グローリー(6457) – 社内調査委員会による調査結果公表に関するお知らせ

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開示日時:2022/03/14 15:00:00

損益

決算期 売上高 営業益 経常益 EPS
2018.03 22,736,100 1,961,600 1,988,500 155.96
2019.03 23,576,200 2,057,600 2,092,700 198.71
2020.03 22,417,000 1,792,700 1,798,500 148.31
2021.03 21,742,300 1,420,100 1,483,900 100.0

※金額の単位は[万円]

株価

前日終値 50日平均 200日平均 実績PER 予想PER
2,225.0 2,233.12 2,330.395 15.21 11.61

※金額の単位は[円]

キャッシュフロー

決算期 フリーCF 営業CF
2018.03 676,900 1,458,500
2019.03 1,672,900 2,430,000
2020.03 1,694,200 2,506,200
2021.03 2,028,900 2,875,300

※金額の単位は[万円]

▼テキスト箇所の抽出

2022 年3月 14 日 会 社 名 グ ロ ー リ ー 株 式 会 社 代 表 者 代表取締役社長 三 和 元 純 本社所 在地 兵庫県姫路市下手野一丁目3番1号 コード 番号 6457 上場取 引所 東証第一部 決 算 期 3月 問 合 せ 先 経営戦略本部 コーポレートコミュニ ケ ー シ ョ ン 部 長 南 山 隆 敏 T E L ( 0 7 9 ) 2 9 4 - 6 3 1 7 社内調査委員会による調査結果公表に関するお知らせ 当社は、本年2月9日公表の「社内調査委員会設置に関するお知らせ」のとおり、当社連結子会社において元従業員による金銭横領(以下「本件」という。)が行われていた事実が判明したことから、当社取締役監査等委員会委員長を委員長とし、履行補助者として外部の弁護士・公認会計士等を起用した社内調査委員会(以下「本調査委員会」)を設置し、本件に係る事実関係の解明、発生原因及び問題点の調査分析等を行ってまいりまし本日、本調査委員会より調査報告書の提出を受けましたので、下記のとおりお知らせいたします。 株主、お取引先様をはじめとする関係者のみなさまには、多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを改めて深くお詫び申しあげます。当社は、今回の事態に至りましたことを真摯に受け止め、本委員会による調査結果及び提言された再発防止策の内容を踏まえ、実効性のある再発防止策を策定し、実行してまいります。 1.本調査委員会の調査結果 記 本調査委員会の調査結果につきましては、添付の「調査報告書」をご覧ください。 なお、プライバシー及び機密情報保護等の観点から、個人名及び会社名等につきましては、部分的な非開示措置を施しております。 2.連結業績への影響 本件調査結果公表を受けて、本日、過年度の決算短信等、有価証券報告書等、内部統制報告書の訂正報告書、ならびに、2022 年3月期第3四半期 決算短信及び四半期報告書の提出を行います。 以 上 各 位 た。 1 (添付資料) 調査報告書 調査報告書 (公表版) 2022 年 3 月 14 日 グローリー株式会社 社内調査委員会 目 次 1. 調査の概要 …………………………………………………………………………………………………………………. 1 1.1 当委員会設置の経緯 ……………………………………………………………………………………………. 1 1.2 調査目的 ……………………………………………………………………………………………………………… 1 1.3 当委員会の構成 …………………………………………………………………………………………………… 1 1.4 調査対象期間 ………………………………………………………………………………………………………. 2 1.5 調査方法等 ………………………………………………………………………………………………………….. 2 1.5.1 調査期間 ………………………………………………………………………………………………………….. 2 1.5.2 調査・検討対象 ……………………………………………………………………………………………….. 2 1.5.3 調査方法 ………………………………………………………………………………………………………….. 2 1.5.3.1 本件不正行為に係る役職員及びその他関係者へのヒアリング ………………. 2 1.5.3.2 関係資料、会計データ等の調査・分析 ………………………………………………….. 3 1.5.3.3 デジタルフォレンジック調査・分析 ……………………………………………………… 3 1.5.3.4 グループ会社へのアンケート調査及び自主点検調査 …………………………….. 3 1.5.3.5 ホットラインの設置 ………………………………………………………………………………. 