サカイホールディングス(9446) – 独立調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ

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開示日時:2022/03/25 18:45:00

損益

決算期 売上高 営業益 経常益 EPS
2018.09 1,884,208 86,678 86,751 31.57
2019.09 1,674,781 98,162 93,762 35.04
2020.09 1,531,479 150,425 149,526 74.24

※金額の単位は[万円]

キャッシュフロー

決算期 フリーCF 営業CF
2018.09 -47,779 194,148
2019.09 -177,028 85,501
2020.09 234,444 265,922

※金額の単位は[万円]

▼テキスト箇所の抽出

各 位 2022 年 3 月 25 日 会 社 名 株 式 会 社 サ カ イ ホ ー ル デ ィ ン グ ス 代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 肥 田 貴 將 ( J A S D A Q : コ ー ド 番 号 9 4 4 6 ) 問合せ先 I R 戦 略 部 電話番号 052(262)4730 独立調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ 当社は、2022 年 2 月 9 日に公表いたしました「独立調査委員会の設置及び 2022 年 9 月期第 1四半期決算発表の延期に関するお知らせ」のとおり、連結子会社における売掛金の過大計上の疑いについて、独立性、専門性の高い独立調査委員会を設置し、同委員会による調査に全面的に協力してまいりました。本日、独立調査委員会より調査報告書を受領しましたのでお知らせいたします。 当社は、独立調査委員会の調査結果及び提言を真摯に受け止め、十分に分析・検討のうえ、その内容を経営に反映し、提言に沿って具体的な再発防止策を策定し、ガバナンス体制及び管理体制の強化に取り組んでまいります。内容につきましては、確定次第、速やかに公表いたします。 株主、投資家の皆さまをはじめとする関係者の皆さまには多大なるご心配とご迷惑をおかけいたしましたことを改めて深くお詫び申し上げます。 記 1. 調査結果について 2. 今後の対応について 調査委員会の調査結果につきましては、添付の「調査報告書」をご覧ください。 なお、個人情報保護及び機密情報保護等の観点から、部分的非開示処置をしております。 2022 年 2 月 14 日付「2022 年 9 月期第 1 四半期報告書の提出期限延長に係る承認に関するお知らせ」にて公表のとおり、2022 年 9 月期第 1 四半期報告書の提出期限を 2022 年 3 月 31 日(木)とする旨の承認をいただいております。 (1)過年度の有価証券報告書等及び決算短信の訂正について 独立調査委員会の調査結果を受けて、過年度の有価証券報告書及び四半期報告書の訂正報告書の提出とともに、決算短信の訂正を 2022 年 3 月 31 日(木)までに行う予定です。 (2)2022 年 9 月期第 1 四半期決算発表について 延長後の提出期限であります 2022 年 3 月 31 日(木)までに監査法人による四半期レビュー報告書を受領し、2022 年 9 月期第 1 四半期決算短信及び 2022 年 9 月期第 1 四半期報告書を提出する予定です。 以上 株式会社サカイホールディングス 御中 調 査 報 告 書 2022 年 3 月 25 日 独立調査委員会 委 員長 川 上 明彦 委 員 柴 田 和範 委 員 矢 崎 信也 はじめに ―当委員会の設置、調査方針、委員構成及び独立性・中立性を担保する調査手法― 1. 当委員会の設置に至る経緯 株式会社サカイホールディングス(SHD)は、2022 年 9 月期第 1 四半期報告書に係る四半期レビュー手続の過程で、会計監査人である栄監査法人から、SHD の子会社である株式会社セントラルパートナーズ(CPS)において過年度に不適切な会計処理(売掛金の過大計上)が行われている疑義があるとの指摘を受け、独立調査委員会(以下「当委員会」という。)を設置し調査することになった。 2. 当委員会の設置 当委員会は、2022 年 2 月 9 日、下記の目的で設置された。 記 (1) 栄監査法人より指摘がなされた CPS における売掛金の過大計上(以下「本件不正会計」という。)に関する事実関係の調査 (2) 本件不正会計に至る経緯、動機、背景並びに SHD 及び CPS 以外のグループ企業(子会社)に関する類似事案の存否等に関する調査 (3) 前二号の不正会計が存在する場合、それを生じさせた内部統制、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点及び企業風土の分析並びに再発防止策の提案 (4) 上記に関連する調査報告書の作成 3. 当委員会の方針、委員構成及び独立性・中立性を担保する調査手法 (1) 当委員会は、SHD が社会的責任(CSR)に基づきステークホルダーその他の関係諸機関に対する説明責任を十分果たすことができるように、調査により判明した事実とその評価が現 SHD 経営陣に不利となる場合であっても、それらすべて報告書に明記することを SHD に対し伝え合意した。 (2) 当委員会は、SHD のみならず SHD グループ全体において、本件不正会計と同様あるいは類似の不正会計の疑義の有無、その温床になるような企業風土の有無なども調査の視野に入れて、SHD グループ全体の発展を阻害する要因を除去することを目指した。そこにおいて、現 SHD 経営陣に対する信頼あるいは不信も含めて、従業員の「生の声」を重視して調査を行うことにした。 (3) 当委員会は、このような方針を踏まえて、日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を踏まえて構成するものとし、その運営、調査の実施、調査報告書の作成等については、原則として関係各法規及び同ガイドライ1 ンをふまえ証拠に基づき認定された事実の評価、及び、その原因分析を行うことに(4) このような当委員会の設置目的から、委員構成は、弁護士川上明彦(委員長)、公認会計士柴田和範の 2 名に、2020 年 12 月から SHD の社外取締役である弁護士矢崎信也を加えた 3 名とした。その委員構成は、これまで SHD 及び SHD グループに全く関りのなかった川上及び柴田が中心となり、SHD 及び SHD グループにつき相応の知見を有する矢崎の参加を求めた結果である。 (5) このような調査の方針と運用により、当委員会は、独立性、中立性を担保しながら、委員 3 名のほか、補助者 8 名の補助を得て、短期に充実した調査を行うことにした。 した。 (6) 付言 当委員会は、従業員の「生の声」を聴くために SHD 及び SHD グループの全従業員に Web フォームを中心としたアンケート調査を行った。