アジャイルメディア・ネットワーク(6573) – 改善状況報告書

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開示日時:2022/03/16 15:30:00

損益

決算期 売上高 営業益 経常益 EPS
2018.12 91,036 9,050 8,098 38.35
2019.12 84,702 -13,869 -14,387 -92.97
2020.12 66,735 -26,443 -24,912 -134.89

※金額の単位は[万円]

株価

前日終値 50日平均 200日平均 実績PER 予想PER
458.0 463.72 507.53

※金額の単位は[円]

キャッシュフロー

決算期 フリーCF 営業CF
2018.12 -6,478 3,078
2019.12 -27,355 -5,561
2020.12 -17,961 -10,247

※金額の単位は[万円]

▼テキスト箇所の抽出

改 善 状 況 報 告 書 株式会社東京証券取引所 代表取締役社長 山道 裕己 殿 2022 年 3 月 16 日 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 代表取締役社長 上田 怜史 2021 年 9 月 2 日提出の改善報告書について、有価証券上場規程第 503 条第 1 項の規定に 基づき、改善措置の実施状況及び運用状況を記載した改善状況報告書をここに提出いたします。 1 I. 経緯 …………………………………………………………………………………………………………………………. 3 1. 過年度決算訂正の内容 ……………………………………………………………………………………………….. 3 (1) 訂正した過年度決算短信 ……………………………………………………………………………………………. 4 (2) 訂正した過年度有価証券報告書 ………………………………………………………………………………….. 4 (3) 過年度決算短信等の訂正による連結業績等への影響額 …………………………………………………. 5 2. 過年度決算短信等を訂正するに至った経緯等 ………………………………………………………………. 8 (1) 不適切な会計処理及び支出が発覚した経緯 ………………………………………………………………….. 8 (2) 不適切な会計処理及び支出の行為の内容 …………………………………………………………………….. 8 (3) 過年度訂正の処理の内容 ………………………………………………………………………………………….. 11 (4) 不適正開示の原因となった行為への全関係者の関与状況 …………………………………………….. 14 (5) 不適正開示の原因となった行為に係る認識、目的、動機等 …………………………………………. 16 II. 不適切開示の発生原因の分析 ……………………………………………………………………………………. 18 (1) コンプライアンス意識の欠如 ……………………………………………………………………………………. 18 (2) 内部統制システムの無効化(取締役会、監査役会) …………………………………………………… 18 (3) 権限の集中と脆弱なガバナンス ………………………………………………………………………………… 18 (4) 内部統制システムの無効化(管理部) ………………………………………………………………………… 19 (5) 経理財務業務のブラックボックス化 ………………………………………………………………………….. 19 (6) 内部牽制の機能不全 ………………………………………………………………………………………………… 19 III. 改善措置 …………………………………………………………………………………………………………………. 21 1. 改善報告書記載の改善措置並びにその実施状況及び運用状況 ……………………………………… 21 (1) 経営責任の明確化等 ………………………………………………………………………………………………… 21 (2) コンプライアンス意識の徹底 ……………………………………………………………………………………. 23 (3) ガバナンス体制の強化 ……………………………………………………………………………………………… 25 (4) 組織体制の再構築 ……………………………………………………………………………………………………. 30 (5) 適切な権限配分の実現と監視牽制体制の強化 …………………………………………………………….. 34 (6) 監査体制の強化 ……………………………………………………………………………………………………….. 34 (7) 社内規程の整備・改訂及び業務フローの見直し …………………………………………………………. 36 (8) 内部通報制度の実効性担保 ………………………………………………………………………………………. 39 (9) モニタリングの継続 ………………………………………………………………………………………………… 41 2. 改善措置の実施スケジュール ……………………………………………………………………………………. 42 IV. 改善措置の実施状況及び運用状況に対する上場会社の評価 …………………………………………. 43 目次 2 I. 経緯 1. 過年度決算訂正の内容 当社は、会計監査人による 2021 年 12 月期第1四半期レビュー手続の中で、不適切な会計処理があることを指摘され、その中に不適切な支出が含まれていることを認識いたしました。また、この不適切な支出について、当社元役員(以下、「元役員」といいます。)による資金流用(以下、「本件事案」といいます。)の疑義が生じたため、2021 年5月 17 日、第三者委員会を設置し調査を進めてまいりました。 当社は、第三者委員会から、2021 年5月 31 日に中間報告を、同年6月 18 日に調査報告書をそれぞれ受領し、元役員が、2018 年 12 月期及び 2019 年 12 月期において、その地位及び権限を悪用して従業員に指示し、実際には取引が存在しないにもかかわらず、ソフトウエア開発等の発注業務を偽装して、取引先に送金させる方法により会社の資金を流出させ、さらに、自己又は自己が関係する事業会社(以下、「事業会社」といいます。)において当該取引先から当該業務を下請受注する外観を偽装することによって、当該取引先から自己に資金を還流させていたこと及び 2018 年 12 月期から 2021 年 12 月期に至るまでに支出した接待交際費、旅費出張費等について、業務関連性がないものが含まれていたことの報告を受けました。 