3 2. GS の概要 …………………………………………………………………………………………………………………… 4 2.1 概要 …………………………………………………………………………………………………………………….. 4 2.2 沿革 …………………………………………………………………………………………………………………….. 4 2.3 組織体制 ……………………………………………………………………………………………………………… 5 2.4 調査対象期間における総務部門の概要 ……………………………………………………………….. 6 2.4.1 総務統括部門及び総務部門の主な役職員 ………………………………………………………… 6 2.4.2 X の GS における所属・役職等 ……………………………………………………………………….. 6 2.5 調査対象期間における監査部門の概要 ……………………………………………………………….. 7 2.6 調査対象期間における姫路事務所長 …………………………………………………………………… 7 3. 本件不正行為について判明した事項 …………………………………………………………………………… 8 3.1 本件不正行為の全体像 ………………………………………………………………………………………… 8 3.2 本件不正行為(現金横領) …………………………………………………………………………………. 9 3.2.1 概要 …………………………………………………………………………………………………………………. 9 3.2.2 コインロッカー売上金について ………………………………………………………………………. 9 3.2.2.1 集金・入金の業務フロー ……………………………………………………………………….. 9 3.2.2.2 着服の手口 …………………………………………………………………………………………… 10 3.2.3 保険料について ……………………………………………………………………………………………… 12 3.2.3.1 集金・入金手続 ……………………………………………………………………………………. 12 3.2.3.2 着服の手口 …………………………………………………………………………………………… 13 3.2.4 本件不正行為(現金横領)による被害金額 …………………………………………………… 14 3.3 本件不正行為(預金横領) ……………………………………………………………………………….. 15 3.3.1 概要 ……………………………………………………………………………………………………………….. 15 3.3.2 GS における振込送金業務のフロー ……………………………………………………………….. 15 3.3.3 本件不正行為(預金横領)の手口 …………………………………………………………………. 15 3.3.4 本件不正行為(預金横領)による被害金額 …………………………………………………… 19 3.4 本件不正行為の発覚を防ぐための隠ぺい行為 …………………………………………………… 19 3.4.1 残高証明書の改ざん及び虚偽の差異調整表の作成 ………………………………………… 19 3.4.1.1 概要……………………………………………………………………………………………………… 19 3.4.1.2 預金残高に関する検閲の方法 ………………………………………………………………. 19 3.4.1.3 残高証明書の改ざん及び虚偽の調整表の作成の手法 …………………………… 20 3.4.2 不正な架空仕訳 ……………………………………………………………………………………………… 20 3.5 金銭的影響 ………………………………………………………………………………………………………… 21 3.6 横領金の使途(本件不正行為の動機) ……………………………………………………………… 21 4. 同種事案(本件不正行為に類似する不正行為)の有無 …………………………………………….. 22 5. 本件不正行為に係る原因(問題点)の分析及び再発防止策に係る提言 ……………………. 22 5.1 総論 …………………………………………………………………………………………………………………… 22 5.2 本件不正行為に係る直接的な原因(問題点)の分析及び再発防止策 ……………….. 22 5.2.1 本件不正行為に係る直接的な原因(問題点) ……………………………………………….. 22 5.2.1.1 長期に亘る経理業務の属人化・権限の集中化 ……………………………………… 22 5.2.1.2 現金の集金・銀行入金に係る業務フローにおける欠陥 ……………………….. 23 5.2.1.3 振込送金業務における経理規程の不遵守 …………………………………………….. 24 5.2.1.4 所属部署内における監督・牽制不足 ……………………………………………………. 24 5.2.1.5 GS 社内の内部統制一般に係るルール化及びその浸透に係る不十分さ … 25 5.2.2 再発防止策 …………………………………………………………………………………………………….. 