に関して申告があり、これが明るみに出ることとなった。 第4 UL 認証制度の概要及び東レグループが UL 認証を取得している事業 1 UL 認証とは (1) UL 規格の概要 UL 規格とは、UL が策定する安全性に関する規格である。UL 規格は、最終製品に限らず、最終製品に組み込まれる材料や部品等についても策定されている。 14 UL は、UL 認証の取得を希望する者からの申請に基づいて、申請された製品、材料、部品等が、UL 規格の要求事項に適合しているかを確認し、適合していると判断した場合には、UL 認証を与える。 UL 規格自体に法的強制力はないため、東レが自社の製品に UL 認証を取得するか否かはあくまで任意である。もっとも、米国で製品を円滑に販売するには、UL 認証を取得していることが必要となる場合が多いため、特に米国向けの最終製品のために東レの製品を購入している東レの顧客は、東レの製品が UL 認証を取得した製品であることを前提にしている場合があると推測される。 (2) UL94 規格について UL94 規格は、UL 規格のうち、プラスチック材料の難燃性を示す規格である。UL94 規格にかかる認証を取得するためには、燃焼試験を実施して合格する必要がある。燃焼試験は、樹脂の原材料(「ペレット」と呼ばれる数ミリメートルの粒状の原材料)を、短冊状の試験片に成形した上で、当該試験片にバーナーで火を付ける方法により実施される。 ペレットを成形して試験片を作成する工程は UL ではなく申請者が行う。試験片の成形方法・手段・条件について詳細な規定はなく、成形方法・成形条件によって難燃性にバラツキが生じ得るのが実情であるところ、燃焼試験においては、複数の試験片を提出し、その全ての試験片について燃焼試験の基準を満たす必要がある。 試験に合格した樹脂は、当該樹脂の難燃性に応じた UL94 規格の認証を受けるとともに、その品種名、材料特定情報(ID と呼ばれる。本調査報告書でも、以下「ID」という。)、着色の有無、試験片の厚み等が UL に登録される。 難燃性の程度を示すグレードとしては、垂直燃焼試験を実施することによって判定される 5V(5VA 及び 5VB)、V-0、V-1 及び V-2 や、水平燃焼試験を実施することによって判定される HB などがある。5V(5VA 及び 5VB)、V-0、V-1 及び V-2 のうち、一般的には、最も難燃性が高いグレードは 5V(5VA、5VB)であり、以下、V-0、V-1、V-2、HB とされている。 (3) ID について 上記(2)のとおり、UL は、UL94 規格の認証を受ける品種の登録時において、IDと呼ばれる材料特定情報の試験をして樹脂材料の同一性を確認しており、この IDは IR(赤外分光分析)、TGA(熱重量分析)及び DSC(示差走査熱量測定)から構成される。 15 下記(4)及び(5)のとおり、UL は、UL746A 規格におけるポリマー・バリエーション及び FUS において、UL94 規格の認証を受けた品種(以下「UL 認定品」という。)の性能と実際に生産されている製品(量産品)の性能の同一性を確認するために ID試験を実施している。 もっとも、UL 認定品の組成を変更しても、必ずしも ID が変化しない場合もある(難燃剤を加えた場合でも ID が変化しない場合もある。)。 (4) UL746A 規格及び UL746B 規格について UL746A 規格は、高分子化合物にかかる短期的な評価試験方法に関する規格である。そして、UL746A 規格におけるポリマー・バリエーション規定(9.9 Polymer variations)として、UL 認定品について、組成変更の前後で同じ性能を維持できているかを確認するための手続が定められている。 UL746B 規格は、高分子化合物にかかる長期的な評価試験方法に関する規格であ る。 (5) UL 認定品の組成を変更する際に求められる対応について UL 認定品の組成を変更する場合には、事前に UL の承認が必要となり、同一のグレード名を維持できるかどうかは、UL746A 規格におけるポリマー・バリエーション規定(9.9 Polymer variations)に従って、UL 認定品について、組成変更前と同じ性能を維持できているか否かの確認によることとなる。