アールビバン(7523) – 社内調査委員会の調査報告書受領及び再発防止策に関するお知らせ

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開示日時:2022/03/22 13:30:00

損益

決算期 売上高 営業益 経常益 EPS
2018.03 718,047 97,377 99,905 41.32
2019.03 816,847 167,754 166,445 157.01
2020.03 877,019 199,442 198,667 99.82
2021.03 788,603 156,930 157,883 55.32

※金額の単位は[万円]

株価

前日終値 50日平均 200日平均 実績PER 予想PER
676.0 676.7 652.135 5.81

※金額の単位は[円]

キャッシュフロー

決算期 フリーCF 営業CF
2018.03 68,243 104,074
2019.03 19,263 106,403
2020.03 -85,925 -60,203
2021.03 105,932 125,672

※金額の単位は[万円]

▼テキスト箇所の抽出

各 位 2022年3月22日 上場会社名 アールビバン株式会社 代表者 代表取締役会長兼社長 執行役員 野澤 克巳 (コード番号 7523) 問合せ先 (TEL 取締役執行役員 経営企画室長 樋口 弘司 03-5783-7171) 社内調査委員会の調査報告書受領及び再発防止策に関するお知らせ 当社は、2022年2月10日付「社内調査委員会の設置及び過年度決算修正並びに決算発表延期に関するお知らせ」においてお知らせいたしましたとおり、2016年以降の売上原価の一部に計上漏れがあることが判明し、2016年以降の決算の訂正を行う必要がでてきました。つきましては、2022年2月10日に社内調査委員会を設置し、調査を行ってまいりましたが、本日、社内調査委員会から調査報告書を受領いたしましたので、その要約版を、下記のとおり、お知らせいたします。 株主・投資家の皆様をはじめお取引先及び関係者の皆様には、ご迷惑とご心配をおかけしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます。当社は、社内調査委員会が認定した事実と原因分析を真摯に受け止めるとともに、今後、同様の事態が発生しないように、役員・社員一同一丸となって再発防止策の徹底に取り組んでまいります。 1.社内調査委員会の調査結果について (1)社内調査委員会の調査結果の概要 記 売上原価の計上漏れの原因を調査しましたところ、売上原価の計上漏れの原因を調査しましたところ、当該取引先は、当社の販売管理システムでの管理上、システム内で5つの取引先に区分して管理をしており、当該取引先ごとに下記の (i) (ii)のパターンを認識し、 (ii)の場合には、商品担当者、またはロイヤリティ入力担当者が、版画シート等が入荷した際、ロイヤリティを入力する業務フローとなっております。 今回、この5つの取引先の中の1つの取引先区分において、(i) のパターンと認識(誤認)をして、各担当が処理をしていたことにより、商品原価の複数の原価構成のうちロイヤリティの原価の計上のいらない商品仕入れとして処理をしてしまっていたため、当該原価の計上を漏らしておりました。 計上漏れの総額(2017年3月期第1四半期から2022年3月期第2四半期までの累計)は688百万円になります。 〈当社の版画等の取引パターン〉 (i) 商品代金にロイヤリティを含めた価格の商品として、 当社へ入荷するパターン(当社 は仕入れとして商品代金のみを販売管理システムへ計上する取引) (ii) 商品代金とは別に販売または版画等の制作段階で、ロイヤリティの発生を認識するパ ターン(仕入れの商品代金に加え、ロイヤリティを販売管理システムへ計上する取引) 社内調査委員会の調査結果につきましては、添付の「調査報告書(要約版)」をご覧ください。 なお、調査報告書については、個人のプライバシー及び取引先様の営業秘密の保護等の観点から、匿名での表記にしております。また、当社にて、内容を要約して公表させていただきます。 (2)社内調査委員会の構成と調査の目的 委員長 園川 勝美 (常勤社外監査役) 委員 郷倉 正人 (独立役員・社外取締役) 委員 石久保 善之(公認会計士・石久保公認会計士事務所) 委員 平 英毅 (弁護士・東京市谷法律事務所所長) 委員 樋口 弘司 (取締役執行役員 内部監査室長) ※委員の郷倉正人氏につきましては、株式会社東京証券取引所の定めに基づく独立役員に指定し、同証券取引所に届け出ております。 2.今後の対応について (1)過年度の有価証券報告書等の訂正について 当社は、社内調査委員会の調査結果を受けて、過年度の有価証券報告書等及び四半期報告書の訂正報告書並びに決算短信の提出を2022年3月22日(火)に行います。 (2)2022年3月期決算について (3)再発防止策について 当社は、2022年3月期の第1四半期、第2四半期決算短信、四半期報告書の訂正、第3四半期決算短信、四半期報告書を2022年3月22日(火)に行います。 再発防止策につきましては、社内調査委員会より、添付の「調査報告書(要約版)」のとおり、提言がございました。当社は、今回の社内調査委員会の調査結果を重く受け止め、本日の取締役会において以下の再発防止策を実施することを決定いたしました。(以下の改善策を講じて、適正な内部統制の整備及び運用を図ってまいります) 1 契約の書面化、及び、取引先毎の契約の統一的な管理体制の構築(当社の特殊性に起因する問 題点への再発防止策) <当社の対応策> 版画システムの取引先コードの登録時、管理部門において、契約内容を確認の上、ロイヤリティの計上の有無を確認し、取引先管理ファイル(新規で作成)に記載し商品担当・ロイヤリティ入力担当・管理担当及び当該上長間で共有する運用といたします。 2 牽制機能を果たし得る組織への転換(業務の属人化の問題点に関する再発防止策) <当社の対応策> ① 当該事業の商品担当を複数化し、牽制機能を働かせます。 ② 明文化されていないものが多いことから、全てマニュアル化し、他の社員が共有できるようにいたし ます。 3 権利義務の内容確認に対する意識向上・教育・指導 <当社の対応策> ① 営業部門・商品部門における著作権に関する業務内容について、内部監査室の監査を年1回重点的に 実施いたいします。 ② 管理部門は、上記の結果を踏まえ、教育・指導を図り、営業部門・商品部門の意識向上を図ります。 4 版画システムの機能向上を図ること <当社の対応策> ① ロイヤリティの版画システム内でのマスター化、自動入力化は、様々な点を考慮する必要があるため、 即時のシステムでの実装は難しいが、システム部門において検討を開始いたします。 ② 商品部門は、月次の作業として、新規作成のロイヤリティ入力の確認リスト(対象月の一覧表)によ り、入荷したにもかかわらず、ロイヤリティが入力されていない、または間違った金額が入力されて いないかを確認する作業を追加いたします。 5 内部統制を強化するための施策 1)経理部門による確認の強化 <当社の対応策> 月次で、版画システムから原価リストを出力し、原価率の低いものやロイヤリティの計上のないもの を総体的に確認する作業を追加いたします。 2)監査部門による監査の強化 <当社の対応策> ① 上記3にも記載のとおり、営業部門・商品部門における著作権に関する業務内容について、内部監 査室の監査を年1回重点的に実施いたします。 ② 内部監査では、会計監査が対象とするような経理的な取引の数値の詳細な把握までは行っていなか った。今回の事態に鑑み、上記①の監査実施時、確認を実施するものといたします。 3)再発防止に向けた経営陣のコミットメント <当社の経営陣のコミットメント> 今回の事態を重く受け止め、本日の取締役会において上記の再発防止策を実施することを決定し、定 期的に、実施状況を取締役会においてモニタリングすることといたします。 3.業績に対する影響について 現状、当期の業績に与える影響は、軽微であると判断しておりますが、影響が見込まれる場合は速やか に情報開示いたします。 