25 5.2.2.1 業務の属人化・権限の集中化の回避 ……………………………………………………. 25 5.2.2.2 経理業務フローの確立 …………………………………………………………………………. 26 5.2.2.3 運用面における経理規程遵守の徹底 ……………………………………………………. 26 5.2.2.4 GS の管理職に対するトレーニング ……………………………………………………… 27 5.2.2.5 コンプライアンス教育 …………………………………………………………………………. 27 5.3 本件不正行為に係る背景的な原因(問題点)/再発防止策 ……………………………… 28 5.3.1 GS の総務統括部及び総務部が所管する職務に見合う人材の不足/適切な人材配置 28 5.3.2 グローリーの子会社与信判断における油断/与信業務の引締め …………………… 29 5.3.2.1 タームローン与信枠設定時の資金繰り表その他資料の分析不徹底/与信業務の実質化の徹底 ………………………………………………………………………………………….. 29 5.3.2.2 CMS 貸越枠超過時における対応の徹底不足/CMS 制度の早期実効化 .. 30 5.3.3 監査業務(監査役監査/グループ内部監査)における問題意識の希薄さ/監査業務の実質化 ……………………………………………………………………………………………………………….. 30 1. 調査の概要 1.1 当委員会設置の経緯 グローリー株式会社(以下「グローリー」という。)の国内連結子会社であるグローリーサービス株式会社(以下「GS」という。)において GS の従業員であった X による金銭横領(以下「本件不正行為」という。)が行われていた事実が判明した。 これを受けて、グローリーは、2022 年 2 月 8 日に、本件不正行為に係る事実関係の解明、発生原因及び問題点の調査分析、その他の同種事例の有無の調査等を行うために、社内調査委員会(以下「当委員会」という。)を設置した。 1.2 調査目的 当委員会の調査(以下「本件調査」という。)の目的は、以下のとおりである。 ① 本件不正行為に係る事実関係の認定、発生原因及び問題点の調査分析 ② GS 及びその他のグローリーグループ(グローリー及びその子会社をいう。以下同じ。)における同種事例の有無の調査 ③ 上記調査分析結果を踏まえた再発防止策の提言 1.3 当委員会の構成 当委員会の構成は、以下のとおりである。 委員長 藤田 亨(グローリー取締役監査等委員、監査等委員会委員長) 委員 山本勝則(グローリー常務執行役員総務本部長) 委員 藤川幸博(グローリー上席執行役員経理・財務本部長) また、当委員会は、本件調査を補助させるため、履行補助者として以下の外部専門家を起用した。 森田恒平(森・濱田松本法律事務所 弁護士) 若林功晃(同法律事務所 弁護士) 金村公樹(同法律事務所 弁護士) 進華菜子(同法律事務所 弁護士) 藤田大介(株式会社 KPMG FAS 公認会計士) 山口孝之(同社 公認会計士) 床井宏行(同社)ほか 14 名 1 当委員会は、本件調査の調査対象期間を、2009 年から 2022 年 2 月 3 日までとした。 1.4 調査対象期間 1.5 調査方法等 1.5.1 調査期間 1.5.2 調査・検討対象 当委員会は、2022 年 2 月 8 日から 2022 年 3 月 13 日までの間、本件調査を行った。 当委員会は、①関係者に対するヒアリング及び関係資料等の閲覧、②会計データ等の調査・分析、③デジタルフォレンジック調査・分析、④Ⅹから任意に提出を受けた私物・データ(私用携帯電話、通帳、馬券購入履歴等)の調査・分析等の実施により、本件調査の目的である本件不正行為に係る事実認定を行い、本件不正行為に係る会計処理の修正の要否を把握・検討した。さらに、グローリーグループにおける本件不正行為に類似する不正行為その他の不正行為の有無について調査を行った。 以上の調査の結果を受け、当委員会は、本件調査の結果判明した本件不正行為について、原因分析及び再発防止策の検討を行った。 1.5.3 調査方法 当委員会が実施した調査の具体的な内容は、以下のとおりである。 1.5.3.1 本件不正行為に係る役職員及びその他関係者へのヒアリング 当委員会が本件調査において本件不正行為に関する事項を聴取事項として実施したヒアリングの対象者は、以下の者(合計 8 名)である。なお、対象者によっては、必要性に応じて複数回のヒアリングを実施した。 なお、役職は、本件調査開始時である 2022 年 2 月 8 日時点のものである。 対象者 所属・役職等 グローリー a b GS X 田中英登 A B C D 財務部長 監査部員 総務部総務課課長代理、総務部姫路事務所長 代表取締役社長 取締役、総務統括部長 総務部長兼総務課長 総務部担当部長 監査役、グローリー監査部長 2 1.5.3.2 関係資料、会計データ等の調査・分析 当委員会は、本件不正行為に関し、GS 及びグローリーグループ各社の社内規程、報告書、各会議体の議事録・会議資料、会計データ、及び各種証憑書類等の関係資料について、必要また、上記のほか、X から任意に提出を受けた私物・データ(私用携帯電話、通帳、馬券と認める範囲で閲覧及び検討を行った。 