すなわち、 ① ポリマー・バリエーション規定に基づく試験の結果、組成変更前後の性能が変わらない場合には、規定所定の手続を経て、UL 認定品と同一のグレード名を維持することができる(この場合、変更前の組成による製品と、変更後の組成による製品は、同一の UL94 規格の認証を取得しているものとして扱② 他方、ポリマー・バリエーション規定所定の試験を経て、組成変更前後の性能が変わる場合には、原則として UL 認定品と同一のグレード名を維持することはできず、新品種として新たに UL94 規格の認証を取得しなければならポリマー・バリエーションにおいて要求される試験内容は、組成中の原材料の種類や増減量等の変更内容によって異なるが、規定所定の条件に応じて、燃焼試験やID 試験等の各種試験の実施が必要となる。 われる。)。 ない。 16 (6) Follow-Up Service(FUS)について UL は、UL 認定品につき、定期的に(年 4 回)、抜き打ちで製造工場を訪問し、製造されている製品が UL 認証取得時と同じ性能を有しているかを確認する(これを Follow-Up Service といい、FUS と略称される。)。UL94 規格の FUS は、大要、以下のような手順で実施される。 まず、製造工場に抜き打ちで訪問した UL の検査員は、当該製造工場にあるペレットの中から特定のペレットのロット番号を指定し、認証取得者に対し、認証取得者において当該指定されたロット番号のペレットで FUS 試験片を成形し、UL に送付するよう指示をする。そして、認証取得者において、UL の検査員に指定されたロット番号のペレットを用いて FUS 試験片を作成し、UL の検査員による立入検査が実施された日から所定の日数内に試験片を UL に送付する。 行う。 その上で、UL は、認証取得者から送付されてきた試験片について、UL に登録された難燃性を満たしているか確認するための試験(燃焼試験)4及び UL に登録されている ID と量産品の ID の同一性を確認するための試験(ID 試験)を 燃焼試験及び/又は ID 試験で不適合となった場合、認証取得者は、①不適合となった要因について UL と協議してその解消を図るか、②UL から 2 回目のロット番号の指定を受けて再度 FUS 試験片を成形・UL に提出し、当該試験片について再度燃焼試験及び/又は ID 試験を受けるかを選択することになる。 2 回目の試験で合格となった場合、不適合は解消されるが、2 回目も不適合となった場合、当該製品は、UL 認証を取得している製品として出荷することが禁止され、問題が解消できない場合は、UL 認証が取り消されることがある。 2 東レグループが UL 認証を取得している事業 (1) 東レ 東レの事業のうち、2022 年 1 月 31 日時点で UL 認証を取得している事業及び当該事業にかかる部署が取得している UL 認証の数は、以下のとおりである。 部署名 UL 認証取得数 繊維事業 ウルトラスエード事業部 1 4 HB 品種に対しては、実施されない。 17 樹脂事業 ナイロン樹脂事業部、自動車材料事69 業第 1 部及び自動車材料事業第 2 部 (ナイロン樹脂「アミラン」にかかる UL 認証取得数である。) PBT・LCP 樹脂事業部、ナイロン樹脂39 事業部、自動車材料事業第 1 部及び(LCP 樹脂「シベラス」に自動車材料事業第 2 部 かかる UL 認証取得数であPBT・LCP 樹脂事業部、ナイロン樹脂80 事業部、自動車材料事業第 1 部、自(PBT 樹脂「トレコン」に動車材料事業第 2 部 かかる UL 認証取得数であPPS 樹脂事業部、自動車材料事業第66 1 部及び自動車材料事業第 2 部 (PPS 樹脂「トレリナ」にかかる UL 認証取得数である。) る。) る。) 8 13 4 2 11 4 462 トレカ樹脂事業部 PPS 樹脂事業部及びケミカルプロセ13 ペフ・発泡体事業部及びペフ製造部2 トヨラック事業部及びトヨラック技150 ス技術部 技術室 術室 ケミカル事業 ケミカルプロセス技術部 フィルム事業 工業材料事業第 1 部 工業材料事業第 2 部 岐阜フィルム技術部 電子情報材料電子材料事業第 1 部 事業 合計 (2) 子会社及び関連会社 18 国内の東レの子会社及び関連会社のうち、2022 年 1 月 31 日時点で UL 認証を取得している会社は東レ・デュポン株式会社ほか 4 社であり、UL 認証取得数は合計29 である。