以 上 添 付 アールビバン株式会社 社内調査委員会 2022 年3月 22 日 委員長 園川 勝美 (常勤社外監査役) 委員 委員 委員 委員 郷倉 正人 (独立役員・社外取締役) 石久保 善之(公認会計士・石久保公認会計士事務所) 平 英毅 (弁護士・東京市谷法律事務所所長) 樋口 弘司 (取締役執行役員 内部監査室長) 調査報告書(要約版) 第1 調査の概要 1 調査開始及び社内委員会設置の経緯 当社は、2021年10月に書面にて、当社の作家X及び当該管理会社((以下総称して「取引先X」という。)の代理人弁護士事務所から、版画化・商品化に伴う著作権料(以下「ロイヤリティ」という。)の支払いに関する確認の書面を受領した。 これを受けて、当社は、内部監査室及び経理担当部門並びに商品担当部門において、取引先Xへのロイヤリティの支払漏れ及び売上原価データの計上漏れの確認・検証(網羅性の検証を含む)の社内調査に着手したところ、2016年以降の商品原価(売上原価)の一部に計上漏れがあることが判明した(以下「本件」といい、類似事案を含めて「本事案」という。)。その後、過年度の決算訂正が必要になったこと、及び、過年度の会計監査を再度受ける必要が生じたことから、売上原価データの計上漏れの確認・検証(網羅性の検証を含む)の調査に万全を期すため、調査の客観性及び信頼性を高めるため、2022年2月10日、公認会計士及び弁護士含む社内調査委員会(以下「当委員会」という。)を設置した。 2 当委員会の構成 当委員会の構成は以下のとおりである。 委員長 園川 勝美 委 員 郷倉 正人 (常勤社外監査役) (独立役員・社外取締役) 委 員 石久保 善之 (公認会計士・石久保公認会計士事務所) 委 員 平 英毅 (弁護士・東京市谷法律事務所所長) 委 員 樋口 弘司 (取締役執行役員 内部監査室長) また、補助者として、経理グループ6名、内部監査室4名、商品担当部門6名が調査の実務に携わっている。 3 当委員会の調査の目的 当委員会の目的は、下記のとおりである。 ① 本件の事実関係調査 ② 本件の商品原価(売上原価)の計上漏れ額の確定 ③ 本事案の類似事案の発生の有無の確認 ④ 本事案の連結財務諸表等への影響の算定 ⑤ 本事案の原因分析と再発防止の提言 1 第2 調査手続の概要及び調査の方法 1 調査の基本方針 本事案についての調査の基本方針は、以下のとおりである。 ① 取引先Xは、取引先自身の著作権の管理を当社が受託する「著作権管理委託契約」を締 結している唯一の取引先である。 当社では、取引先との契約は、下記の2パターンに取引が分かれる。 (i) 商品代金にロイヤリティを含めた価格の商品として、入荷するパターン(仕入れとし て商品代金のみを販売管理システムへ計上する取引) (ii) 商品代金とは別に版画等の販売段階または制作段階で、ロイヤリティの発生を認 識するパターン(仕入れの商品代金に加え、ロイヤリティを販売管理システムへ計 上する取引) 当社と取引先Xとの取引においては、両パターンが混在している。本件のようなロイヤリティの計上漏れが発生することとなったのは、この両パターンの混在が大きな要因であったと言える。、ロイヤリティの計上漏れが発生する可能性が高い。 このことから、重点的に取引先Xの取引内容を検証する。 ② 本事案の取引は、当社の販売管理システム(以下「版画システム」という)を使用して、 仕入計上とロイヤリティの計上が行われている。当社では多数の作家を取り扱っている ことから、同様のロイヤリティの計上漏れがないかを2015年4月からの版画システムの 全データを分析することで検証を行う。 (上記①、②の検証のデータ・対象期間:2015年4月1日から2021年12月31日) 対象仕入先(1取引先)-売上原価データ 約9,100件・・・個別に商品ごとに原価の算定と網羅性の確認 対象仕入先(1取引先)-売上原価データ 約9,100件・・・商品ごとに原価の実在性の確認(証憑等確認) 全仕入先-売上原価データ 約73,100件・・・個別に商品ごとに原価の算定と網羅性の確認 全仕入先-売上原価データ 約73,100件・・・商品ごとに原価の実在性の確認(証憑等確認) 全仕入先-在庫データ 約474,000件・・・個別に商品ごとに原価の算定と網羅性の確認 全仕入先-在庫データ 約474,000件・・・商品ごとに原価の実在性の確認(証憑等確認) ③ 本事案の関係者は、営業部門の商品担当者、ロイヤリティの入力者、及びその上長と なる。