購入履歴等)の閲覧及び検討を行った。 1.5.3.3 デジタルフォレンジック調査・分析 当委員会は、X のコミュニケーション関連データ及びドキュメントデータの解析を行うため、X の会社貸与パソコン、会社貸与携帯電話、USB フラッシュメモリ、メールサーバ上の電子メールデータ及び私用携帯電話の保全を実施した。また、保全したデータに対し、削除データの復元処理を実施した後、電子メール、チャット等のコミュニケーション関連データ等を抽出した。これらのデータについては、レビュー環境においてインデックス処理(全文検索のための下処理)を施した上で、2012 年 1 月 1 日以降のコミュニケーション関連データに対しキーワードによる検索を行い、分析及び検討を行った。 1.5.3.4 グループ会社へのアンケート調査及び自主点検調査 当委員会は、本件不正行為に類似する不正行為の有無を確認するため、グローリーグループ各社に対し、財務及び経理業務に関するアンケート調査を実施した。また、グローリーグループ各社に対し、預金残高と帳簿残高の一致に関し自主点検調査を依頼した。 1.5.3.5 ホットラインの設置 当委員会は、当委員会の履行補助者である森・濱田松本法律事務所所属の弁護士(海外子会社については社内弁護士も含む。)を通報窓口とするホットラインを設置し、グローリーグループ各社の役職員に対して、本件不正行為に類似する不正行為に係る情報の提供を求めた。 3 2. GS の概要 2.1 概要 GS の概要は下表のとおりである。 会社名 決算期 株主構成 資本金 代表者 本店所在地 事業内容 グローリーサービス株式会社 3 月決算 グローリー株式会社(100%) 4,000 万円 田中英登 大阪市北区西天満 4 丁目 8 番 17 号 宇治電ビル 5F ・ ロッカー事業 コインロッカーのオペレーション・メンテナンス付リース・レンタル・販売・保守 両替機、券売機、鍵管理機や硬貨計数機等の販売・保守 社員食堂及び外食産業向け IC カードシステム、プリペイドカードシステム、食券自動販売システム機器の企画・設計・ソフト開発・販売・保守 ・ 社食決済事業 ・ 保険代理店事業 2.2 沿革 GS の沿革の概要は下表のとおりである。 時期 概要 1918 年 3 月 国栄機械製作所(現グローリー株式会社)創業 1957 年 3 月 国栄商事株式会社(現グローリー株式会社)設立 1969 年 3 月 コインロッカーのオペレーション及び販売部門を国栄商事株式会社(現グローリー株式会社)から分離する形で、グローリーサービス株式会社設立 1971 年 12 月 名古屋営業所開設 1972 年 9 月 東京支店開設 1975 年 3 月 福岡出張所(現福岡営業所)開設 1988 年 4 月 広島出張所(現広島営業所)開設 1993 年 10 月 岡山営業所(後の岡山駐在所)開設 1994 年 4 月 本社部門より大阪支店を分離 1995 年 4 月 仙台営業所開設 2008 年 3 月 姫路事務所開設 2012 年 4 月 グローリーサービス株式会社を存続会社として、グループ会社のグローリーF&C 株式会社と統合 2013 年 1 月 岡山駐在所を広島営業所と統合 2014 年 9 月 広島営業所を移転 2016 年 3 月 名古屋営業所を移転 2017 年 3 月 本社及び大阪支店を移転 2019 年 10 月 高崎出張所を開設 4 2.3 組織体制 現在の GS の組織体制のうち、本件調査に関連する体制の概要は以下のとおりである。 5 2.4 調査対象期間における総務部門の概要 2.4.1 総務統括部門及び総務部門の主な役職員 調査対象期間における GS の総務統括部門及び総務部門において総務課長以上の役職にあった従業員の氏名及び役職並びに X の役職は下表のとおりである。なお、GS の総務統括部門及び総務部門の所管業務には経理業務が含まれる。 総務統括部長 総務課長 X の役職 時期 2009 年 4 月 ~2010 年 6 月 2010 年 7 月 ~2011 年 6 月 2011 年 7 月 ~2012 年 3 月 2012 年 4 月 ~2015 年 3 月 2015 年 4 月 ~2017 年 6 月 2017 年 6 月 ~2019 年 3 月 2019 年 4 月 ~2020 年 3 月 2020 年 4 月 ~2021 年 2 月 2021 年 4 月 ~2022 年 3 月 11 日 - - - 取締役 H 取締役 H 取締役 A 取締役 A 取締役 A 取締役 A 総務部長 専務取締役 E 次長 C 取締役 F 次長 C 代表取締役 G 次長 C 取締役 H 副部長 C C C C C B 担当部長:C C C C C C C C C B 総務課員 総務課員 総務課員 総務課員 総務課長代理 総務課長代理 総務課長代理 総務課長代理 総務課長代理 姫路事務所長 2.4.2 X の GS における所属・役職等 X の GS への入社から 2022 年 3 月 11 日までの経緯は、下表のとおりである。なお、X は、入社当初より、総務部が所管する経理業務の支払・資金管理の主たる部分を担当していた。 