そこにおいて、従業員がアンケート回答を行うにあたり、他者に気兼ねなく、情報漏れを不安視する必要がないように、個人名、自由記載欄などのセンシィティブな情報については、現SHD 社外役員である矢崎には開示せず、川上、柴田のみが確認・分析することにした。また、多数関係者のヒアリングに際しても、関係者が発言を躊躇することのないように事情聴取者及びその補助者の担当決めも慎重に行った。さらに、調査の過程で収集した資料(すべて写し)及び当委員会が作成した本報告書作成のための資料は、当委員会が処分することにした。 2 目次 はじめに ……………………………………………………………………………………………………………….. 1 第 1 本調査の概要 ………………………………………………………………………………………………… 8 1. 調査体制 ………………………………………………………………………………………………………. 8 2. 調査対象及び調査対象期間 …………………………………………………………………………….. 8 3. 調査期間 ………………………………………………………………………………………………………. 8 4. 調査方法 ………………………………………………………………………………………………………. 8 第 2 SHD の概要 ………………………………………………………………………………………………… 11 1. 会社の概要 ………………………………………………………………………………………………….. 11 2. SHD 及び SHD グループの沿革 ……………………………………………………………………..12 3. SHD グループの構成企業 ………………………………………………………………………………13 4. 役員の異動履歴 …………………………………………………………………………………………….14 第 3 CPS の概要 ………………………………………………………………………………………………….16 1. 会社の概要 …………………………………………………………………………………………………..16 2. 事業内容・業績推移 ………………………………………………………………………………………16 (1) 事業内容 ………………………………………………………………………………………………..16 (2) 業績推移(本件不正会計による影響前のもの) …………………………………………..16 3. 役員の異動履歴 …………………………………………………………………………………………….18 4. 組織構成 ………………………………………………………………………………………………………19 第 4 本件不正会計の背景事情 ………………………………………………………………………………..20 1. CPS の設立経緯 ……………………………………………………………………………………………20 2. 代理店手数料収入にかかる売上の計上基準(2 年基準) …………………………………….20 (1) 代理店手数料収入の仕組み ……………………………………………………………………….20 (2) 採用経緯 ………………………………………………………………………………………………..21 (3) (4) 2 年基準の内容 ……………………………………………………………………………………….24 2 年基準に基づく仕訳データの作成方法 …………………………………………………….27 3. CPS の業務体制等…………………………………………………………………………………………31 (1) 経営層 …………………………………………………………………………………………………..31 (2) 保険代理店業務 ………………………………………………………………………………………32 (3) 経理業務 ………………………………………………………………………………………………..33 4. 経営目標の管理 …………………………………………………………………………………………….34 (1) 会長承認 ………………………………………………………………………………………………..34 3 (2) CPS の目標指標(ANP) ………………………………………………………………………..35 (3) 各部署への落とし込み ……………………………………………………………………………..35 (4) 目標の集計 …………………………………………………………………………………………….35 5. SHD・CPS のガバナンス体制 ………………………………………………………………………..36 (1) SHD のガバナンス体制 ……………………………………………………………………………36 (2) CPS のガバナンス体制 …………………………………………………………………………….38 6. SHD の企業風土 …………………………………………………………………………………………..40 (1) 企業風土に関するアンケート ……………………………………………………………………40 (2) SHD の企業風土……………………………………………………………………………………..44 7. SHD の過去の不祥事 …………………………………………………………………………………….44 第 5 本件不正会計に関する調査結果 ……………………………………………………………………….46 1. 本件不正会計の全体像 …………………………………………………………………………………..46 2. 発覚の経緯 …………………………………………………………………………………………………..46 3. 具体的手法 …………………………………………………………………………………………………..47 (1) 3 つの具体的手法の説明 …………………………………………………………………………..47 (2) その他の手法 ………………………………………………………………………………………….54 4. 財務諸表への影響額 ………………………………………………………………………………………55 5. 不正が行われた背景 ………………………………………………………………………………………58 6. 不正の動機・原因 …………………………………………………………………………………………59 (1) 主要な関係者の関与 ………………………………………………………………………………..59 (2) CPS の経理体制の不備 …………………………………………………………………………….61 (3) SHD・CPS のガバナンスの機能不全 …………………………………………………………63 7. 類似事案の調査 …………………………………………………………………………………………….64 (1) CPS における検討 …………………………………………………………………………………..64 (2) SHD 及び CPS 以外の子会社における検討 …………………………………………………71 第 6 再発防止策の提言 ………………………………………………………………………………………….73 1. CPS の経理業務について ……………………………………………………………………………….73 (1) 問題点 …………………………………………………………………………………………………..73 (2) 再発防止策 …………………………………………………………………………………………….73 2. 