また、第三者委員会からの中間報告以後の当社による財務諸表等及び過年度分を含めた有価証券報告書の作成並びに会計監査人による監査手続の過程において、本件事案等には直接的に関係のない部分で社内人件費から振り替えられたソフトウエア勘定が過大に計上されていたことによる、不適切な会計処理が行われていたことを認識いたしました。 そのため、当社は過年度において過大計上となっていたソフトウエア資産の修正を行うとともに、不正な資金流出額について会計処理の訂正を行いました。 これらの訂正に伴い、当社は 2021 年7月 14 日に過年度の決算短信等の訂正及び有価証券報告書等の訂正報告書の提出を行いました。訂正した過年度決算短信等及び本件事案等が業績に及ぼす影響額については、以下のとおりです。 なお、2022 年2月1日付「第三者委員会の設置及び 2021 年 12 月期決算発表の延期に関するお知らせ」にて開示いたしましたとおり、過去の取引において本件事案で調査・報告しました事象とは別の不適切な会計処理の疑義(以下、「新事案」といいます。)を新たに認識し、本報告書提出日時点で、第三者委員会を設置して調査を進めております。新事案が及ぼす年度決算への影響、新事案の発生原因や今後の対応策については、第三者委員会の調査結果が判明し次第、速やかに開示いたします。また、調査結果によっては、本改善状況報告書に記載した発生原因の分析、改善措置などを見直す可能性があります。 3 (1) 訂正した過年度決算短信 第 14 期(2020 年 12 月期) (2) 訂正した過年度有価証券報告書 第 12 期(2018 年 12 月期) 決算短信 (自 2020 年1月1日 至 2020 年 12 月 31 日) 第2四半期報告書 (自 2018 年4月1日 至 2018 年6月 30 日) 第3四半期報告書 (自 2018 年7月1日 至 2018 年9月 30 日) 有価証券報告書 (自 2018 年1月1日 至 2018 年 12 月 31 日) 第 13 期(2019 年 12 月期) 第1四半期報告書 (自 2019 年1月1日 至 2019 年3月 31 日) 第2四半期報告書 (自 2019 年4月1日 至 2019 年6月 30 日) 第3四半期報告書 (自 2019 年7月1日 至 2019 年9月 30 日) 有価証券報告書 (自 2019 年1月1日 至 2019 年 12 月 31 日) 第 14 期(2020 年 12 月期) 第1四半期報告書 (自 2020 年1月1日 至 2020 年3月 31 日) 第2四半期報告書 (自 2020 年4月1日 至 2020 年6月 30 日) 第3四半期報告書 (自 2020 年7月1日 至 2020 年9月 30 日) 有価証券報告書 (自 2020 年1月1日 至 2020 年 12 月 31 日) 4 (3) 過年度決算短信等の訂正による連結業績等への影響額 過年度決算短信等の訂正による連結財務諸表又は財務諸表への影響額及び影響率は以下の期間 項目 訂正前 (A) 訂正後 (B) 影響額 (B-A) 増減率 (%) とおりです。 2018 年 12 月期第 2 四半期 (単体) 2018 年 12 月期第 3 四半期 (単体) 2018 年 12 月期通期 (単体) 四半期純利益 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 売上高 営業利益 経常利益 四半期純利益 純資産 総資産 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 純資産 総資産 (単位:百万円) - △1 △1 △4 △4 △4 - △8 △2 △27 △27 △27 - △15 △15 △53 △53 △53 - △3.8% △6.6% △37.9% △0.8% △0.7% - △20.5% △27.8% - △4.3% △3.8% - △16.8% △19.1% △66.6% △7.6% △6.8% 426 26 15 12 603 666 644 41 30 24 646 723 910 90 79 79 702 768 426 25 14 7 598 661 644 32 22 △2 618 696 910 75 64 26 648 715 5 期間 項目 訂正前 (A) 訂正後 (B) 影響額 (B-A) 増減率 (%) (単位;百万円) 2019 年 12 月期第 1 四半期 親会社株主に帰属する四半期純利益 2019 年 12 月期第 2 四半期 親会社株主に帰属する四半期純利益 △64 △162 △98 215 △18 △18 △15 684 761 413 △67 △74 650 782 644 △91 △99 215 △17 △16 △73 573 652 413 △61 △69 499 634 644 △73 △81 △110 △16.2% △109 △14.4% △151 △23.3% △147 △18.9% - 1 1 △57 - 5 5 - 17 17 - 29 29 - - - - - - - - - - - - - - - - 2019 年 12 月期第 3 四半期 親会社株主に帰属する四半期純利益 △93 △236 △143 2019 年 12 月期通期 親会社株主に帰属する当期純利益 △197 △31.5% △192 △25.1% 624 766 847 △138 △144 427 574 847 △108 △114 △192 △355 △162 527 719 311 510 △216 △41.0% △209 △29.1% 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 6 期間 項目 訂正前 (A) 訂正後 (B) 影響額 (B-A) 増減率 (%) (単位;百万円) 2020 年 12 月期第 1 四半期 親会社株主に帰属する四半期純利益 2020 年 12 月期第 2 四半期 親会社株主に帰属する四半期純利益 △110 △108 △102 △101 △109 △131 △22 2020 年 12 月期第 3 四半期 親会社株主に帰属する四半期純利益 △227 △269 △41 175 △42 △42 △66 246 440 330 182 484 507 △163 △156 346 853 667 △237 △225 - 5 5 △17 - 7 7 - 19 19 - 26 27 △233 △48.7% △226 △34.0% △238 △56.5% △230 △32.3% △257 △42.7% △247 △22.5% - - - - - - - - - - - - - - - - 2020 年 12 月期通期 親会社株主に帰属する当期純利益 △307 △347 △40 525 1010 268 764 △256 △48.9% △246 △24.3% 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 売上高 営業利益 経常利益 純資産 総資産 175 △48 △48 △49 479 667 330 421 715 507 △183 △175 604 1100 667 △264 △252 7 2. 