当該関係者を中心にヒアリングを実施するとともに、当社の社長及び前社長、本 件に関連する取引先関係者にもヒアリングを実施した。 当該関係者は下記のとおりである。 ・ 商品担当者(社員A、社員B)・・・商品仕入れ、作家対応を担当 ・ ロイヤリティの入力者(社員C)・・・商品の検品、ロイヤリティの入力を担当 ・ 上記の所属長(社員D)・・・販売部門・商品仕入れ部門の総責任者 2 当委員会が本報告書に係る調査に要した期間は、2022年2月10日から2022年3月8日までである。 本件び本事案に関する調査対象期間は、2015年4月1日から2021年12月31日までで 2 調査実施期間 3 調査対象期間 ある。 4 調査の方法 当委員会による本件及び本事案の調査(以下「本調査」という。)は、以下の方法で行った。 なお、調査の重複・非効率を避けるため、社内調査段階における調査の一部を利用した。 (1) 社員及び取引先等のヒアリング(電子メールでの問い合わせを含む) 2022年 2月 14 日から 2022年 3月 8日までの間に、①当社社員である商品担当者(責任者)2名、ロイヤリティの入力者1名、及びその上長である営業部長1名、社長及び前社長2名、②取引先の役員・関係者2名、合計 8 名に対して合計14回のヒアリングを実施した。 (2) 取引関連資料の精査・取引データの分析 当委員会は、調査にあたり、各担当者から、本事案に関係する取引先との取引データ及び契約書、稟議書(取締役会資料)、注文書等及び会計伝票(会計処理に関する資料含む。)等の取引関連書類・証憑の提出を受け、これらの資料を精査・分析した。 5 調査の前提と限界 本報告書は、当社の関係者及び当社の取引先に対して任意での協力を求め、それにより得られた資料・情報等に依拠して可能な限り適切と考える調査及び分析を行った結果をまとめたものであるが、調査実施者には強制力を伴う調査権限がないため調査には制限が存在した。後日、重要な情報等が開示又は提供されていないことが明らかとなった場合には、本報告書における事実認定や評価が変更される可能性があることを留保する。 3 第3 当社の概要等 1 当社の概要 事業内容 上場市場 決算日 代表者 資本金 会社名 アールビバン株式会社 (英訳名 ART VIVANT CO.,LTD.) 設立 1984 年 11 月 版画等アート作品、アート雑貨の小売業、ホットヨガ・フィットネス店舗の運営、クレジット事業(割賦販売あっせん事業)を行うグループ会社の経営管理 東京証券取引所JASDAQ(スタンダード) 3 月末日 代表取締役会長兼社長 野澤 克巳 1,770,375 千円(2021 年 12 月 31 日現在) 本店所在地 東京都品川区東品川四丁目13番14号 社員数 186名(2021 年12月31日現在、パート社員等は含まない) グループ会社 株式会社ダブルラック TSCホリスティック株式会社 インターナショナル・オークション・システムズ株式会社 会計監査人 アスカ監査法人 4 2 設立からの経緯・沿革(本件にかかわるアート事業に関連する事項を記載) 1984年11月 アールビバン株式会社を設立 1991年 5月 埼玉県入間郡三芳町に埼玉物流センターを新設 1992年10月 東京都新宿区に額装部門(新宿事業所)を設置 1995年3月 新宿事業所及び埼玉物流センターを統合し、埼玉県入間郡三芳町にネットワークセンターを新設 1996年11月 日本証券業協会に株式を店頭登録 2000年8月 デジタルアート事業分野の進出を目的に株式会社イーピクチャーズを設立 2004年12月 日本証券業協会への店頭登録を取消し、ジャスダック証券取引所に株式を上場 2006年3月 会社分割(簡易分割)により、イラスト系アート事業部の全営業を、新たに設立した子会社ジュネックス株式会社に承継 2007年2月 デジタルアートとイラスト系アートのシナジーを目的として、 株式会社イーピクチャーズはジュネックス株式会社を吸収合併し、商号を株式会社e・ジュネックスに変更 2009年3月 アーティストの育成や美術品の購入・販売を目的に株式会社ダブルラックを設立 2009年9月 株式会社ダブルラックを株式会社アートファイナンスに吸収合併し、商号を株式会社ダブ 2010年4月 