内部統制システムの見直し及び構築について ……………………………………………………74 (1) CPS における内部統制について ………………………………………………………………..75 (2) SHD における内部統制について ……………………………………………………………….77 3. 役職員のコンプライアンス意識の醸成 ……………………………………………………………..80 (1) 問題点 …………………………………………………………………………………………………..80 4 (2) 再発防止策 …………………………………………………………………………………………….80 4. ガバナンス体制の再構築の必要性 ……………………………………………………………………81 (1) 取締役について ………………………………………………………………………………………81 (2) 監査役の監査体制 ……………………………………………………………………………………82 おわりに ……………………………………………………………………………………………………………….84 別紙 企業風土等に関するアンケートの回答要約 ………………………………………………………86 5 略語等 本文中の表記 正式名称等 株式会社サカイホールディングス(商号変更前の株式会社エスケ 株式会社エスケーアイ(2016 年に株式会社エスケーアイ分割準ーアイを含む。) 株式会社セントラルパートナーズ 備会社として設立されたもの) エスケーアイ開発株式会社 エスケーアイフロンティア株式会社 エスケーアイマネージメント株式会社 株式会社光通信 株式会社 NFC ホールディングス(旧:株式会社ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング) ________________________________________________________ SHD CPS SKI SKIK SKIF SKIM 光通信 NFC A 社 B 社 C 社 D 社 E F G H I J K L M N O P Q ____________ ____________ ____________ 本文中の表記 役職・所属(主なもの) CPS 代表取締役 CPS 取締役 SHD 経理部次長、元 CPS 経理部長 SHD 代表取締役、CPS 取締役 元 SHD 代表取締役 SHD 取締役、CPS 取締役 SHD 監査役 SHD 社外監査役 SHD 社外監査役、CPS 監査役 元 SHD 取締役、元 CPS 監査役 CPS 管理本部長 SKI 営業統括部長、元 CPS 管理部長 CPS 営業部マネージャー 6 R S T U V CPS 営業管理部(一般社員) CPS 管理部課長代理 CPS 経理部課長 CPS 経理部(一般社員) SHD 経理部チーフ、元 CPS 経理部 7 第1 本調査の概要 1. 調査体制 また、当委員会は、以下の公認会計士及び弁護士等を委員の補助者として選任し、 当委員会は、以下のような構成により調査を実施した。 委員長 川上明彦(弁護士) 委 員 柴田和範(公認会計士) 委 員 矢崎信也(弁護士、SHD 社外取締役) 本調査の補助にあたらせた。 補助者 三宅恵司(公認会計士) 補助者 西原浩文(公認会計士) 補助者 筒井敬士(公認会計士) 補助者 夏目久樹(弁護士) 補助者 杉谷聡(弁護士) ほか弁護士 2 名、公認会計士試験合格者 1 名 なお、当委員会の委員長、委員及び補助者は、矢崎委員が SHD の社外取締役であることを除き、SHD との利害関係を有していない。 2. 調査対象及び調査対象期間 本件不正会計を実行した G は、当委員会設置前の社内調査において、本件不正会計の始期を 2016 年 9 月期第 2 四半期(2016 年 1 月から 2016 年 3 月)と申告していた。そこで、当委員会は、本調査の開始にあたり、2016 年 1 月から 2022 年 2 月までに行われた本件不正会計を調査対象の中心とした。 その後、当委員会は、本調査において収集した資料等を踏まえ再度検討したところ、本件不正会計の始期が 2016 年 1 月以前に遡ることはないとの判断に至っている。 3. 調査期間 4. 調査方法 当委員会は、2022 年 2 月 9 日から同年 3 月 25 日までの間、本調査を実施した。 当委員会は、①関係資料(CPS が代理店契約を締結している保険会社から本調査開始後に再取得した保険代理店手数料明細を含む。)の閲覧・検討、②関係者に対するヒアリング、③CPS 役員(E、F)の業務用端末(タブレット端末 2 台及びスマー8 第 1 本調査の概要 トフォン 1 台/デジタルフォレンジックを実施)及び CPS 共有サーバー・メールサーバーに保存されていたデータの分析・検討、④SHD グループの社員に対するアンケートの回答結果の分析・検討、⑤会計データ等の分析・検討により、はじめにで述べた当委員会の設置目的を踏まえた調査を実施した。 当委員会によるヒアリング対象者は、以下のとおりである。 氏名 役職・所属(主なもの) E F G H J K L M V N P O Q R CPS 代表取締役 CPS 取締役 SHD 経理部次長、元 CPS 経理部長 SHD 代表取締役、CPS 取締役 _____ SHD 取締役 SHD 取締役、CPS 取締役 _____ SHD 社外取締役 _____ SHD 社外取締役 SHD 監査役 SHD 社外監査役 SHD 社外監査役、CPS 監査役 _____ SHD 管理部長 SHD 経理部チーフ、元 CPS 経理部 _____ SHD 内部監査室グループ長 元 SHD 取締役、元 CPS 監査役 _____ 元 SHD 取締役 _____ 元 SHD 社外取締役 _____ SKI 代表取締役、元 SHD 取締役 SKI 営業統括部長、元 CPS 管理部長 CPS 管理本部長 _____ CPS フィナンシャル事業本部副統括 CPS 営業部マネージャー CPS 営業管理部(一般社員) _____ CPS QM 部課長 _____ CPS QM 部課長代理 _____ CPS 営業サポート部課長代理 9 第 1 本調査の概要 _____ CPS 営業サポート部(一般社員) _____ CPS 営業サポート部(一般社員) S T U CPS 管理部課長代理 CPS 経理部課長 CPS 経理部(一般社員) 10 第2 SHD の概要 1. 会社の概要 であった。 SHD は、1991 年 3 月 19 日に設立された。設立時の商号は、株式会社エスケーアイ SHD は、2017 年 10 月 1 日付で会社分割を実施し、SHD の移動体通信機器販売関連事業(携帯電話販売ショップ運営事業)を完全子会社である SKI(「株式会社エスケーアイ分割準備会社」の商号で設立された会社分割承継会社が同日付で株式会社エスケーアイに商号変更した。)