過年度決算短信等を訂正するに至った経緯等 (1) 不適切な会計処理及び支出が発覚した経緯 当社は、会計監査人であるかなで監査法人による 2021 年 12 月期第1四半期の四半期レビューの過程において、ソフトウエア開発に係る取引の中で、各種証憑が偽装されている可能性があり、不適切な会計処理の疑義がある旨の指摘を受けました。これを受けて、当社で確認したところ、ソフトウエア開発に係る取引の中に元役員が関与する不適切な支出が含まれていることを認識いたしました。この不適切な支出について、元役員による資金流用の疑義が生じたとして、当社は 2021 年5月 12 日付「不適切な会計処理及び支出についての調査による 2021 年 12 月期第1四半期決算発表の延期のお知らせ」を公表いたしました。 また、当社は、2021 年5月 12 日に取締役会を開催し、本件事案の疑義を重く受け止め、社外の専門家に依頼して徹底した調査を行う必要があると考え、速やかに社外有識者のみを委員とする第三者委員会を設置し、類似事象の存否を含め、今回の全容解明のための事実関係の調査を行うことを決議いたしました。その後、当社では速やかに人選を進め、同月 17 日に第三者委員会を設置してその旨を公表しております。 その後、当社は、2021 年5月 31 日付で第三者委員会の中間報告を受領し、同日付で「第三者委員会による中間報告および今後の当社の対応に関するお知らせ」を公表いたしました。第三者委員会からの中間報告を受け、当社では、過年度分を含めた財務諸表等及び有価証券報告書の作成を行い、同時に会計監査人による監査手続に対応してまいりました。その過程において、実在性のない架空のソフトウエア資産を修正するため、開発部門に 2018 年以降の開発項目、開発人員、開発工数等を確認し、実際に開発していたソフトウエアと固定資産台帳に計上されているソフトウエア資産を突合したところ、社内人件費からソフトウエア仮勘定に振り替えるタイミング及びソフトウエア仮勘定からソフトウエア勘定に振り替えるタイミングにおいて、実際の開発状況を確認せずに、期初にたてた開発計画に基づいた会計処理を行うことで、開発実態と整合しない会計処理が行われていたこと(以下、「追加不適切会計」当社は、2021 年6月 18 日に第三者委員会から調査報告書を受領し、第三者委員会の報告及び、その後の社内手続並びに会計監査人による監査手続を踏まえた本件事案に関する当社の事実認識はといいます。)が判明いたしました。 (2) 不適切な会計処理及び支出の行為の内容 以下のとおりです。 ① 第三者委員会の調査報告書で判明した事実 1) 小口現金による経費精算を利用した不正な資金流出 元役員は、経理従業員に対し、業務上必要な経費と伝え、多額の資金を複数回にわたって預金口座から払い戻すことを指示し、現金を受領しておりました。当社においては、上長による事前承認が行われた経費申請書に基づき、必要となる金額の現金を受領することが社内規定等にて定められておりましたが、元役員は、財務を統括する最高責任者(CFO)であることから事前承認は行っておらず、また同様に事後承認も行っていない運用が常態化しておりました。元役員による預金払い8 戻しの指示は、一回あたりの金額としては 2 百万円以上の額であることが多く(最大額は 10 百万円)、頻度としては多い月で1ヶ月間に7回行われておりました。 元役員が預金口座から払い戻した現金を受領後、経費精算として領収書を提出することができた金額はその一部に留まっており、返還する現金が手当できない場合には、ソフトウエア開発費用を現金で支払ったという名目の領収書を偽造することで、架空の現金取引を装って、現金の帳簿残高と実際残高の乖離を補填することを企図し、偽造した領収書をもとに、システム開発費用として現金支出があったという内容の会計処理が行われ、ソフトウエア仮勘定を計上することによって、帳簿上の現金残高と実際の帳簿残高が一致するようにしておりました。 2) ソフトウエア開発を装ってシステム会社に送金した不正な資金流出 元役員は、システム会社を利用して、当社からシステム会社へソフトウエア開発費用の名目で送金した資金の大部分を、自己又は事業会社に下請け費用の名目で送金させる方法により、資金を還流させておりました。具体的には、システム会社との一連の取引に際しては、「秘密保持契約書」「システム開発業務請負基本契約書」「業務請負個別契約書」「御請求書」「納品書兼作業完了報告書」「納品書」等の証憑が作成されておりましたが、いずれも架空の取引に関するものであり、システム開発の実体はありませんでした。しかしながら、当社ではシステム会社からの請求書等に従ってシステム会社に対して送金し、システム会社では元役員からの指示に従って当社から受領した金額の大部分を元役員または事業会社に送金しておりました。 なお、システム会社は、元役員と交友関係があった実在する会社であり、かつて、元役員は、当社に対し、システム会社の買収を提案し、その検討のためにシステム会社に対するソフトウエア開発の委託を提案したことがありましたが、システム会社においてソフトウエア開発に必要な人員を確保することができない等の理由で、実現しませんでした。そのため、当社とシステム会社の間には、何らの取引関係も存在しておりませんでしたが、元役員は、システム会社に対し、将来、当社のグループに加わるためにも、当社との取引実績が重要であるなどと述べて、事業会社による下請け受託を前提に、対象会社からソフトウエア開発を受託するように仕向けておりました。 3) その他の方法による不正な資金流出 a. コンサルティング会社への支払い 2018 年 11 月及び 12 月頃、当社は、台湾ビジネスに従事させるため 2 名の人材を雇用する方針となりましたが、元役員は、当該2名の人材を雇用するにあたり、人材紹介事業を営んでいるコンサルティング会社に働き掛け、当該 2 名の人材紹介について、事業会社がコンサルティング会社に紹介し、これを受けて、コンサルティング会社が当社に紹介する形式を作出することにより、当社からコンサルティング会社に、コンサルティング会社から事業会社に、それぞれ人材紹介手数料を支払わせておりました。しかしながら、当該2名は上田社長及び元役員が既知の人物であって人材紹介が成立しておりませんでした。 b. 台湾ビジネスに関する活動支援費としての支払い 2018 年末頃に、元役員は、旧知の友人である事業会社の従業員を、コンサルタント業を営む個人 9 事業主と称した上で、台湾ビジネスに関する活動支援費の請求書を当社に対して発行し、当社からコンサルタントを称する事業会社の従業員名義の銀行口座に送金させておりました。