ジャスダック証券取引所と大阪証券取引所の合併に伴い、大阪証券取引所(JASDAQ 2010年9月 経営資源の集中と組織の効率化を目的に、株式会社e・ジュネックス(連結子会社)を吸 2010年10月 大阪証券取引所ヘラクレス市場、同取引所JASDAQ市場及び同取引所NEOの各市場の統合に伴い、大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)に株式を上場 2013年7月 東京証券取引所と大阪証券取引所の統合に伴い、東京証券取引所JASDAQ(スタンダルラックに変更 市場)に上場 収合併 ード)に上場 5 3 当社のコーポレート・ガバンナス体制 当社は監査役会設置会社であり、当社が定めているコーポレート・ガバナンス体制は下図のとおりである(2021年12月31日現在)。 会計監査人の継続監査期間は、2021年6月30日時点で2年間である。 4 当社の主要な経営指標等の推移(※訂正前の数値にて表示) 決算年月 2016年3月 2017年3月 2018年3月 2019年3月 2020年3月 2021年3月 売上高 経常利益 当期純利益 3,788 4,254 4,474 550 330 611 88 525 318 4,909 1,711 1,254 5,340 1,438 994 5,099 1,044 697 純資産額 10,838 10,565 10,209 10,207 10,105 10,624 (百万円) 6 第4 本件の調査結果の概要について 1. 本件調査結果の概要について (1) 取引先Xにおけるロイヤリティ(売上原価)の計上漏れについて 当委員会の調査の結果、2016年以降、取引先Xに対して支払うべきロイヤリティの計上漏れ(商品原価(売上原価)の計上漏れ)は、688百万円(2022年3月期第2四半期まで)があることが確認された。 (注)各年度財務諸表に与える影響額は、後述の「第6 当社の連結財務諸表に対する影響 額」を参照。 (2) 誤謬・不正の判断について 本調査においては、本件の売上原価の計上漏れに不正の意図であることを示す証拠は見当たらなかった。よって、当委員会は、不正の意図によるものではなく、誤謬による不適切な会計処理と認定した。 2. 発生原因について 売上原価の計上漏れの原因を調査したところ、以下のとおりであった。 当社の版画等の取引パターンは、下記の2パターンに分かれる。 〈版画等の取引パターン〉 (i) 商品代金にロイヤリティを含めた価格の商品として、当社へ入荷するパターン(当社 は仕入れとして商品代金のみを販売管理システムへ計上する取引) (ii) 商品代金とは別に販売または版画等の制作段階で、ロイヤリティの発生を認識するパ ターン(仕入れの商品代金に加え、ロイヤリティを販売管理システムへ計上する取引) 取引先Xは、当社の版画システムでの管理上、システム内で5つの取引先に区分して管理をしており、当該取引先ごとに上記の (i)、(ii)のパターンを認識し、(ii)の場合には、商品担当者、またはロイヤリティ入力担当者が、版画シート等が入荷した際、ロイヤリティを入力する業務フローとなっている。 今回、この5つの取引先の中の1つの取引先区分において、(i)のパターンと認識(誤認)をして、各担当が処理をしていたことにより、商品原価の複数の原価構成のうちロイヤリティの原価の計上のいらない商品仕入れとして処理をしてしまっていたため、当該原価の計上を漏らしていた。 本来であれば、他の取引先の場合、都度、支払額に対して確認をする業務フローとなっているが取引先Xの場合、取引先Xの著作権管理自体を当社が請け負っていたことも、今般の取引先Xの代理人からの指摘まで、発見が遅れた要因である。 発生原因の分析の詳細は、「第7 発生原因の分析」において記載する。 7 第5 類似事案の調査の概要について 1 類似事案の調査結果の概要について (1) 類似事案に関する調査結果について 本事案の取引は、当社の販売管理システム(以下「版画システム」という)を使用し、業務を遂行している。当社では多数の作家を取り扱っていることから、同様のロイヤリティの計上漏れがないかを2015年4月からの版画システムのデータの検証を行った。 