に承継させて持株会社へ移行するとともに、商号を現在の株式会社サカイホールディングスに変更した。この会社分割の実施後も、SHD は、再生可能エネルギー事業を実施しており、純粋な持株会社にはなっていない。 SHD の会社概要は、以下のとおりである。 商号 株式会社サカイホールディングス 本店所在地 名古屋市中区千代田五丁目 21 番 20 号 設立日 資本金 代表者 1991 年 3 月 19 日 747,419,634 円 H(代表取締役社長) 主な事業内容 グループの統括・管理、再生可能エネルギー事業等 事業年度 毎年 10 月 1 日から 9 月 30 日まで 上場市場 JASDAQ(コード番号 9446) 従業員数 30 名(2021 年 9 月 30 日時点) なお、ほかに臨時従業員 4 名(年間平均雇用人数)がいる。 機関設計 取締役会、監査役及び監査役会並びに会計監査人を設置 会計監査人 栄監査法人(継続監査期間 11 年/2021 年 9 月 30 日時点) 11 2. SHD 及び SHD グループの沿革 1991 年 3 月 名古屋市中区に株式会社エスケーアイ(現 SHD)を設立(資本金第 2 SHD の概要 2,000 千円) 10,000 千円) 1999 年 9 月 名古屋市中区にテレコムワン株式会社(現 SKIK)を設立(資本金2001 年 4 月 株式を日本証券業協会へ店頭登録 2001 年 9 月 関東支社を横浜市中区に設置 2002 年 1 月 決算期を 10 月 31 日から 9 月 30 日に変更 2003 年 5 月 関東支社を東京都港区に移転し、東京支社に改称 2004 年 12 月 日本証券業協会への店頭登録を取消し、ジャスダック証券取引所に株式を上場 2006 年 1 月 NFC との合弁会社として CPS を設立 2008 年 7 月 CPS が青森県に東北支店(青森コールセンター)を開設 2009 年 2 月 東京支社を横浜市港北区に移転し、関東支社に改称 2009 年 9 月 愛知県知多市に SKIM を設立(資本金 90,000 千円) 2010 年 4 月 ジャスダック証券取引所と大阪証券取引所の合併に伴い、大阪証券取引所 JASDAQ に上場 2013 年 7 月 東京証券取引所と大阪証券取引所の現物市場統合に伴い、東京証券取引所 JASDAQ(スタンダード)に上場 2014 年 4 月 CPS が新潟県に新潟支店(新潟コールセンター)を開設 2016 年 10 月 持株会社体制へ移行するため、株式会社エスケーアイ分割準備会社2017 年 10 月 持株会社体制への移行を完了し、株式会社サカイホールディングス(現 SKI)を設立 に商号変更 2018 年 11 月 名古屋市中区に SKIF を設立(資本金 20,000 千円) 12 3. SHD グループの構成企業 SHD グループを構成する企業の関係図は、以下のとおりである。 第 2 SHD の概要 13 4. 役員の異動履歴 過去 10 年間の SHD グループにおける役員の異動履歴は、以下のとおりである。 第 2 SHD の概要 14 第 2 SHD の概要 15 第3 CPS の概要 1. 会社の概要 CPS の会社概要は、以下のとおりである。 商号 株式会社セントラルパートナーズ 本店所在地 岐阜県大垣市神田町一丁目1番地 2006 年 1 月 17 日 190,000,000 円 E(代表取締役社長) 主な事業内容 保険代理店事業 設立日 資本金 代表者 事業年度 上場市場 従業員数 毎年 10 月 1 日から 9 月 30 日まで 非上場 126 名(2021 年 9 月 30 日時点) 機関設計 取締役会、監査役を設置 会計監査人 非設置 2. 事業内容・業績推移 (1) 事業内容 なお、ほかに臨時従業員 90 名(年間平均雇用人数)がいる。 CPS の事業は、コールセンターを拠点とした保険代理店事業である。拠点となるコールセンターは、本店(岐阜県大垣市)、東北支店(青森市)、新潟支店(新潟市)にある。CPS の中心的な事業モデルは、代理店契約を締結した保険会社の保険商品(主に医療保険)を消費者向けに紹介・販売し、これにより成約した保険契約について、保険会社から保険料に応じて支払われる手数料収入を得るというものである。 (2) 業績推移(本件不正会計による影響前のもの) CPS の業績(本件不正会計の影響額修正前のもの)の概要は、次ページのとおりである。 16 CPS の業績推移(本件不正会計の影響額修正前) (単位:千円) 科目名 2015 年 9 月期 2016 年 9 月期 2017 年 9 月期 2018 年 9 月期 第 3 CPS の概要 1,236,284 1,290,919 1,201,993 1,189,333 ― ― ― ― 1,236,284 1,290,919 1,201,993 1,189,333 1,034,092 1,055,203 1,025,128 1,069,155 235,715 176,864 120,178 経 常 利益 236,538 243,154 184,337 121,626 8,643 1,205 ― 216 242,938 87,595 3,405 8,414 940 92,579 55,300 221,616 112,738 △30,136 151,937 139,015 2,511 1,063 ― ― 121,626 4,594 25,715 91,315 科目名 2019 年 9 月期 2020 年 9 月期 2021 年 9 月期 売上 高 売 上 原価 1,148,887 1,000,503 1,203,060 ― ― ― 売 上 総 利益 1,148,887 1,000,503 1,203,060 1,066,019 1,000,348 1,104,965 売上 高 売 上 原価 売 上 総 利益 販売費及び一般管理費 営 業 利益 営 業 外 収益 営 業 外 費用 特 別 利益 特 別 損失 税引前当期純利益 法人税・住民税・事業税 法人税等調整額 当 期 純 利益 販売費及び一般管理費 営 業 利益 営 業 外 収益 営 業 外 費用 経 常 利益 特 別 利益 特 別 損失 税引前当期純利益 法人税・住民税・事業税 法人税等調整額 当 期 純 利益 202,192 35,318 971 ― ― 236,538 94,827 △8,322 150,033 82,868 2,053 2,818 82,103 3,417 ― 85,521 33,309 2,075 50,136 98,095 2,146 4,700 95,541 9,762 24,942 80,361 35,189 9,344 35,826 155 9,547 4,855 4,847 31,051 ― 35,898 10,305 9,826 15,766 17 第 3 CPS の概要 3. 役員の異動履歴 過去 10 年間の CPS における役員の異動履歴は、以下のとおりである(なお、就任・退任時期は一律に毎年 12 月と表示しているが、一部異なるものがある。詳細は、前述第 2 の 4.を参照されたい。)。 18 4. 