なお、元役員は当該銀行口座を管理しており、当該金額は、同役員が取得しておりました。しかしながら、コンサルタントを称する事業会社の従業員による台湾ビジネスに関する活動支援の実態はありませんでした。 4) 業務関連性のない接待交際費等の不正流用 当社は、第三者委員会から、元役員の接待交際費及び旅費交通費等の経費精算は、当社の他の役員と比較しても、かなり突出して高額であることから、これらの事業関連性については精査が必要であるように考えられるが、これらの事業関連性判定は、個別具体的な判断となるため、当社において経費支出の背景事情を踏まえ最終判断を行うべきとの報告を受けました。 そのため、当社は第三者委員会からの指摘を受け、2018 年 12 月期からの元役員の経費精算を全て洗い出し、1件ずつ精査を行いました。そのうえで、当社は、経費精算の項目、備考欄の記載内容、元役員のスケジュールと照合し、明らかに業務関連性が認められるもの以外の経費精算については、不正な資金流用に該当すると判断いたしました。 ② 第三者委員会の中間報告以後に発覚した追加不適切会計について 社内人件費からソフトウエア仮勘定に振り替えるタイミング及びソフトウエア仮勘定からソフトウエア勘定に振り替えるタイミングにおいて、実際の開発状況を確認せずに、期初にたてた開発計画に基づいて会計処理を行うことで、開発実態と整合しない会計処理となっていました。追加不適切会計は、本件事案開始以前の 2018 年 12 月期第2四半期から会計処理や決算対応を簡略化することを企図して開始していることから、追加不適切会計と本件事案は全く別の事象だと認識しています。ただし、本件事案の発覚を逃れるべく、追加不適切会計を続けざるを得なくなっていたということも判明しています。 10 (3) 過年度訂正の処理の内容 ① 不適切な支出として当社から流出した金額 貸倒損失を計上しております。 す。 不適切な支出として、当社から流出した金額については、その全額を長期未収金に振り替えた後、不適切な支出を長期未収金に振り替え、貸倒損失を計上したことによる影響額は以下のとおりで(単位:百万円) 長期未収金 (貸倒損失) 計上額 期間 長期未収金内訳 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2018 年 12 月期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 第3四半期 その他の方法によって不正に流出した額 (単体) 業務関連性のない経費精算における不正流用額 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2018 年 12 月期 通期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2019 年 12 月期 第1四半期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2019 年 12 月期 第2四半期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2019 年 12 月期 第3四半期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 合計額 合計額 合計額 合計額 合計額 11 10 0 0 5 15 0 11 9 13 34 34 23 0 1 59 10 88 0 4 103 26 119 0 16 161 (単位:百万円) 長期未収金 (貸倒損失) 計上額 (単位:百万円) 期間 長期未収金内訳 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2019 年 12 月期 通期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2020 年 12 月期 第1四半期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2020 年 12 月期 第2四半期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2020 年 12 月期 第3四半期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 小口現金による経費精算を利用して不正に流出した額 2020 年 12 月期 通期 ソフトウエア開発を装って不正に流出した額 その他の方法によって不正に流出した額 業務関連性のない経費精算における不正流用額 合計額 合計額 合計額 合計額 合計額 51 119 0 30 201 16 23 20 0 0 7 0 0 9 29 39 0 0 20 59 39 0 0 26 66 12 ② ソフトウエア資産の修正額 当社のソフトウエア資産には、本件事案による架空計上額と追加不適切会計による誤計上額が混入しており、それらを分けて把握することが困難な状況となっておりました。そのため、本件事案の開始した 2018 年 12 月期第2四半期以降のソフトウエア資産について、開発実態に即した計上額となるよう、一から見直しを行い、これに合わせて減価償却費及び減損損失の計上額も修正しております。なお、ソフトウエア資産の当初の計上額と見直し後の計上額の差額は減損損失に含めて処減価償却及び減損処理見直し後のソフトウエア及びソフトウエア仮勘定に関する影響額は以下の理しております。 とおりです。 (単位:百万円) 訂正前 訂正後 影響額 増減率 (A) (B) (B-A) (%) 期間 項目 2018 年 12 月期 ソフトウエア 第2四半期(単体) 2018 年 12 月期 第3四半期(単体) 2018 年 12 月期 ソフトウエア仮勘定 ソフトウエア ソフトウエア仮勘定 ソフトウエア 通期(単体) 2019 年 12 月期 第1四半期 2019 年 12 月期 ソフトウエア仮勘定 ソフトウエア ソフトウエア仮勘定 ソフトウエア 第2四半期 ソフトウエア仮勘定 2019 年 12 月期 ソフトウエア 第3四半期 ソフトウエア仮勘定 2019 年 12 月期 ソフトウエア 通期 ソフトウエア仮勘定 2020 年 12 月期 ソフトウエア 第1四半期 ソフトウエア仮勘定 2020 年 12 月期 ソフトウエア 第2四半期 ソフトウエア仮勘定 2020 年 12 月期 ソフトウエア 第3四半期 ソフトウエア仮勘定 2020 年 12 月期 ソフトウエア 通期 ソフトウエア仮勘定 89 1 83 25 105 31 104 58 130 102 124 135 110 