時期 2005 年 7 月 22 日 2005 年 7 月~2015 年 3 月 2015 年 4 月~2021 年 3 月 2021 年 4 月~2022 年 3 月 11 日 所属・役職等 入社 総務課員 総務課長代理 総務課長代理兼姫路事務所長 6 2.5 調査対象期間における監査部門の概要 調査対象期間における GS の監査役は下表のとおりである。 監査役 時期 2007 年 6 月~2011 年 6 月 2011 年 6 月~2017 年 6 月 2017 年 6 月~2019 年 6 月 2019 年 6 月~現在 時期 2005 年 4 月 ~2010 年 3 月 2010 年 4 月 ~2011 年 3 月 2011 年 4 月 ~2015 年 3 月 2015 年 4 月 ~2020 年 3 月 c d e b また、調査対象期間におけるグローリー監査部(グループ内部監査担当部署)の部長及びGS に対するグローリーによるグループ内部監査の実施状況は下表のとおりである。 グローリー監査部長 グループ内部監査実施状況 2009 年度:業務監査 - 2011 年度:業務監査 2012 年度:業務監査 2015 年度:業務監査 2016 年度:業務監査 2017 年度: J-SOX 監査(期中及び期末) 2018 年度: J-SOX 監査(期中及び期末) 2019 年度:業務監査 J-SOX 監査(期中及び期末) J-SOX 監査(期中及び期末) 2021 年度: J-SOX 監査(期中) 2020 年 4 月~現在 D 2020 年度:業務監査 2.6 調査対象期間における姫路事務所長 調査対象期間における GS の姫路事務所長は下表のとおりである。 姫路事務所長 時期 2009 年 4 月~2010 年 6 月 2010 年 7 月~2021 年 3 月 2021 年 4 月~現在 I A b D E C X 7 3. 本件不正行為について判明した事項 3.1 本件不正行為の全体像 本件不正行為は、GS の総務部所属の従業員であった X が、2009 年頃より 2022 年 2 月 3日までの間に、GS の現預金を着服することにより横領したというものである。 本件不正行為は、大きく分けて以下の 2 つの手口により行われていた。 ① X が、2009 年頃より 2022 年 2 月上旬までの間に、GS の現金(売上金、保険料)を、GS の従業員から直接預かったまま投入式金庫(投込み金庫)1への投入若しくは GSの銀行口座への入金をせずに着服するか、又は GS の投込み金庫内に保管されている現金を自ら管理している投込み金庫の鍵を用いて抜き取ることにより着服する方法(下記 3.2 参照。以下「本件不正行為(現金横領)」という。) ② X が、2020 年 7 月 16 日より 2022 年 2 月 3 日までの間に、GS が Y 銀行に開設する当座預金口座(以下「GS 口座(Y 銀行)」という。)に預け入れられている預金を、ネットバンキングシステムを利用して、同口座から X 個人が W 銀行に開設する口座(以下「X 口座(W 銀行)」という。)に振込送金を行うことにより着服する方法(下記 3.3 参照。以下「本件不正行為(預金横領)」という。) X は、本件不正行為が発覚することを防ぐために、上長が確認する GS 口座(Y 銀行)の残高証明書及び当該証明書に添付する帳簿残高との間の差異調整表その他の資料を改ざんし、また、会計仕訳を操作する等の隠ぺい工作を行っていた。 本件不正行為が発覚した端緒は次のとおりである。すなわち、GS は、会計帳簿上は預金残高が相当金額計上されているにもかかわらず、グローリーグループのキャッシュ・マネジメント・システム(以下「CMS」という。)においては、その 2020 年 5 月の導入当初から、GS に対して予め定められた CMS 上の貸越限度枠(以下「CMS 貸越枠」という。GS 向けのCMS 貸越枠は 4.5 億円であった。)が超過間近又は超過の状態となる事態が頻発していたことから、グローリー財務部の担当者は、その都度、適宜グローリー及び GS の責任者も交えつつ、GS の資金管理担当であった X 及び X の上長に対して警告を行うとともに、貸越状態の早期是正を申し入れていた。ところが、かかる状況は度重なる警告・是正の申入れによっても改善されず、2021 年 12 月中も X は CMS を操作するパソコンの不具合により対応が遅れている等の説明を繰り返していた。同年 12 月末に一旦 CMS 貸越枠の超過状態は解消されたものの、2022 年 1 月に再び当該 CMS 貸越枠を超えたため、グローリー財務部長及びX の上長が連携して直接対応にあたり、GS 口座(Y 銀行)の取引明細を取得・確認したところ、当該取引明細に記録された振込先の一部に X 口座(W 銀行)が確認された。 本件不正行為による GS の被害総額は 2,155,444,809 円であり、預金勘定の減額及び X に1 GS の事業所内には金庫が複数あるが、コインロッカー売上金や保険料を銀行口座に入金するまでの間、一時的に保管する目的で使用されていた投入式金庫は「投込み金庫」と呼ばれており、以下では、本報告書においてもその通称を使用している。 8 3.2 対する長期未収入金の増額等の訂正を要する。 