また、海外の東レの子会社及び関連会社のうち、同日時点で UL 認証を取得している会社は東麗塑料(中国)有限公司(通称:TPCH)ほか 14 社であり、UL 認証取得数は合計 504 である。 第5 東レの樹脂事業の取扱製品に発生した UL 認証問題 1 東レの樹脂事業の概要 東レの樹脂事業では、エンプラであるナイロン樹脂、PBT 樹脂、LCP 樹脂及び PPS樹脂など及び準エンジニアリング・プラスチックである ABS 樹脂などの、各種樹脂及び樹脂成形品を展開しており、自動車、電子・電機部品、家電製品、メディカル製品、生活関連製品といった様々な用途に採用されている。 2 当委員会における不適正行為の判断方法等 (1) 不適正行為の認定に関する基本的な考え方 上記第 4・1(5)のとおり、UL 認証においては、UL 認定品の UL 認証取得時の組成を変更する場合には、事前に UL の承認が必要となり、ポリマー・バリエーション規定所定の手続を経て、組成変更前後の性能が変わらない場合には、変更後の組成を追加登録した上で、引き続き UL 認定品として生産を行うことができるが、組成変更前後の性能が変わる場合には、UL 認定品と同一のグレード名を維持することはできず、新品種として新たに UL94 規格の認証を取得することが原則的な手続となる。 そして、UL 規格上、UL 認証取得時の組成(Ⓐ)と UL 認定品として生産されている現行量産品の組成(Ⓑ)が同一であるか否かは、上記第 4・1(6)のとおり、FUSの手続(現行量産品(Ⓑ)から指定された FUS 試験片の組成(Ⓒ)と、UL 認証取得時の組成(Ⓐ)との比較)を通じて確認される仕組みとなっている。 そこで、当委員会としては、UL 規格に反する取扱いが行われている「不適正」行為の有無を調査するに当たっては、UL 認証取得時の組成(Ⓐ)、現行量産品の組成(Ⓑ)、FUS 試験片の組成(Ⓒ)を比較して、以下のように判断した。 ① Ⓐ=Ⓑ=Ⓒの組成の品種(FUS の実績が無い場合はⒶ=Ⓑのみ。)を「適正」とし、Ⓐ≠Ⓑ又はⒷ≠Ⓒの組成の場合を「不適正」と定義する。 19 ② Ⓐ≠Ⓒ又はⒷ≠Ⓒの品種は、FUS において、UL 認証取得時の組成又は現行量産品の組成とは異なる組成の FUS 試験片が提出されていることから、FUSにおいて不適正行為が行われていたと認定した。 ③ 上記に加えて、製品の開発・生産段階の記録を調査できたもののうち、UL 認証取得時の組成と異なる生産処方への組成の変更が行われたにもかかわらず、UL の規定(第 4・1(5)参照)に基づき、新品種としての UL 登録又は組成の追加登録をする等の UL 所定の手続がなされていないものは、Ⓐ≠Ⓑであるため、「不適正」と認定した。 ④ また、製品の開発・生産段階の記録を調査できたもののうち、Ⓐ≠Ⓑであったとは確認できない品種は、Ⓑの ID を東レ社内又は UL が確認して UL が保管するⒶのペレットの ID と同一であればⒶ=Ⓑと推定した。ID が一致しないものは、Ⓐ≠Ⓑであって、「不適正」と認定した。 ⑤ その他、当委員会の調査を通じて UL 規格に反する取扱いがなされていることが確認できたものは「不適正」と認定した。 また、当委員会は、以上の UL 規格に反する不適正行為の有無の調査においては、FUS における不適正行為に対する調査を中心に行った。これは、以下の理由に基づくものである。 まず、FUS における不適正行為には、(i) UL 認証取得時と現行量産品の組成に変更はない(Ⓐ=Ⓑ)が、FUS で確実に合格させるために、現行量産品の組成(Ⓑ)と異なる FUS 試験片(Ⓑ≠Ⓒ)を提出して FUS に合格させる類型、及び、(ii) UL認証取得時と現行量産品の組成が異なる状態(Ⓐ≠Ⓑ)にあることから、FUS で不合格となることを避けるために、現行量産品の組成と異なる組成の FUS 試験片(Ⓑ≠Ⓒ)を提出して FUS に合格させる類型が含まれることとなる。 そして、上記のとおり、(ii)の類型において、UL 認証取得時と現行量産品の組成が異なる状態(Ⓐ≠Ⓑ)であるにもかかわらず、ポリマー・バリエーション規定所定の手続、又は、新品種として新たに UL94 規格の認証を取得する手続をしない場合には、その後の FUS において不適正行為を行い続ける必要が生じる。こうした状況は、FUS における不適正行為の原因行為となるものである(なお、必要な手続を行わないこと自体も UL 規格に反する取扱い(不適正行為)となる(上記③及び④参照)。)