調査の結果、取引先X以外において、17の取引先、131件、計上漏れ及び計上間違いの金額 2,196千円が発見された。発生率は0.23%であった。 (2) 類似事案に関する調査の結論について 当委員会は、本事案において、検出された件数から判断して経営上及び財務上大きな影響を及ぼすものでないとの判断に至った。 2. 発生原因について 現在の版画システムは、ロイヤリティの部分において、エクセルでロイヤリティ入力用のマスターデータを作成しており、それをもとにロイヤリティ入力担当者が手で1作品ごとに入力するシステム構成となっている。入力後、ロイヤリティ入力内容を確認する。商品担当は、被請求書を作成し、作家(取引先)に送付をし、相手から返送を受ける。その後会計伝票を計上し、本人、上長、経理と確認・承認をえるフローとなっている。しかしながら、ロイヤリティ入力担当者の入力漏れ・入力間違いにより、計上漏れ等が発生した。 発生原因の分析の詳細は、「第7 発生原因の分析」において記載する。 8 第6 当社の連結財務諸表に対する影響額 当委員会の調査で判明した誤謬の当社の連結財務諸表に対する影響額は下表のとおりである。 なお、これらの訂正に伴う法人税等への影響等の派生的に検討が必要となる論点については下記影響額には含めていない。 (訂正前の連結財務諸表の主要数値) (単位:百万円) 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 通期 通期 通期 通期 通期 第1四半期 第2四半期 第3四半期 8,168 8,770 7,886 2,553 2,652 6,607 2,676 3,931 2,951 979 1,020 ▲599 7,180 3,231 3,948 2,975 973 916 3,345 4,822 3,145 1,677 1,647 533 1,945 3,197 2,778 5,573 3,578 1,994 1,798 1,157 5,107 3,538 1,569 1,603 586 820 1,732 1,102 630 662 439 897 1,754 1,113 641 666 447 純資産額 12,287 12,194 12,887 12,946 13,361 14,159 14,787 (損益計算書項目への影響) (単位:百万円) 決算年月 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 通期 通期 通期 通期 通期 第1四半期 第2四半期 第3四半期 103 ▲103 116 ▲116 123 ▲123 94 ▲94 157 ▲157 44 ▲44 47 ▲47 ▲103 ▲116 ▲123 ▲94 ▲157 ▲44 ▲47 (貸借対照表項目への影響) (単位:百万円) 決算年月 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 通期 通期 通期 通期 通期 第1四半期 第2四半期 第3四半期 103 116 123 94 157 44 47 ▲103 ▲116 ▲123 ▲94 ▲157 ▲44 ▲47 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 決算年月 売上高 売上原価 売上総利益 販管費 営業利益 経常利益 当期純利益 売上原価 営業利益への影響 当期純利益への影響 買掛金 純資産への影響額 9 第7 発生原因の分析 1 本件の特殊性に起因する問題点 本件ロイヤリティの計上漏れの発生の原因として、以下のものが考えられる。 取引先Xは、当社の版画システムでの管理上、システム内で5つの取引先に区分して管理をしている。この5つの取引先の中の1つの取引先区分において、(i) のパターンと認識(誤認)をして、各担当が処理をしていたことにより、商品原価の複数の原価構成のうちロイヤリティの原価の計上のいらない商品仕入れとして処理をしてしまっていたため、当該原価の計上を漏らしていた。 本来であれば、他の取引先の場合、都度、支払額に対して確認をする業務フローとなっているが取引先Xの場合、取引先Xの著作権管理自体を当社が請け負っていたことも、今般の取引先Xの代理人からの指摘まで、発見が遅れた要因である。 