組織構成 現在の CPS の組織構成は、以下のとおりである。 第 3 CPS の概要 19 第4 本件不正会計の背景事情 1. CPS の設立経緯 CPS は、光通信グループの NFC と SHD との合弁会社として設立された。当時、第三分野の保険に注目が集まっていたこと、自治体から助成金を得られると見込まれたことなどが主要な理由となり、光通信グループと SHD は、大垣に本社を置く保険代理店を共同で設立することになった。 光通信は SHD の大株主でもあり、CPS の設立は、光通信から SHD への提案がきっかけとなっている。CPS の設立当初は、光通信グループから CPS への人材の派遣が積極的に行われていた。E 及び F は、ともに光通信グループから CPS に転籍してきた者である。 2. 代理店手数料収入にかかる売上の計上基準(2 年基準) (1) 代理店手数料収入の仕組み CPS の主な収入は、自らが募集し成約した保険契約について保険会社から支払われる保険(募集)代理店手数料(以下「代理店手数料」という。)である。 CPS が取得できる代理店手数料は、保険会社ごと・保険商品ごとに支払条件が異なっているものの、いずれの場合においても、保険契約者が保険会社に支払う保険料に対する代理店手数料の割合、代理店手数料の発生期間(たとえば 5 年間又は 10年間)、保険契約が途中解約などにより早期に失効した場合の既払代理店手数料の戻入方法などが決められる。また、代理店手数料は、保険契約者と保険会社との間の保険契約が継続していることを前提として支払われる。 本件不正会計の手口(詳細は後述第 5 の 3.のとおり)は、代理店手数料収入にかかる CPS の売上計上基準として「2 年基準」が採用されていたことを前提に、次の二つの仕組みを利用するものであった。 ア 保険料に対する代理店手数料の割合 保険会社が CPS に対し発生期間に支払う代理店手数料は、保険契約の 1 年目と2 年目以降とで大きく異なることが特徴的である。すなわち、保険料に対する代理店手数料の割合は、1 年目は高く、2 年目以降は低くなる(2 年目以降は、1 年目のおおむね 10 分の 1 程度になる。)。たとえば、保険契約者が保険会社に支払う 1年間の保険料の合計が 1,000 となる場合、1 年目の代理店手数料合計は 100(保険料の 10%)となり、2 年目以降の代理店手数料合計は年間 10(保険料の 1%)と20 第 4 本件不正会計の背景事情 なるといった具合である(なお、以上に示した手数料率は例示である。)。 イ 代理店手数料が発生する保険契約の情報を CPS が得る仕組み 代理店手数料は、保険契約者が保険会社に対し保険料を支払うごとに、保険会社がその保険契約にかかる募集代理店に対し、支払われた保険料の一部を保険募集にかかる見返りとして支払うものである。保険料の支払方法には月払い、半年払い、年払い等の複数の方法があり、これは保険契約者の選択によって変わるところ、この支払方法に応じて、保険会社から CPS への代理店手数料の支払時期も、月ごと、半年ごと、年ごと等の違いが生じる。CPS が募集した保険契約では、多くの保険契約者が月払いの方法により保険料を支払っているため、CPS が受領する代理店手数料の多くも毎月支払われている。 保険契約者が保険料を支払わない場合、その保険料にかかる代理店手数料収入も発生しない。そのため、CPS の収入の多寡は、保険契約者による保険料の支払いの有無によって左右される。ところが、CPS は、保険契約の当事者ではないため、保険契約継続の有無や保険料支払いの有無に関する情報を直接入手することはできず、保険会社から毎月取得する代理店手数料の入金に関する膨大な明細により、はじめてこれらの情報を知ることができる。保険会社によってやや異なるものの、この明細には、保険契約者の氏名、証券番号、代理店手数料などの情報が含まれている(以下、この明細を「代理店手数料明細」という。)。 (2) 採用経緯 ア 設立当初の売上計上基準(現実の入金額) 2006 年の設立当初の CPS は、売上計上基準として現金基準を採用しており、保険会社から CPS に対し、現実に入金された代理店手数料を売上として計上していた。すなわち、保険契約者の支払方法に応じて月ごと、半年ごと、年ごと等に、保険会社から代理店手数料が現実に入金された時に、その入金額を売上として計上していた。 CPS の事業モデルは、保険契約獲得のために多くの費用をかけ、代理店手数料によってその費用を回収し収益を得るというものである。前述のとおり、代理店手数料は 5 年又は 10 年にわたって長期的に支払われるため、代理店手数料の入金時に売上を計上する基準によると、費用の計上が先行しがちとなる。そこにおいて、保険契約の獲得数が順調に伸びていけば、売上の源泉となる保険契約が蓄積されるから、やがて売上高が費用を逆転し黒字になっていくはずであるが、CPS第 3 期の 2008 年 9 月期までは、営業赤字が続いていた。 21 イ 売上計上基準の変更(2 年基準の採用) 第 4 本件不正会計の背景事情 このように CPS の営業赤字が続いたため、当時、SHD の社長だった I は、2009年 7 月、自ら CPS の代表取締役として、CPS の業績改善に取り組むことになった。この取組みにあたり、代理店手数料にかかる売上の見積計上という手法が採用された。 通常、いったん成立した保険契約は、一定期間の継続が見込まれる。ある月に保険料が支払われた保険契約について、翌月に保険料の支払いが突如途絶えるという割合は、決して高いものではない。したがって、今月、代理店手数料が発生した保険契約については、来月以降も代理店手数料が発生する見込みが高いということになる。これを推し進めると、保険契約の継続が合理的に期待できる期間の将来の代理店手数料収入については、現在の売上として計上してよいと考えられる。SHD 及び CPS の幹部は、このような考えに基づいて、CPS の代理店手数料にかかる売上を見積計上することとした。 そこで、SHD の経理部門の責任者だった N や CPS の幹部らは、当時の CPS が募集した保険契約の平均的な継続率(継続期間)に関するデータを踏まえて検討した結果、当月に代理店手数料が発生した保険契約につき、来月から 2 年間の代理店手数料見込額を現実の入金額に加算して当月売上に計上するという基準(以下「2 年基準」という。)を考案した。N は、SHD の当時の会計監査人である有限責任監査法人トーマツと 2 年基準の導入について協議したところ、2 年基準の導入による影響の大きさや CPS における保険契約の継続率データの蓄積状況を踏まえ、代理店手数料見込額の集計期間をまずは 1 年とすることで会計監査人の同意を得た。これを受けて、CPS は、2009 年 9 月期は翌月から 1 年間の代理店手数料見込額を当月売上に計上するという方法(以下「1 年基準」という。)で売上を計上し、2010 年 9 月期から 2 年基準により売上を計上することとした(なお、2010年 9 月期から SHD の会計監査人が現在の栄監査法人に交替しているところ、1 年基準から 2 年基準への漸次的な変更について、SHD 及び CPS と栄監査法人との間の協議は行われていない。)