本件不正行為(現金横領) 3.2.1 概要 GS のコインロッカー事業においては、駅の構内等にコインロッカーを設置し、その売上金を GS の技術部員2が集金し、GS の投込み金庫内で一旦保管した上で、定期的に GS 口座(Y 銀行)に入金している。また、GS は姫路事務所において保険代理店業務を行っており、保険契約者から受け取った保険料を姫路事務所長が GS の本社に持ち帰り、コインロッカーの売上金と同様、投込み金庫内で一旦保管した上で、定期的に GS 口座(Y 銀行)に入金している。 本件不正行為(現金横領)の手口は、GS の総務課員(2015 年 4 月からは総務課長代理/2021 年 4 月からは姫路事務所長兼務)であった X が、2009 年頃から 2022 年 2 月上旬までの間、GS の従業員から直接現金を預かったまま、投込み金庫への投入若しくは GS の銀行口座への入金をせずに着服するか、又は GS の投込み金庫内に保管されている現金を自ら管理している投込み金庫の鍵を用いて抜き取ることにより着服する方法により、GS のコインロッカー事業の売上金(以下「コインロッカー売上金」という。)及び保険代理店事業において集金した保険料の合計 569,444,809 円を横領していたというものである。 なお、X は、抜き取った現金を GS 本社内の X のロッカーや机の中に特に施錠することもないまま保管した後に、自宅等に持ち帰り、又はコンビニエンスストア3に設置されているATM を利用し自らの銀行口座(主に X 口座(W 銀行))に入金していた。 3.2.2 コインロッカー売上金について 3.2.2.1 集金・入金の業務フロー GS の社内規程(GS の実務要領、各種マニュアル類を含む。以下同じ。)及びヒアリングによれば、GS 本社における、コインロッカー売上金が集金され、GS 口座(Y 銀行)に入金されるまでの業務フローは大要以下のとおりである。X は、本件不正行為(現金横領)を行っていた期間、下記業務を担当する総務課員(2015 年 4 月からは総務課長代理)であった。 ① 技術部員は、コインロッカーから売上金を回収する際、コインロッカーから出力されるジャーナル(以下「集計ジャーナル」という。)や顧客との協議等を踏まえて予め定めた方法に基づき、コインロッカー使用料計算書を作成する。 2 技術部員は、売上金の集金業務のほか、担当地域における保守活動に関する業務として、顧客からのメンテナンス依頼の対応、修復作業の実施、オペレーション業務の実施、コインロッカーの品質維持の定期点検、納品設置作業等を行っている。 3 入金に利用したコンビニエンスストアはローソン・ファミリーマート等複数あるが、その中には GS 本社の眼前にあるローソンも含まれていた。 9 ② 技術部員は、GS 本社に持ち帰ったコインロッカー売上金のうち硬貨について、硬貨計数機を用いて合計金額を計算し、計算結果が記載されたジャーナル(以下「精算ジャーナル」という。)をジャーナルプリンターで出力する。その上で、技術部員は、コインロッカーの売上金のうち紙幣については、紙幣計数機を用いて枚数を数え、精算ジャーナルにその合計金額を記入する。 ③ 技術部員は、コインロッカー売上金を、自ら投込み金庫に投入する。もっとも、X によれば、実際には、技術部員は総務課員が発行する領収証の受領と引き換えに総務課員にコインロッカー売上金を手渡し、総務課員が投込み金庫に投入する場合もあるとのこ④ 技術部員は、上記①のコインロッカー使用料計算書の裏面に、上記①の集計ジャーナルと上記②の精算ジャーナルを添付し、総務課員(X)に渡す。 ⑤ 技術部員は、売上管理システムにおいて自らが集金したコインロッカーの売上を計上⑥ 総務課員は、受領したコインロッカー使用料計算書に添付された精算ジャーナルの数値と技術部員が売上管理システムに入力した数値の突合を行い、会計上の入金処理をとである。 する。 行う4。 ⑦ 投込み金庫内に保管されたコインロッカー売上金は、GS より委託を受けた外注先 V が定期的に回収し、銀行に持ち運び、GS 口座(Y 銀行)に入金する。なお、外注先 V への委託を開始した 2011 年以前は、総務課員複数人で投込み金庫内の現金を袋に入れて、銀行に持ち運び、GS 口座(Y 銀行)へ入金していた。また、総務課員は、GS 口座(Y銀行)への入金前に、硬貨計数機・紙幣計数機を用いて入金に供する現金の再集計を行うこととしており、外注先 V への委託開始後は当該再集計結果を外注先 V にも共有していた。 3.2.2.2 着服の手口 (1) 技術部員から手渡された現金の着服 上記 3.2.2.1 のとおり、回収されたコインロッカー売上金の全てが必ずしも技術部員により直接投込み金庫に入れられるわけではなく、技術部員によっては X が発行する領収証の受領と引き換えに X に手渡しする場合もある。X は、かかる状況を奇貨として、2009 年頃から、技術部員から手渡されたかかる売上金を、本来投込み金庫に入れた上で保管すべきところ、自らの机に入れて保管し、そのまま着服していた5。 X によれば、着服を始めた頃は、会計の締め日までに着服した現金を投込み金庫に戻せば4 技術部員が売上管理システムにおいて売上を計上する際に計上された売掛金は、総務課員により会計上の預金に振り替えられる。 5 この場合でも技術部員がジャーナルに基づき売上管理システムにおいて売上を計上する。 