2 組織体制に関する問題点 当社においては、本件のアート事業部門の業務を、ほぼ社員A1名で行っていた。同アート事業の商品・作家担当業務等は、単に作品を仕入れるだけでなく、作家と深い信頼関係のもと、新作の決定から販売促進のための作家のプロデュースまで幅広く関与しなければならない。 また、慣習上、作家との契約も書面化されないことが多く、業務も主に担当者による口頭やメール等でのやりとりがされているためにブラックボックス化してしまうことが多く、第三者が客観的に確認するすべがなくなっている。 この結果、作家と直接接触する特定の担当者にその作家に関する業務と責任が集中するとともに、担当者以外の従業員には当該作家の業務に関する十分な知識や能力が不足するという業務の属人化が進行し、上長による監督と牽制が充分に働いていない傾向にある。 本件においては、社員Aの上長、自身が担当する業務の範囲が広範囲に渡っている一方、作家との直接的なコミュニケーションや知識が担当者に劣るため、担当者の誤信を是正する観点からは十分な監督や牽制ができなかったものである。 また、版画等に関してロイヤリティ入力の業務は、社員C1名で担当している。その入力後、商品担当、取引先も内容を確認するが、入力後のデータ全体を入力漏れの観点で、検証する作業はなかった。 以上のような業務の属人化が、本件の誤信の発生を容易にさせ、かつ、その発見・是正を遅らせる原因となったものと考えられる。 3 権利義務の意識・教育が十分ではなかったこと 現状、版画等の仕入れ取引では、当社と取引先との間において、契約書は存在せず、口頭やメール等でのやりとりで行う取引が多く存在する。 会社全体として著作権の権利関係に対する意識が低く、従業員に対する教育も十分でなかったことも、本件問題が発生した一因となっているものと考えられる。 4 内部統制(J-SOX)上の問題点 当社は、内部統制(J-SOX)では、版画等の仕入れの業務プロセスとして、統制を構築している。 前述のとおり、当社の作家との取引は、(i)商品代金にロイヤリティを含めた価格の商品として、当社へ入荷するパターン(当社は仕入れとして商品代金のみを販売管理システムへ計上する取引)と(ii)商品代金とは別に販売または版画等の制作段階で、ロイヤリティの発生 10 を認識するパターン(仕入れの商品代金に加え、ロイヤリティを販売管理システムへ計上する取引)の2パターンの取引が存在する。 業務プロセスのフローチャートとしては、「版画-仕入・買掛金フロー」、「版画・仕入・買掛金(前渡金)フロー」の2つがある。ロイヤリティ入力は、「版画-仕入・買掛金フロー」の中の「加工伝票入力」という処理で、ロイヤリティが発生する場合は、「ロイヤリティが発生する場合(加工した場合)」に分岐し、発生したロイヤリティ額をエクセルで作成したでロイヤリティ入力用のマスターデータをもとに、入力し、自己チェックをし、商品担当部門が請求書・会計伝票処理を、経理部門へ回す業務プロセスを構築している。 かかる内部統制システムの構築しており、当社は、基本的には、間違え・漏れの発生しにくい統制をとっており、内部統制の監査法人の監査を受けている。 しかし、本件では、商品担当の社員A、ロイヤリティ入力担当の社員C、その上長Dとも、当該取引先区分からの仕入れは、ロイヤリティの計上のない商品仕入れとして認識しており、ロイヤリティの計上の必要のない商品仕入れとして、仕入の商品代金のみの計上として処理、確認をし、この点を是正できなかったことが、主要因である。 第8 再発防止策の提言 る問題点への再発防止策) 備を行うよう提言する。 1 契約の書面化、及び、取引先毎の契約の統一的な管理体制の構築(当社の特殊性に起因す 前述のとおり、本件の仕入れ取引については、当該取引先区分を仕入取引と誤認していた。 よって、今後の再発防止策としては、取引先毎に登録を管理部門において統一的に管理し、 複数の商品仕入れルートがある場合には、ロイヤリティ計上の有無を確認・検証する体制の整 2 牽制機能を果たし得る組織への転換(業務の属人化の問題点に関する再発防止策) 前述のとおり、当社においては、同アート事業の商品・作家担当の業務は、ほぼ社員A1名に帰属 し、業務が属人化してしまっていた。 