182 101 206 108 202 116 211 106 219 65 20 68 23 92 0 88 3 85 13 91 3 81 1 76 5 68 11 61 19 78 1 △24 △27.2% 19 1482.1% △14 △17.2% △2 △8.6% △12 △11.7% △30 △97.6% △15 △15.0% △54 △93.3% △45 △34.7% △89 △86.9% △32 △25.9% △132 △97.3% △28 △26.0% △180 △99.4% △25 △24.8% △201 △97.4% △39 △36.7% △190 △94.3% △55 △47.2% △192 △90.9% △27 △26.0% △217 △99.1% 13 (4) 不適正開示の原因となった行為への全関係者の関与状況 ① 本件事案における関係者の関与状況 1) 元役員 本件事案は、いずれも元役員が主導しており、その全容に関しても元役員のみが把握している状態となっていました。 元役員は、当社が株式上場する以前から当社の取締役であり、当社の No.2 として、財務の最高責任者(CFO)という立場にあって、当社の管理部の最終決裁・承認権者でもありました。また、組織内の権限のみならず、株式上場の立役者であったことや幅広い人脈を活用して事業計画達成に向けて積極的に活動していたこともあり、社内でも代表取締役と比肩して劣らないほどの絶対的な地位を有していました。そのため、そのような絶対的な権限及び管理部員からの信頼関係を前提として不適切な会計処理及び資金流用を画策し、実行していました。 以下の者については、一定の範囲で積極的又は消極的な関与が認められましたが、これらの関与者についても、元役員に利用されたとの側面は否めません。 2) 従業員 A(経理職員) 従業員 A は、事業会社の経営について、事業会社の取締役 CFO として積極的にかかわるとともに、元役員の指示に基づき、当社から事業会社に対する資金流出に関する不正な証憑を作成していました。また、コンサルティング会社やコンサルタントと称した事業会社の従業員の銀行口座を経由した資金流出に関しても不正な証憑を作成していました。その際、元役員から事情を聞かされていた従業員 A は、本件事案において当社から事業会社に対して不正に資金が流出していた事実を把握した上で、関与していました。また、従業員 A は、本件事案が会計監査人に指摘されないようにするため、自ら又は元役員の指示に基づき、不正な証憑を作成していました。これらの不正な証憑の作成は、2018 年以降複数回に及んで行われています。 ただし、従業員 A が元役員から上記行為の対価を受領したという事実は、関係者のヒアリングやデジタルフォレンジング調査を行った結果からも見受けられず、また、事業会社から報酬を受け取っていたという事実も認められませんでした。 従業員 A は、前職時代も元役員の部下として経理業務や株式上場準備等を一緒に経験しており、元役員の声掛けにより、当社の経理財務チームのメンバーとして採用されていました。元役員と従業員 A の間には、前職時代から培われた堅実な師弟関係とも言うべき信頼関係があり、従業員 A としても元役員に対して、上司としての尊敬の念と、自分を前職から拾って対象会社に引き抜いてくれたという恩義を強く感じ、加えて、もし元役員に嫌われたら職を失ってしまうという不安感も相まって、元役員の指示には絶対的・盲目的に従うという気運が醸成されていました。 3) 監査役 B 監査役 B は、当社の監査役に就任する以前のことではありますが、不正な資金流出がなされたコ14 ンサルティング会社の役員であり、元役員の提案に従い、2 名の人材採用にあたり、コンサルティング会社による人材紹介を介在させることにより、本来であれば、対象会社が負担する必要がなく、かつ、元役員が取得することができない紹介手数料を、当社から支払わせることに関与していました。 しかし、監査役 B は上記の取引についての全容を元役員から知らされておらず、元役員からは、「当社の台湾子会社で人員強化をしたいと考えており、自身が手伝っている事業会社に、人材の探索を依頼していたのだが、適任者が見つかったとのことで、当社に紹介したいと考えているが、そのまま紹介したのでは、紹介免許を持たない事業会社になんのお礼もできないので、コンサルティング会社に間に入ってもらい、紹介手数料相当額を払ってもらえないか」との依頼を受けていました。監査役 B は、このように求職者の紹介を受け、成功報酬として紹介者に手数料を支払うことは、すでに過去に実績があり、契約を肩代わりすること自体は 100%クリアな取引ではないものの、業界慣行としては行われていることから、当社とは人材紹介契約を、事業会社とは業務委託契約を締結し、取引を行いました。 その後、本件事案発覚後の第三者委員会の調査によって、監査役 B は、この2名の人物は事業会社が探索して発見した方ではなく、人材紹介は成立していなかったことを知りました。また、監査役 B は、当時は元役員が事業会社の代表取締役でも、オーナーでもなかったため、元役員が事業会社を実質的には支配していたことも、最終的にその成功報酬のすべてが元役員に流出していたことも想定していませんでした。そのため、監査役 B は、元役員の不正な資金取得等に加担する意図はありませんでした。 4) 従業員 C(元管理部部長) 従業員 C は、元役員の指示に基づき、実際には開催されていない臨時の取締役会議事録を作成することで、会計監査人に対して虚偽の証憑を提出することに関与していました。当該行為につき、従業員 C は、不正であることの認識はあったものの、監査対応をスムーズに行うために元役員の指示に応じたものであり、元役員の不正な資金取得等に加担する意図はありませんでした。 5) 従業員 D(経理職員) 従業員 D は、元役員の指示に基づき、言われるままに、銀行口座から現金を払い戻して元役員に交付し続けていました。また、小口現金精算書の内容と実際に金庫に保管されている現金の金額が齟齬を来たしていることから、不審に思ったものの、上長の指示であることなどを理由として、積極的に改善するなどの対応はとっていませんでした。 6) 取締役 E 取締役 E は、元役員の依頼を受け、オーナー兼代表取締役として事業会社を設立し、2019 年1月に元役員と交代するまでその地位にありました。もっとも、事業会社の事業遂行や運営管理は、2016 年 11 月の設立当初から、元役員が実質的に支配していました。取締役 E は、事業会社の事業理解も乏しく、実務には一切関与しておらず、あくまで形式的な株式保有・役員という立場であり、事業会社から役員報酬が発生することもありませんでした。そのため、元役員の不正な資金取得等 15 への関与は一切ありませんでした。 ② 追加不適切会計おける関係者の関与状況 1) 元役員 追加不適切会計についても元役員が主導しておりました。2018 年 12 月期第2四半期から追加不適切会計を開始していますが、開始当初は、元役員には会計処理や決算対応を簡略化する上では認められうる会計処理方法との誤った認識があっただけで、本件事案とは異なり、不正を行っているという認識はありませんでした。しかしながら、その後、本件事案においてもソフトウエア資産を利用していたことから、本件事案発覚を逃れるため、開発実態との相違が社内で認識されないように、従業員 A には、追加不適切会計が適切な会計処理であると伝え、追加不適切会計に係る処理を実行するように指示しておりました。その結果、会計処理や決算対応の簡略化を目的として開始したはずが、本件事案の発覚を逃れるための会計処理となってしまい、本件事案と相まって、不正の認識をもつに至りました。 2) 従業員 A(経理職員) 従業員 A は、元役員の指示に従って会計処理を行い、追加不適切会計に関する証憑を作成していました。しかし、元役員からは、元役員が社内で確認したので問題はない、と聞かされており、追加不適切会計に加担しているという認識はありませんでした。 (5) 不適正開示の原因となった行為に係る認識、目的、動機等 元役員は、流用した資金を事業会社の事業資金として、主に店舗の開店資金、スタッフ採用費用、仕入代金等に充てておりました。また、元役員は、特殊な生活環境により親族等の生活資金として毎月 2百万円~3 百万円程度の資金を必要としており、当社からの役員報酬では賄いきれずに、流用した資金を充てておりました。元役員は、2018 年 12 月期第2四半期から不正な資金流用を行っており、本件事案に係る行為が不正な行為であると認識しておりましたが、不正な資金流用が社内で疑われずに実行できたことから、途中で不正な行為をやめることができず、本件事案発覚まで継続していたものと考えられます。(本件事案に係る元役員以外の関与者の認識は上記Ⅰ.2.(4)「不適正開示の原因となった行為への全関係者の関与状況」に記載しております。) また、追加不適切会計は、元役員により、本件事案開始以前の 2018 年 12 月期第2四半期から会計処理や決算対応を簡略化する目的で開始していることから、追加不適切会計と本件事案は全く別の事象だと認識しておりますが、開発実態に沿わない会計処理を行っていても、どこからも指摘されない環境であったため、その後のソフトウエア資産を利用した本件事案に繋がっていってしまったと認識しております。また、本件事案を開始してからも、開発実態を確認しない状態で会計処理を行ってきたため、追加不適切会計が本件事案発覚時点まで続く結果となっておりました。 なお、上田社長をはじめとする元役員以外の当社役員は、元役員に信頼を置き、任せきりにする中で、財務・会計はじめ内部管理体制への関心が薄まっていき、当社の会計経理の実像を把握できなくな16 っていただけでなく、自ら積極的に元役員の職務遂行を監督することもありませんでした。また、取締役会では事業報告や資金調達には関心を示していたものの、ソフトウエア資産が経常的に発生することの是非を話題にするには至らず、赤字が継続していても交際費等の個々の経費負担がどの程度であるかを具体的に確認することもありませんでした。結果として元役員からは改竄された会計数値しか提供されてこなかったという側面はあるものの、上田社長をはじめとする元役員以外の当社役員は本件事案及び追加不適正会計の端緒にすら気付くことはなく、それらを認識しておりませんでした。 17 II. 不適切開示の発生原因の分析 (1) コンプライアンス意識の欠如 本件事案の関与者においてコンプライアンス意識が欠如し、自制と自立が足りていなかったことが、本件事案を引き起こす原因となったことは言うまでもありませんが、加えてコンプライアンスを重視する企業文化の醸成が足りていなかったこと(より具体的には、トップ以下の経営陣がコンプライアンス教育の必要性を軽視し、その結果として、一般社員の意識がややもするとコンプライアンス最優先となっていなかったこと)も環境的要因となっていたと考えております。当社は、毎月全社員参加の全体会を実施しておりますが、コンプライアンスに関する経営層からの情報発信はこれまで特段なく、また、コンプライアンス上の課題を認識しても、それについて深く議論し、改善策を指示するところまで掘り下げることができておりませんでした。また会計上の知識や不正防止のためのコンプライアンス研修などが全社的に十分に行われておらず、コンプライアンス機能が十分に機能していたとはいえませんでした。 (2) 内部統制システムの無効化(取締役会、監査役会) 元役員によって、取締役会や監査役会に提出されていたソフトウエア勘定や交際費等の会計数値が改竄されていたり、会計監査人への提出書類についても同様に改竄されていたりするなどによって、内部統制システムが無効化されておりました。 一方で、続くⅡ.1.(3)に記載のとおり、元役員及び管理部の経理財務チームへの信頼から、元役員及び管理部の経理財務チームに関しては問題がないであろうという前提に立ってしまっていたことで、当社では内部統制システムの無効化に気付くことができませんでした。 (3) 権限の集中と脆弱なガバナンス 元役員に営業以外の財務会計マターや人事評価等の権限が集中していたことで、元役員の指示には高い強制力があり、従業員では元役員の指示に違和感を持ったとしても、直接的にも間接的にも指摘できないような内部環境になっておりました。また、前述のとおり、元役員は社内でも代表取締役と比肩して劣らないほどの絶対的な地位を有していたことで、他の役員は、取締役会等の場における元役員の説明に違和感を持ち、説明を求めるには至りませんでした。 これに対して、当社の人数規模ではある程度の権限集中は避けられないとしても、当社の役員は、当社のように権限が集中するような状況であれば、元役員に対して取締役会を通じた牽制や監査役監査を通じた牽制をより一層行う必要があるという認識が希薄であったと考えております。具体的には、元役員及び管理部の経理財務チームを信頼していたことで、取締役会等に提出される会計数値や関連情報の真偽に懸念を持つことがなく、取締役会等において会計数値や関連情報に関する議論がなされないまま、ややもすると表層的な報告討議にとどまっておりました。また、元役員及び管理部の経理財務チームに関しては問題がないであろうという前提に立ってしまっていたことで、元役員(及び管理部の経理財務チーム)に対して取締役会を通じた牽制及び監査役監査を通じた牽制が必要であるとの意識も希薄であったと考えております。加えて、当社の役員は、株式上場時から内部管理体制を強化することの必要性を認識しておらず、また、会計監査人から指摘されるまで内部統制システムの無効化のリスクがあることも認識していなかったことから、続くⅡ.1. (6)に記 18 載のとおり、内部牽制が有効に機能していないことに気付くこともありませんでした。 (4) 内部統制システムの無効化(管理部) 当社では、社内規程や業務フローを策定しており、元役員以外の役職員は、社内規程や業務フローに従って、粛々と業務を行っておりました。しかしながら、上記Ⅱ.1.(3)「権限の集中と脆弱なガバナンス」に記載のとおり、元役員には強大な権力・権限があったことに加えて、他の取締役に元役員への牽制を行おうとする意識が希薄となっておりました。そのため、元役員だけが社内規程や業務フローに準拠しない運用を管理部の経理財務チームに行わせておりましたが、管理部の経理財務チームではこれを受け入れてしまっており、また、他の取締役が元役員に対する牽制を行えていないことに疑問を持たなかったことから、元役員による管理部における内部統制システムの無効化を許してしまいました。 (5) 経理財務業務のブラックボックス化 本件事案等で問題のあった小口現金の管理や経費の精算、ソフトウエア資産の会計処理、外部監査対応はいずれも管理部の経理財務チームで担っておりました。経理財務チームでは、限られた人員で対応しており、またジョブローテーションなども実施されておりませんでした。このためチーム外からは、誰が、いつ、どのように業務を行っているのか、全く分からない状況になってしまっておりました。さらに、続くⅡ.1. (6)に記載のとおり、内部牽制の機能不全も相まって、本来は部署を統括すべき元役員や内部統制システムにおいて統制の重要な役割を担うべき管理部による不正を助長する状況となっておりました。 (6) 内部牽制の機能不全 当社の内部監査においては、内部監査部門が存在し内部監査計画が存在し、計画に則して内部監査を実施していたものの、実際には、内部監査担当者の知見不足などから課題・問題点を深く掘り下げる意識や姿勢に欠けていたことで、内部監査が形式的な現状確認にとどまり、内部監査機能が形骸化しておりました。また、内部監査計画の策定においては、当社として不正リスクを含めたリスク管理を行ってこなかったこと、監査役や会計監査人と計画策定から実施結果に至るまで十分に協議していなかったことから、不正リスクを意識した内部監査手続きを設計できていませんでした。三様監査においても、当社が率先して定期的な実施に向けてのイニシアティブをとらなかったことで、その実施はこれまでに1回のみとなってしまっており、会計監査人・監査役・内部監査による連携及びコミュニケーションが十分に取れているとはいえませんでした。一方で、監査役会としても、当社としてリスク管理を十分に行えていないことや不正リスクを意識した内部監査を計画・実施できていないことについて指摘できておりませんでした。 内部通報制度についても、第三者委員会調査において当該委員会が実施した従業員向けのアンケート(9 割近い回答率)の結果分析により、内部通報制度の存在認知及び利用意向が極めて低い現状が明らかになり、殆どの従業員が当該制度を認識していないという社内環境となっていたことが明らかになりました。このような社内環境となってしまった要因は、上記Ⅱ.1.(1)「コンプライアン 19 ス意識の欠如」と同様に、経営陣によるリードが不足していたことに起因していると考えております。 20 III. 改善措置 1. 改善報告書記載の改善措置並びにその実施状況及び運用状況 (1) 経営責任の明確化等 ① 関与した役職員の適正な処罰等 【改善報告書に記載した改善策】 当社は、今回の事態の重大性と経営責任を厳粛に受け止め、本件事案等への関与者に対して、以下の人事的措置を図りました。今後、専門家を交えて更なる措置の必要性について検討してまいります。なお、本件事案等への関与者の認識は、上記Ⅰ.2.(4)「不適正開示の原因となった行為への全関係者の関与状況」及びⅠ.2.(5)「不適正開示の原因となった行為に係る認識、目的、動機等」をご参照ください。 1) 元役員について ります。 を受理しております。 3) 他の関与者について 2021 年6月 17 日付、「取締役辞任に関するお知らせ」にて公表いたしましたとおり、第三者委員会最終報告を受け、元役員より取締役を辞任したい旨の申し出があり、当社はこれを受理してお2) 従業員A(経理職員)について 本件に関与した経理職員の従業員 A につきましては、第三者委員会最終報告を受け、本人との直接面談を行いました。この結果、本人から 2021 年8月末での退職の申し出があり、当社はこれ監査役Bは、当社の監査役就任以前のことではありますが、役員であった会社が本件事案に関わってしまった事は事実であります。とはいえ、当該取引が元役員に流出していたことは想定しておらず、不正な資金取得等に加担する意図はなかったと供述しており、それら供述を覆すような事実も認められませんでした。これら経緯から、本人に対して、過去に行った行為への反省と共に、今後の職務遂行にあたっての善管注意への厳しい勧告を行っております。 従業員C(元管理部長)は、監査資料の一部改竄はありましたが、不正流出には関与しておりませんでした。なお、本件とは無関係の自己都合により、すでに退職しております。 従業員 D(経理職員)は、元役員の指示どおりに行ったことではありますが、業務を積極的に改善する対応を怠った不作為に対し、厳重注意をしており、2021 年9月末を目途に担務変更を予定しております。 取締役 E は、元役員の不正な資金取得等への関与は一切ありませんでした。 元役員の担っていた役割については、当面の間、上田社長が担うことにしており、社外役員の指導・監督を受けつつ職務を遂行してまいります。今後、CFO の役割を担う取締役の適格者を選定し、2022 年3月に開催予定の定時株主総会にて該当者の選任議案を上程したいと考えております。なお、2021 年9月 22 日に開催予定の臨時株主総会にて、新任取締役の選任議案を上程しており、 21 新任取締役はこれまで上田社長が担っていた社内開発における責任者としての役割を担うとともに、今後、経営面においても上田社長との役割分担を決めていきながら、職務を遂行していくこと従業員Aの後任については外部から適任者を採用する方針で、現在適切な人材を募集中ですが、それまでは外部専門業者に業務委託するなどの方法により、人員不足を補完してまいります。 を想定しております。 【実施・運用状況】 1) 元役員について 改善策に記載のとおり、元役員については 2021 年 6 月 17 日付で辞任の申し出があり、当社はこれを受理しております。なお、「③元役員への求償対応」に記載のとおり、当社は、元役員との間で元役員が不正に支出した金額相当の返還を約束することについて公正証書を作成し、求償請求をしております。 2) 従業員A(経理職員)について 改善策に記載のとおり、従業員 A については 2021 年 8 月末での退職の申し出があり、当社はこれを受理しております。