。以後、2021 年 9 月期まで CPS は 2 年基準により代理店手数料収入にかかる売上を計上している。 N は、1 年基準の採用が決まった後、CPS の経理部員だった V に対し、新しい売上計上基準に基づいて売上・売掛金を計上するように指示した。V は、この指示に基づいて、表計算ソフト(Microsoft Excel)を利用して、保険会社から取得する代理店手数料明細をもとに 1 年基準(翌年からは 2 年基準)による売上・売掛金を算出するスプレッドシート(表計算ソフトで作成する計算シート。以下同じ。)22 第 4 本件不正会計の背景事情 を作成した。なお、このスプレッドシートは、V が SHD に異動した 2015 年 12月に G へ引き継がれ、以降も、2 年基準に基づく売上・売掛金の計上に用いられた。 その後、2010 年 9 月期には、売上計上基準の変更もあってか、CPS の年間売上高は順調に成長し、設立以来はじめて営業黒字を達成した(下表参照)。 2 年基準導入前後の CPS の売上高及び営業利益 会計年度 年間売上高 営業利益 2008 年 9 月期 374 百万円 △104 百万円 2009 年 9 月期 530 百万円 △80 百万円 2010 年 9 月期 760 百万円 129 百万円 ウ 採用後の状況 1 年基準・2 年基準のいずれであるかに関わらず、将来入金される代理店手数料を前もって売上・売掛金として計上するため、その後の実際の入金状況を保険契約ごと及び保険契約全体について確認する必要があったが、この確認は実施されていない。 2016 年 9 月期には、SHD の会計監査人の依頼により、2 年基準の妥当性の検討が行われた。その後も、会計監査人は、2 年基準の前提となっている状況について変化がないことを確認している。 また、CPS では、2 年基準の採用により損益が著しく改善したため、同基準の採用から間もなく大垣税務署の税務調査を受けることになった。もっとも、税務調査は半年ほどで終了し、2 年基準について特段の指摘はなされなかった。 エ 2 年基準の見直しの動き 現在 CPS の監査役である M は、その就任前の 2017 年頃(当時 SKI の監査役だった。)、E 及び N から、「現在売上が 2 年基準で計上されているが、今後 5 年くらいかけて、2 年基準から新しい基準に変更したいと考えている。新しい基準は、当初は 2 年分の売上・売掛金を計上するが、次月から 2 年を経過するまでは追加で売上・売掛金を計上せず入金による売掛金の消込のみを行い、2 年経過後は入金により売上を計上するというものである。法人課税上は問題ないか。」という相談を受けた。そこで、M は、E 及び N とともに大垣税務署を訪れ説明したところ、法人課税上は売上計上基準の変更について特に問題視しないという回答を得 た。 23 第 4 本件不正会計の背景事情 しかし、その後、E が SHD の会計監査人に新しい基準への変更について相談したところ、会計監査人は「会社から提案された会計方針に妥当性がなく、会計方針の変更に正当な理由がないため、2 年基準の変更はできない。」と回答したため、最終的に 2 年基準の変更には至らなかった。 なお、2022 年 9 月期から SHD グループに収益認識に関する会計基準の適用が強制されるため、本件不正会計の発覚時には、CPS にとって 2 年基準の見直しは不可避な状況であった。 (3) 2 年基準の内容 後述第 5 の 3.のとおり、本件不正会計は 2 年基準の仕組みを利用したものである。そのため、本件不正会計の具体的手法を理解するためには、前提として、CPS が採用していた 2 年基準の内容を知る必要がある。 そこで、本項では、CPS が代理店手数料収入にかかる売上の計上基準として採用している 2 年基準の内容を詳述する(なお、以下に仕訳例を示すが、これらは説明の便宜のためのものであり、現実に CPS で行われている仕訳を示すものではないことに留意されたい。)。 以下では、月額保険料 1,000(保険料は毎月払い)、1 年目(1 か月目から 12 か月目)の手数料率 10%、2 年目(13 か月目)以降の手数料率 1%の保険契約(以下「モデル契約」という。)を例に説明する。 (初回の代理店手数料の入金があったとき) 2 年基準は、現実に入金された代理店手数料額に加え、翌月から 2 年間(24 か月間)の代理店手数料収入見込額を当月の売上として計上するというものである。 モデル契約について、保険契約者が保険会社に初回の保険料を支払い、これに応じて保険会社から CPS に初回の代理店手数料が入金された場合、CPS は以下のとおり売上を計上する。 借方 貸方 勘定科目 金額 勘定科目 金額 預金 売掛金 100 売上 1,230 1,330 まず、当月の代理店手数料(1 か月目分の保険料に対応するもの)として現実に入金されたものを、売上として計上する。CPS は、実際に保険会社から代理店手数料が支払われるまで(正確には、支払いに先立って取得できる代理店手数料明細を確認するまで)、代理店手数料の発生の有無を正確には把握できていない。 24 第 4 本件不正会計の背景事情 次に、2 年基準に基づいて、翌月から 24 か月分の代理店手数料(2 か月目から 25か月目分の保険料に対応するもの)を売上として計上する。初回の代理店手数料が発生したことをきっかけに、2 年分の代理店手数料収入を見積もって売上にしていると捉えることができる。モデル契約では、2 か月目から 12 か月目までの 11 か月間の手数料は毎月 100、13 か月目から 25 か月目までの 13 か月間の手数料は毎月 10となるから、その合計 1,230(①)が 2 年基準により追加計上される売上である。この売上は、将来(次月以降)に入金が見込まれるものであるから、相手方勘定科目は売掛金となる。 である。 (2 回目の代理店手数料の入金があったとき) モデル契約について、保険契約者が 2 回目の保険料を支払い、これに応じて保険会社から CPS に 2 回目の代理店手数料が入金された場合の仕訳例は、以下のとおり借方 貸方 勘定科目 金額 勘定科目 金額 預金 売掛金 100 売掛金 10 売上 100 10 まず、当月の代理店手数料 100(②/2 か月目分の保険料に対応するもの)として現実に入金されたものは、初回入金時に売掛金として計上しているため、追加の売上とはならない(売掛金が消し込まれるに過ぎない。)。 次に、2 年基準に基づく売上を計上する。2 年基準の対象となる代理店手数料は、翌月から 24 か月分(3 か月目から 26 か月目分の保険料に対応するもの)であるが、このうち初回の代理店手数料の入金時に売上として計上されているものは除く必要がある。モデル契約では、3 か月目から 26 か月目の保険料に対応する代理店手数料の合計は 1,140(③/3 か月目から 12 か月目までの 10 か月間の手数料は毎月 100、13 か月目から 26 か月目までの 14 か月間の手数料は毎月 10)であるが、3 か月目から 25 か月目の保険料に対応する代理店手数料 1,130 はすでに初回代理店手数料の入金時に売上として計上済みであるから、残りの 26 か月目の保険料に対応する代理店手数料 10(④)のみを売上(相手方勘定科目は売掛金)として追加計上する。