。 したがって、FUS を中心とした不適正行為の有無を調査することによって、その件数とともに、上記(i)及び(ii)の双方を含む不適正行為の全体像を把握できるととも20 に、併せて、可能な限り、不適正行為の原因や背景についても調査をすることが可他方で、本件 UL 問題について、FUS における不適正行為につながることとなる、相当古い時期からの他の不適正行為の内容の詳細を網羅的に調査することは、当時の開発・生産段階の記録の保存状況等に鑑みて、相当な困難が伴うことが想定そこで、当委員会としては、FUS における不適正行為に対する調査を中心に据えて調査を行い、その調査過程を通じて、可能な限り、FUS における不適正行為に及ぶこととなる原因行為やその他の不適正行為、そのような原因行為等に及ぶこととなった背景事情についても調査・把握することとしたものである。 能となる。 された。 (2) 当委員会において認定した FUS における不適正行為の件数 下記 3(1)エ及び 4(4)ア記載のとおり、当委員会で認定した ABS 樹脂及びエンプラの FUS における不適正行為の件数は、以下の表のとおりである56。 ア ABS 樹脂の FUS における不適正行為の件数 UL 認証を取得FUS 時に不適正行している品種数 為がなされた品種数 素材 ABS 樹脂 PLA 樹脂 合計 ナイロン樹脂 PBT 樹脂 PPS 樹脂 イ エンプラの FUS における不適正行為の件数 素材 UL 認証を取得FUS 時に不適正行している品種数 為がなされた品種数 64 2 66 22 25 3 144 6 150 69 80 66 21 5 FUS では一つの登録品種に対して何度も FUS が入る仕組みとなっているため、FUS における不適正行為の数を集計するにあたっては、FUS の回数でなく、不適正行為が行われたと判断した登録品種の数で集計をしている。 6 上記の表に記載の件数は、本調査報告書の作成時点までに当委員会が確認することが可能であった資料に基づくものであり、今後の東レによる更なる確認により変動する可能性がある。 LCP 樹脂 トレカ樹脂7 合計 39 6 260 6 0 56 3 ABS 樹脂の不適正行為 (1) ABS 樹脂関連の不適正行為の内容 ア ABS 樹脂及び PLA 樹脂について 以下では、ABS 樹脂関係の FUS における不適正行為を中心に記載する。 東レは、千葉工場及び Toray Plastics (Malaysia) Sdn. Berhad(以下「TPM」という。)において、ABS 樹脂「トヨラック®」や PLA 樹脂「エコディア®」8を生産している。その性質及び利用用途については、主に以下のとおりである9。 製品名 性質及び利用用途 ABS 樹脂「トヨラック®」 「トヨラック®」は、アクリロニトリル、ブタジエン、PLA 樹脂「エコディア®」 バイオマス由来ポリマー素材・製品の統合ブランドスチレンからなる、機械的・化学的・電気的特性及び加工性に優れた熱可塑性の汎用プラスチックであり、成形がしやすく、OA 機器から、自動車の内外装部品、家電用品、日用雑貨に至るまで幅広く利用されている。 で、生分解性の特徴を活かした生活・土木・農業資材分野などに展開しており、砂漠固定緑化用資材にも採用されている。 イ ABS 樹脂における FUS の流れ ABS 樹脂における FUS については、千葉工場にある千葉品証課、トヨラック技術室及び千葉殖産が対応していた。 7 トレカ樹脂はエンプラではないが、名古屋事業場において FUS の実績があったことから、エンプラと同様に調査を行った。 8 2021 年に生産を終了した。 9 なお、Toray Plastics (Shenzhen) Ltd.(TPSZ)において、コンパウンドと呼ばれる生産工程の一部が行われている。 22 FUS の流れについては、時期により手続が異なる部分があるものの、概ね以下のとおりであった10。 課に送付される。 ① UL に指定された量産品のロットのサンプルペレットが各工場から千葉品証② 千葉品証課は、千葉殖産検査課の FUS 担当者に対して、UL へ提出する試験片の作成を依頼し、量産品のサンプルペレットを送付する。 ③ 千葉殖産の FUS 担当者は、トヨラック技術室から受領した FUS 試験片成形条件表に基づいて、FUS に合格することができる品種か否かを確認する。 ④ 合格可能と判断した場合には、千葉殖産の FUS 担当者は、UL に対して、千葉品証課から受領したペレットで試験片を成形し、燃焼試験を実施した後に当該試験片を提出する。 ウ ABS 樹脂の FUS における不適正行為の方法 ABS 樹脂においては、千葉殖産の FUS 担当者において、必要に応じて製品開発 IG に相談するなどして、以下のような方法で、FUS における不適正行為を行う場合があった。 千葉殖産の FUS 担当者が、UL に登録されている製品の ID と同一 ID となる品種のペレット(中には FUS 用に予め作成して千葉殖産にストックしていたものもあった。)を使用して成形した試験片を UL に対して提出する方法 千葉殖産の FUS 担当者が、トヨラック技術室が作成したファイル(下記(2)ウのノウハウ集)等に予め記録されている UL(FUS)用の処方に基づいて、UL に指定された品番のペレットに難燃剤や難燃助剤を添加して成形した試験片を UL に対して提出する方法 千葉殖産の FUS 担当者が、自らの判断で生産処方に難燃剤や難燃助剤を添加したペレットを新たに作成して、そのペレットを成形して試験片を UL に対して提出する方法 エ ABS 樹脂の FUS における不適正行為の件数 ABS 樹脂においては、1992 年 1 月以降、FUS の立ち入り、UL の判定の合否、 10 PLA 樹脂についても同様であるが、以下、個別に触れない場合がある。 23 上記ウの不適正行為を実行したか否か等の記録が残されている(以下、かかるFUS に関する記録を「FUS 管理表」という。)。そこで、当委員会においては、主として FUS 管理表に基づき、1992 年 1 月以降の FUS における不適正行為の有無を検証した。 上記の結果、FUS の実施について客観的に確認できる 1992 年 1 月以降を起点として、(過去登録抹消済品種は含まない。)2022 年 1 月 26 日時点で UL に登録されていた全品種(150 品種)における FUS の不適正行為の有無について登録品種の数で集計したところ、上記 2(2)アのとおり、ABS 樹脂 64 品種、PLA 樹脂 2品種の合計 66 品種であった。 オ 開発・生産する際の FUS における不適正行為に及ぶこととなる原因行為(不適正行為) ABS 樹脂については、FUS における不適正行為の他、新たな製品又はその改良製品を開発・生産する際に、当該製品を製造するためのものとして東レにおいて決定した処方(生産処方)について、UL に申請中又は UL 認証を取得した処方(UL 申請処方)との乖離が生じている(組成変更が生じている)にもかかわらず、UL 規格所定の手続(第 4・1(5)参照)を行うことなく UL 申請処方によって取得した UL 認証をそのまま用いて、UL 認定品として生産・販売されていた事例があることが確認された。かかる行為自体も UL 規格所定の手続に照らして「不適正」なものであるが、これは、FUS に着目した場合には、FUS における不適正行為に及ぶこととなる原因行為となる。その経緯は、下記(2)のとおりである。 (2) ABS 樹脂における不適正行為の経緯 当委員会の調査において明らかになった、ABS 樹脂において FUS における不適正行為を中心とした不適正行為が実行され、また、継続してきた経緯は、以下のとおりである。 ア ABS 樹脂の開発・生産段階における原因行為等 (ア) ABS 樹脂の開発・生産段階における原因行為 ABS 樹脂においては、1980 年代後半以降、一部の品種について UL 申請処方と生産処方の乖離の度合いが大きく、上記(1)オで述べた開発・生産段階において FUS における不適正行為に及ぶこととなる原因行為が存在した。 24 当委員会においては、保管されている記録からして UL 認証取得時の UL 申請処方と生産処方に乖離の存在が疑われた複数の品種(以下「本件乖離疑義品種」という。)について、現存している UL 認証申請前後の資料をもとに、資料の分析及び当時の関係者のヒアリングを行ったところ、1986 年以降にトヨラック技術室開発 IG 内で UL 申請業務に従事していた者や開発を担当していた者が、開発・生産段階において UL 申請処方と生産処方の乖離が存在していたこ

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