なお、従業員Aの退職後、当社は従業員Aが関与した不正に対する懲罰として、当社規程に基づき諭旨退職処分であったことを事後的に決定し、本人及び社内にこれを 2021年 10 月 18 日に実施した全社員集会で社内に告知いたしました。なお、当社には懲罰委員会等の諮問委員会の設置に関する規程が存在しないため、代表取締役社長と管理部長の判断で上記の決定を行っております。 3) 他の関与者について 監査役 B に対しては、本来は社外監査役として本件事案のような事象を引き起こさないよう適切に監査する立場にいながら、本件事案に積極的でないにせよ関わってしまった事の責任を重く見て、今後の職務遂行にあたっての善管注意への厳しい勧告を行いました。なお、監査役 B は、2021 年7月から 2021 年 12 月末までの6か月間、月額基本報酬を 10%自主返納いたしました。その後、監査役 B は 2022 年1月 31 日付で当社社外監査役を辞任しております。 従業員 C(元管理部長)は、改善策に記載のとおり、改善報告書の提出日時点ですでに退職済ではあったものの、本件の重大さに鑑み、当社規程に基づき降格処分相当であった旨を、本人及び社内に通知しています。 従業員 D(経理職員)に対しては、2021 年 12 月末までに小口現金を廃止や業務フローの変更を行うなど、再発防止に資する体制を構築したことに伴い、担務変更を行っておりません。 ② 役員報酬の減額措置 【改善報告書に記載した改善策】 2021 年6月 21 日付、「第三者委員会の最終報告書公表及び役員報酬減額のお知らせ」にて公表いたしましたとおり、当社は第三者委員会の調査結果を踏まえ、企業として重大な責任があ22 ることを深く反省するとともに、今回の事態の重大性について厳粛に受け止め、その経営責任を明確にするため、以下のとおり、当社役員の報酬減額を決定いたしました。 ・代表取締役社長 :月額基本報酬の 20%減額 ・社外取締役 :月額基本報酬の 15%減額 ・常勤監査役 :月額基本報酬の 15%減額 (対象期間:2021 年7月から 2021 年9月までの3か月間) 【実施・運用状況】 改善策に記載のとおり、以下のように当社役員の報酬を減額いたしました。 ・代表取締役社長 :月額基本報酬の 20%減額 ・社外取締役 :月額基本報酬の 15%減額 ・常勤監査役 :月額基本報酬の 15%減額 (対象期間:2021 年7月から 2021 年9月までの3か月間) ③ 元役員への求償対応 【改善報告書に記載した改善策】 2021 年6月 21 日付、「第三者委員会の最終調査報告書公表及び役員報酬の減額に関するお知らせ」にて公表いたしましたとおり、当社では元役員に対し、元役員による資金流用額の全額について回収できるよう損害賠償請求を行っております。なお、当社としては全額回収を最優先としつつも、場合によっては刑事的措置を行うことも視野に入れております。 元役員による資金流用以外の損失については、顧問弁護士に相談して検討した結果、間接費用が求償できるかには論点があること、賠償請求額確定までに相当時間がかかる見込みであることから、元役員への求償対応は行わない方針です。 【実施・運用状況】 当社は、元役員が当社から不正に支出した金額相当の返還について公正証書を作成した上で、元役員に対して 2029 年 12 月末までの分割支払による求償を行っております。すでに一部資金については返還済みとなっており、今後も引き続き適切かつ着実な求償対応を進めてまいります。 なお、当社は資金流用の発覚以降、警察からの捜査には全面的に協力しており、2022 年2月に元役員に対して刑事告訴を行いました。 (2) コンプライアンス意識の徹底 (発生原因(1)「コンプライアンス意識の欠如」への改善策) ①コンプライアンスを最優先した経営の実現 【改善報告書に記載した改善策】 当社において、これまでの情報発信が十分なされていなかったことに鑑み、経営トップ自らコンプライアンス遵守が経営の最重要課題であることを再度明確にし、半期に一度以上、社長自らのス23 ピーチを行い、その後スピーチの概要を改めて全社員にメールで配信することで、 役職員に対し継続してメッセージを発信してまいります。 また、四半期ごとに管理部から、取締役会等に業務上におけるコンプライアンス遵守状況についての報告を行い、取締役会等においてもコンプライアンス遵守状況を継続して確認してまいります。 【実施・運用状況】 2021 年8月2日、10 月8日、12 月 17 日の計3回、当社内の全社集会において社長から全社員に対して、本件事案への対応の進捗報告や再発防止策、コンプライアンスについてのスピーチを行いました。全社集会後、社長から当該スピーチの内容を含む全社集会で使用した資料は全社員にメールで配信しており、管理部長からはコンプライアンスへの意識を高めていくことの意義についてのメッセージを改めて全社員向けにグループウェアを通して発信いたしました。 また、管理部においては再発防止の進捗状況およびコンプライアンスの遵守状況(決算手続きにおける法令・規程の遵守状況、内部通報制度の運用状況、コンプライアンス研修の実施状況など)について、2021 年9月以降、毎月開催される取締役会にて報告しております。 ② 役職員に対するコンプライアンスの意識改革 【改善報告書に記載した改善策】 上記Ⅱ.2.(2)①に記載のトップからのメッセージの継続的発信に加えて、コンプライアンス意識の維持向上のため、本件事案等を踏まえたコンプライアンス研修及びリスク管理研修を定期的に実施いたします。具体的には、管理部が主管して、毎年 4 月及び 10 月に終日開催される全体会の一部において弁護士等の専門家による研修を行ってまいります。この研修では、具体的にどのような事 例 が コ ン プ ラ イ ア ン ス 違 反 と な る か を QA 方 式 等 の 方 法 で テ ス ト す る と と も に 、 下 記Ⅱ.2.(2)③④に記載の面談を通じて本人の遵守意識状況を確認することを厳格に実行していまいります。なお、QA 作成は管理部中心に外部アドバイスを受けて作成し、テストの結果は管理部による評価を各部門長から部員へフィードバックしていくことを想定しております。 また、上記研修と共に他社具体例のケーススタディを中心に取り上げる e-learning によるオンライン研修を年1回以上実施することで、全役職員のコンプライアンス意識を向上させるよう取り組んでまいります。 【実施・運用状況】 2021 年 10 月 8 日に行われた全社集会において、弁護士資格を持ちコンプライアンスに関する豊富な知見を有する当社社外監査役が講師となって、コンプライアンス研修及びリスク管理研修を行いました。また、

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