この売上計上の方法は、3 回目以降も基本的に同様である。 以上の記述にあたり①ないし④の数字を付した金額について、次の等式が成り立25 第 4 本件不正会計の背景事情 つ。 今月の売上額(④/10) = 今月の入金額(②/100) + 翌月から 2 年間の見込手数料(③/1,140) - 前月から 2 年間の見込手数料(①/1,230) したがって、毎月、翌月から 2 年間の見込手数料(すなわち売掛金残高)を計算しておけば、今月の入金額(保険会社から取得する代理店手数料の入金明細によって把握できる。)と前月及び今月の売掛金残高をもとに、今月の売上額が算出できることになる。CPS では、毎月、売掛金元帳を作成し、翌月から 2 年間の見込代理店手数料を算出していた。 (13 回目の代理店手数料の入金があったとき) モデル契約について、保険契約者が 13 回目の保険料を支払い、これに応じて保険会社から CPS に 13 回目の代理店手数料が入金された場合の仕訳例は、以下のとおりである。 借方 貸方 勘定科目 金額 勘定科目 金額 預金 売掛金 10 売掛金 10 売上 10 10 この場合も、基本的な処理は 2 回目の代理店手数料の入金時と同じである。 まず、当月の代理店手数料 10 について、売掛金が消し込まれる。次に、モデル契約について 2 年基準により計上される売上は、14 か月目から 37 か月目の保険料に対応する代理店手数料の合計 240(14 か月目から 37 か月目までの手数料は毎月 10)となる(このうち、前月までに売上計上されていない 10 のみ、新たな売上となる。)。 ここでは、2 年基準により算出される代理店手数料が、単純に、当月の代理店手数料(当月入金額)の 24 倍になっている点に注目されたい。前述のとおり、代理店手数料の手数料率は、1 年目(1 か月目から 12 か月目まで)が高く、2 年目(13 か月目)以降は 1 年目の 10 分の 1 程度まで低下する。そのため、12 回目までは、1 か月目から 12 か月目までの手数料と、13 か月目以降の手数料とを区別して扱わなければならず、2 年基準による売上・売掛金は当月の代理店手数料の 24 倍より必ず小さくなるが、13 か月目以降はこのような考慮は不要となり、当月の代理店手数料の24 倍がそのまま 2 年基準による売上・売掛金となる。つまり、12 か月目の代理店手数料が 100 の保険契約と、13 か月目の代理店手数料が 100 の保険契約とを比較すると、後者の方が、代理店手数料の累計額は大きくなる(後述第 5 の 3.(1)ウにおいて、この特徴を利用した本件不正会計の手法を紹介する。)。 26 第 4 本件不正会計の背景事情 (代理店手数料の入金が途絶えたとき) 前月は代理店手数料の入金があった保険契約(保険料は月払い)について、当月は代理店手数料の入金がないという事態が生じることがある。この事態は、保険契約者が保険料を支払わなかったために発生するところ、保険契約が終了したため保険料が支払われなかったのであれば、これ以降、その保険契約について代理店手数料が発生することはないから、本来ただちに売掛金や見積計上した売上を取り消さなければならない。 もっとも、CPS が入手する代理店手数料明細には、当月に特定の保険契約にかかる代理店手数料が発生したかどうか及び発生した場合の金額は記載されているものの、代理店手数料が発生しなかった場合の理由(契約終了のため、保険契約者の払い忘れのためなど)は記載されておらず、これを知ることはできない。そのため、CPSでは、代理店手数料の入金が途絶えた場合であっても、ただちに売上・売掛金を取り消すことはせず、過去 1 年間に 4 回入金がなくなった時点で滞留とみなし、その保険契約にかかる売上・売掛金を取り消している。 (4) 2 年基準に基づく仕訳データの作成方法 前述のとおり、2 年基準に基づく売上は、当月入金額及び当月売掛金残高の合計と前月売掛金残高との差額として把握できる。そのため、CPS では、毎月、保険会社から取得した代理店手数料明細をもとに 2 年基準に基づいて計算した売掛金元帳を作成した上、これを利用して売上に関する仕訳データを作成している。本件不正会計の手法を理解するにあたり特に重要な点は、当月 1 か月分の代理店手数料明細をもとに、2 年基準による売上を算出している点である(この結果、当月分の代理店手数料明細のみを書き換えることにより、将来 2 年分に入金が見込まれる売上を改ざんできることになる。)。 CPS の売掛金元帳は、表計算ソフトを用いて作成した複数のスプレッドシートの集合体である。このスプレッドシートにより、月別・保険会社別・保険種類別・証券番号別に、保険契約ごとの売掛金残高(前述のとおり、これは翌月から 24 か月間の代理店手数料の見込額の合計である。)を管理している。 以下では、売掛金元帳の作成方法につき、CPS の主要な取引先である B 社及び A社を例に説明する。 ア B 社、A 社共通の事項 27 CPS では、手数料が前受けで入金される保険契約と、それ以外の継続的な入金第 4 本件不正会計の背景事情 が見込まれる保険契約(以下「2 年基準適用契約」という。)とで売掛金の計算方法が異なるため、売掛金元帳(スプレッドシート)を別々に作成している。CPS の売上の大半を占めているのは、継続的な入金が見込まれる保険契約にかかる保険 以下では、2 年基準に基づく売掛金元帳の作成方法を説明する。 代理店手数料である。 ① 保険契約の選別 2 年基準は、今月に代理店手数料が支払われた保険契約について、翌月から2 年間の代理店手数料の見込額を売上として計上するものである。そのため、保険会社から取得した代理店手数料明細に基づいて、当月に代理店手数料の入金がある保険契約を把握することになる。 ② 入金回数による計算対象契約及び計算対象月数の決定 A 社の場合は、保険契約の成立から 5 年(60 か月)、B 社の場合は保険契約の成立から 10 年(120 か月)にわたり手数料収入を得ることができるため、経過月数(入金回数)により計算対象者及び計算対象月数を決定する。 具体的には、A 社の場合、入金回数が 1 回目から 36 回目までの場合は 24か月分、37 回目から 60 回目の場合は残りの回数分(0 か月から 23 か月分)が計算対象月数となり、60 回目以降は計上対象としない。B 社の場合には、入金回数が 1 回目から 96 回目の場合は 24 か月分、97 回目から 120 回目の場合は残りの回数分(0 か月から 23 か月分)が計算対象月数となり、120 回目以降は計上対象としない。 なお、保険契約の中には、保険料が毎月支払われるもの以外に、半年一括入金(半年払い)、年一括入金(年払い)の契約が存在する。半年払い、年払いの契約については、保険会社からのデータに基づいて入金回数を補正して計算を実施している。具体的には、半年払いの場合は 1 回の入金を 6 回分の入金に換算し、年払いの場合は 12 回分の入金に換算する。 