当社内部で牽制機能を効かせるためには、作家の担当者の複数化を検討するよう提言する。 また、これまで担当者の業務内容について、業務報告書等の書類の作成及び管理が徹底されてい なかったことへの反省を踏まえ、第三者、特に上長において担当者の業務内容を把握・確認できるよう、報告事項及び報告の形式について、明文のルールを定めて義務化するよう提言する。 3 権利義務の内容確認に対する意識向上・教育・指導 会社として、今回のように大きな事態を招いてしまうことを肝に銘じて、管理部門及び現場部門に 対して、当社の作家との間の著作権を含む著作権に関する権利義務の内容確認、及びその重要 性に対する意識向上・教育・指導を行うよう提言する 4 版画システムの機能向上を図ること(中期的に実施を検討すべき対応) 現在の版画システムは、ロイヤリティの部分において、エクセルでロイヤリティ入力用のマスターデータを作成しており、それをもとに担当が手で1作品ごとに入力するシステム構成となっている。 これは、①担当者の下記の(i) (ii)のパターンの勘違いによる入力漏れ、②エクセルのロイヤリティマスターのデータの改変可能性、③版画システムへ手入力することでの入力ミス、④入力すること自体の失念等のミスが発生する可能性がある。 11 版画システムは機能向上を図るとすれば、取引先コードごとに、下記の(i) (ii)のパターン登録がされ、(ii)の場合は、ロイヤリティのマスターがシステム内に内包され、自動で計上される機能追加が望ましい。 〈当社の商品計上のパターン〉 (i)商品代金にロイヤリティを含めた価格の商品として、 当社へ入荷するパターン(当社は仕入れとして商品代金のみを販売管理システムへ計上する取引)と(ii)商品代金とは別に販売または版画等の制作段階で、ロイヤリティの発生を認識するパターン(仕入れの商品代金に加え、ロイヤリティを販売管理システムへ計上する取引)の2パターンに取引が分かれている。 4 内部統制を強化するための施策 (1) 経理部門による確認の強化 経理部門は、表面的なチェックにとどまらず、取引内容の適性性までを確認できるよう、確認の向上を図るべきである。特に、対外的な特殊な取引に関しては、十分な注意を払うべきである。 検出された不明な事項は、担当部門への確認、内部監査室との連携を図り、誤謬や不適切な取引の防止を図ることが必要と思われる。 また、例えば、今回売上原価の計上漏れの調査で行ったような、原価率の低いものやロイヤリティの計上のないものを、月次の全取引データを出力し、総体的にチェックするような確認プロセスを追加することも有用であろう。 (2) 監査部門による監査の強化 監査部門に求められる役割は、法令・会社規程の順守、不正・誤謬の防止及びそれらの早期の 発見であるが、これまでの内部監査では会計監査が対象とする経理的な取引の数値の詳細把握 までには至っていなかったために本件のような誤謬を防止又は発見することができなかった。 そこで、今後の内部監査においては、定期的に、詳細な取引や業務の実態の把握、詳細な経理 的な数値の検証まで行い、検出された不明な事象を確認するために、取引先に確認を行う等より、 実効性のある監査を実施することが必要と思われる。 また、上記 1 に記載の商品担当部門内での牽制機能の仕組みが構築された場合は、そ れらの運用が有効に実施されていることを確認することが有用であろう。 (3) 再発防止に向けた経営陣のコミットメント 上記記載の再発防止策は、実施を検討すべき対応について、適切な体制整備及び当該運用を徹底し、実効性を担保するためには、再発防止に向けた当社の経営陣のコミットメントが不可欠な条件となる。 当社経営陣においては、本件のような誤謬に発する事象が発生した場合、その対応が、 一時的にとどまり、対策が形骸化しないよう、再発防止の取組みを当社の重要な経営課 題とする必要がある。また、各役員がそのことを認識し、役割に応じて関与することが大変 重要である。 また、再発防止策の具体的な進捗状況や改善状況は、取締役会の重要な報告事項として社外取締役や監査役による監督下に置き、適切なモニタリングを行うべきである。 12 以上

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