10 (2) 良いと考えており、実際に最初に着服した数千円は後日補填したが、着服した金額が大きくなるにつれて着服した金額分の金銭を戻すこと(あるいは具体的な着服金額の把握)ができなくなり、着服開始から 1 年以内には戻すことを止めたとのことである。 投込み金庫内の現金の着服 X は、上記(1)の手口による着服を開始した数か月後(2009 年~2010 年頃)から、技術部員から直接手渡された現金だけではなく6、投込み金庫内に保管されている現金の着服も始めた。着服行為は、外注先 V に対する銀行入金作業の委託開始後も継続した。 上記 3.2.2.1 のとおりコインロッカー売上金は、技術部員が回収して GS 本社に持ち帰り、その後投込み金庫において保管される。GS 本社の投込み金庫の鍵については、総務統括部長が管理責任者、X が管理者となっていたが、実態としては X が自由に投込み金庫を開けることができる状況にあり、管理責任者である総務統括部長は実質的に管理を行っていない状況にあったため、X はかかる状況を奇貨としてこのような着服行為に及んでいたものである。 (3) 売上金額と銀行入金額の突合作業の不実施 上記 3.3.2.1 のとおり、コインロッカー売上金は、技術部員が売上管理システムに入力することにより売上計上しており、X は、上記(1)及び(2)の手口により、売上として計上済みのコインロッカー売上金の全部又は一部を着服していたことになるため、かかる着服の事実を前提としても、帳簿上管理されている売上金及び現預金額は、本来あるべき数値(着服されなかった場合の数値)と一致することになる。 それにもかかわらず、上記(1)及び(2)の着服行為が可能であった(あるいは、その発覚が回避された)背景には、売上として社内システムに入力される金額(実際に回収された売上金額)と投込み金庫内に実在する現金の額(実際に銀行に預金として入金される金額)との突合が行われていなかった状況があり、X はかかる状況(上記(2)の着服行為については上記(2)の投込み金庫の管理状況も併せて)を奇貨として着服行為に及んでいたものである。 GS の C が総務課長に就任する 2008 年 7 月より前(外注先 V への委託開始以前)は、GSの総務課員が自ら投込み金庫内の現金を取り出して銀行口座への入金作業を行うに先立って再集計作業を行った上で、各精算ジャーナルにより記録された売上金の合計額と銀行口座に入金される金額との突合作業が行われていた。この突合作業は、社内規程に定められたルールではないが、総務部における運用として、複数人で、銀行口座への入金作業を行う直前に行われていた。具体的には、C の前任の総務課長である J が GS に在籍していた頃は、J と X 等の複数人で突合作業を行っていたが、遅くとも C が総務課長に就任した 2008 年 76 X によれば、投込み金庫内の現金の着服を始めてからも、技術部員から手渡された現金の着服(上記(1))は継続していたとのことである。 11 月以降は、C は、銀行口座に入金する金額の再集計作業に関与するだけで、再集計後の金額と各精算ジャーナルにより記録された売上金の合計額(投込み金庫内に保管されている現金として本来あるべき金額)との突合作業を行わず、部下にその指示をすることもなかったため、X や他の総務課員も、かかる突合作業を行わなくなった。なお、C の後任総務部長兼課長である B も、その就任後本件不正行為が発覚するに至るまで、(就任に際して、C その他から当該突合作業を含む経理業務全般に関する業務引継自体が一切行われなかった事情があるとはいえ)上記突合作業を行うことはなく、部下に行わせることもなかった。したがって、売上金額と銀行入金前における投込み金庫内の現金の額に相違があることを X 以外は認識し得ない状況となっていた。 また、2011 年に投込み金庫内の現金の回収・銀行口座への入金作業を外注先 V に委託するようになって以降の運用においては、外注先 V が回収する際、投込み金庫内の現金は袋に入れられており、その総額が記載された紙(銀行入金に先立って行われる再集計作業の結果が記載されたもの)とともに外注先 V に交付されていた。外注先 V は回収時に投込み金庫内にある現金を袋のまま銀行に持ち込んで GS 口座(Y 銀行)に入金する業務を行うだけであり、受領した現金の額(GS 口座(Y 銀行)への入金額)が、技術部員がコインロッカー売上金を投込み金庫に投入する際に出力・作成される精算ジャーナルの合計金額(帳簿上記録された売上金額と一致)と合致しているかは知り得なかった。そこで、X は、外注先 Vに対して X が現金を抜きとった後の投込み金庫内の現金の総額を記載した紙(銀行入金に先立って行われる再集計作業の結果が記載されたもの)を交付することとし、外注先 V は、GS 口座(Y 銀行)への入金後、当該入金額(これは X が現金を抜き取った後の総額と一致する)の明細を GS に交付していたため、外注先 V において本件不正行為(現金横領)に気付く余地はなかった。なお、外注先 V への投込み金庫内の現金交付に先立つ再集計作業において使用する硬貨計数機から出力される精算ジャーナルについては、X によって破棄されていた。 