なお、B 社からの代理店手数料明細には入金回数のデータが含まれているものの、A 社からの代理店手数料明細にはこのデータが含まれていないため、A社については後述のとおり、別途、CPS において入金回数の集計を行っている。 ③ 計算対象者に乗ずる手数料の算定 代理店手数料の手数料率は、保険契約の 1 年目が高く、2 年目以降は低くなる(おおむね、1 年目の 10 分の 1 程度になる。)。 そのため、代理店手数料明細の各保険契約について、1 年目の契約と 2 年目以降の契約とを区別し、契約プラン(保険商品)ごとに 1 年目の手数料に対す28 第 4 本件不正会計の背景事情 る 2 年目以降の手数料の割合(比率)を算出する。こうして得られた 2 年目以降の手数料割合に、1 年目に発生する単月の手数料を乗じることで、2 年目以降の手数料見込額を算出する。 ④ 売掛金計上額の計算 ①で把握した入金対象者について、②で計算した計算対象月数に③で計算した手数料を乗じて、売掛金計上額を算出する。 ⑤ 滞留売掛金の除外 毎月払いの保険契約について、過去 12 か月の間に 4 回代理店手数料が入金されなかった場合には、滞留と判断している。そのような状態になった場合には、その保険契約にかかる売上・売掛金を取り消している。 ⑥ その他の調整 (1)併徴補正 隔月入金のケースでは、保険契約全体で見ると、偶数月で入金される契約が少なくて奇数月で入金される契約が多い傾向にあるが、逆のケースもある。これをそのまま入金が多い奇数月の入金額で 2 年基準により計算すると、奇数月で入金される契約は当月入金額に基づき正しい売掛金残高が算定されるが、偶数月で入金される契約は当月の入金がないため、2 年計上額はゼロと算定され、売掛金が漏れてしまうため、併徴補正という補正が行われる。併徴補正は保険契約ごとに行われるわけではなく、契約全体の補正比率を計算し、それを現時点の売掛金残高に乗じて併徴補正額を計算し、売掛金に加算する。 (2)入金補正 保険契約者の保険料の支払方法について、1 回目と 2 回目以降とで異なる場合に行う入金補正がある。たとえば 1 回目は振込で行い、2 回目からクレジットカード払いになったとすると、事務手続の関係で、1 か月目の入金の次の入金は 3 か月目となり 1 か月空く。その場合 2 か月目も入金が続いているものとみなして、売掛金を補正している。 上記①~⑥についてはスプレッドシート内での複雑な関数や数式、スプレッドシート間のリンクを用いて計算を実施している。 イ A 社固有の事項 A 社から取得する代理店手数料明細には、B 社から取得するものと異なり、保険契約ごとの経過月数のデータが含まれていない。そのため、CPS において、今29 月の入金が何か月目の保険料に対応した代理店手数料なのかを特定する必要があ第 4 本件不正会計の背景事情 る。 の作成 (ア) 代理店手数料明細のダウンロード まず当月入金額として、代理店手数料明細を A 社の所定のホームページからダウンロードする。 (イ) A 社の代理店手数料累計ファイル(以下「A 社手数料累計ファイル」という。) 次に、A 社手数料累計ファイルを作成する。これは過去すべての A 社の代理手数料明細を集計したものであり、入金回数や手数料比率(同じ契約プランにおける 1 年目手数料と 2 年目以降手数料の比率。以下同じ。)を計算する。 これにより、2 年基準の売掛金を計算するために、保険種類毎に、初年度と次年度以降に分けて保険料と代理店手数料を集計している。 (ウ) A 社集計ファイル(各月分)の作成 A 社集計ファイルの構成は、以下のとおりである。 シート名 内容 手数料累計シート 保険会社から取得する代理店手数料明細から、対象月のみの代理店手数料を転記したシート 対象シート 手数料累計シートをもとに、証券番号、保険種類、代理店手数料を集計するシート 平均料率シート 過去の代理店手数料の金額をもとに、保険種類ごと及び全体の手数料比率(平均料率)を算出するシー入金推移シート 保険契約ごとに、当月の入金が何か月目(何回目)ト の入金かを集計するシート 回数シート 翌月から 2 年間の代理店手数料見込額を算出するために、A 社手数料累計ファイルから保険契約ごとに保険料と代理店手数料を集計するシート なお、このファイルには過年度からの累積情報が記載されているため、スプレッドシートのファイルサイズが著しく大きく、会社から支給されたパソコンのスペックでは作業効率が悪いので、売掛金集計用として月毎にファイルを 3 つ30 に分けて作成している(他方、B 社については、一つのファイルのみが作成され第 4 本件不正会計の背景事情 ている。)。 (エ) 切替手数料精算の反映 保険を解約して新規の契約を締結した場合、当初は新規と同じ扱いで手数料を得られるが、実質的な保険の内容がほぼ変わらなければ、継続契約と同様の扱いに変更され、手数料率も低いものに切り替わるところ、その審査に 6 か月程度かかる。審査が完了して切替手数料精算の対象となった契約は新しい契約ではあるが、1 年目手数料と 2 年目以降手数料が変わらない契約であり、2 年目以降手数料の調整は不要となるため、切替手数料精算の対象となった契約を把握 し、調整する。 3. CPS の業務体制等 (1) 経営層 ア 2013 年 12 月から 2016 年 10 月まで CPS は、2 年基準を採用した頃から、代理店手数料収入の源泉となる獲得保険契約数の累積や売上基準の変更などの影響により、好調な業績をあげるようになった。これを受けて、SHD の代表者であった I は、2013 年頃から CPS の上場を目指した(なお、CPS は、2013 年後半に上場準備を始めたものの、その後間もなく業績が伸び悩み目標に到達しなかったことなどにより、半年ほどで上場準備は中止された。)。 この上場準備への注力として、2013 年 12 月、当時、CPS の取締役だった E をI の後任として CPS の代表取締役に就任させ、営業部長だった F を取締役に昇格させた。また、SHD に在籍していた経理に精通する G を CPS に異動させ経理部長としたことも、その一環であったと認められる。 なお、I は E を重用し、見込んでいた。この事実は、自分の後任として、創業家出身者ではない者としてただ一人 SHD グループ会社の代表者に就任させたことにとどまらない。たとえば、2015 年 4 月に SHD が役員及び従業員に対し新株予約権を発行した際に、創業家出身者以外では最多の 150,000 個の新株予約権が Eに付与されていることや、I が E や周囲の者に対し「H が経営者として成長するまでの間、SHD の社長は E に任せることを考えている」旨の発言をしていたことが指摘できる。 また、E と同時に、H も CPS の代表者に就任し、この頃の CPS は、E と H の共同代表となっていた。もっとも、実情としては、H は CPS の業務に直接関与す31 第 4 本件不正会計の背景事情 ることはなく、後述する会長承認の会議時に CPS の幹部から CPS の業績について報告を受ける程度の受身な関

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