したがって、外注先 V への委託後も、売上金額(投込み金庫内に本来あるべき金額)と銀行入金前に実際に投込み金庫内に保管されていた現金の額に相違があることを X 以外は認識し得ないという状況は継続していた。 3.2.3 保険料について 3.2.3.1 集金・入金手続 GS は姫路事務所において保険代理店事業を行っている。当該事業の運用上、GS 姫路事務所が保険契約者から保険料を現金で受領する場合がある7ところ、ヒアリングによれば、現金で受領する保険料が GS 口座(Y 銀行)に入金されるまでの業務フローは大要以下のと7 保険料の受領は、大半が振込送金の方法により行われており、現金交付の方法で受領することは例外的 なケースである。 12 おりである。X は、本件不正行為(現金横領)を行っていた期間、下記業務を担当する総務課員(2015 年 4 月からは総務課長代理)であり、2021 年 4 月からは姫路事務所長を兼務し① 姫路事務所従業員が保険契約者から保険料として現金を受領し、保険契約者に領収証ていた。 を交付する。 ② 姫路事務所従業員は、保険契約者に交付した領収証の電子データ又は情報を GS 本社の保険担当者にメールで送信する。 ③ 上記②のメールを確認した GS 本社の保険担当者(又は当該担当者から情報の共有を受けた X)は、領収証記載の保険料相当額を GS 口座(Y 銀行)から GS が Y 銀行に開設する保険専用口座に振替処理する。 ④ 姫路事務所長が、定期的に、保険料として受領し姫路事務所で保管されていた現金を回収し、GS 本社に持ち帰り、総務課員に手渡す8。 ⑤ 総務課員が当該保険料に関する会計上の入金処理を行い、現金を投込み金庫に投入する。 ⑥ 投込み金庫内に保管された保険料は、外注先 V が投込み金庫内に保管された他の現金と合わせて定期的に回収し、銀行に持ち運び、GS 口座(Y 銀行)に入金する。なお、外注先 V への委託を開始した 2011 年以前は、総務課員複数人で投込み金庫内の現金を袋に入れて、GS 口座(Y 銀行)に入金していた。 3.2.3.2 着服の手口 (1) 姫路事務所長から手渡され又は自ら持ち帰った現金の着服 上記 3.2.3.1 のとおり、姫路事務所において保険料として回収された現金は、姫路事務所長が総務課員であった X に手渡していた。X は、かかる状況を奇貨として、当該現金を本来投込み金庫において保管すべきところ、投込み金庫に投入せずそのまま着服していた。 また、X が姫路事務所長に就任した 2021 年 4 月以降は、X 自らが姫路事務所から保険料を持ち帰り、本来投込み金庫において保管すべきところ、投込み金庫に投入せずそのまま着服していた9。 (2) 投込み金庫内の現金の着服 X は、上記 3.2.3.1 の運用に従い、姫路事務所長から直接手渡された現金を投込み金庫内に投入することもあったものの、上記 3.2.2.2(2)のとおり投込み金庫を自由に開けることが 8 X が姫路事務所長であった 2021 年 4 月以降は、X 自らが定期的(月 1 回程度)に、保険料として支払われ姫路事務所で保管されていた現金を回収していた。 9 X が姫路事務所長に就任する以前も含め、領収証記載の保険料相当額は会計上の預金に振り替えられており、会計上はあるべき処理がなされていた。 13 (3) こともあった。 できたため、その後に、投込み金庫内に保管されている現金を抜き取ることにより着服する突合作業の不実施による発覚の回避 上記 3.2.3.2(2)のとおり、遅くとも C が総務課長に就任した 2008 年 7 月以降は、投込み金庫内に保管されている現金として本来あるべき金額(コインロッカー売上金として精算ジャーナルにより記録された売上金の合計額に、領収証に記載された保険料合計額を合計した金額)と、GS 口座(Y 銀行)に入金される金額との突合作業は行われておらず、かつ、投込み金庫内の現金の回収・銀行口座への入金作業を外注先 V に委託するようになった2011 年以降においても、外注先 V は回収時に投込み金庫内にある現金を銀行に持ち込んでGS 口座(Y 銀行)に入金する業務を行うだけで、GS 口座(Y 銀行)への入金額が本来投込み金庫内に保管されているべき金額と合致しているかを知り得ない状況であったため、本来投込み金庫内に保管されているべき金額と、(X により現金を抜き取られた後の)投込み金庫内に保管されていた金額に差が生じていることについては、X を除き誰も把握していない状況であった。また、投込み金庫内に保管されたコインロッカー売上金と保険料は外注先 V にまとめて回収及び入金されるため、GS 口座(Y 銀行)の取引明細上、両者の金額の合計額が入金額として記載されるのみで両者は区別されていない。従って、GS 口座(Y 銀行)から GS の保険専用口座に振替処理された保険料相当額が、後日 GS 口座(Y 銀行)に実際に入金され充当されているかについても、誰も把握していない状況であった。X は、このような状況を奇貨として、投込み金庫内の現金がまとめて GS 口座(Y 銀行)に入金されるまでの間に、自らが鍵を管理している投込み金庫内から保険料として収受した現金の全部又は一部を抜き取っていた。X は、抜き取った現金を、GS 本社内の X のロッカーや机の中に特に施錠することもないまま保管した後に、自宅等に持ち帰る、又はコンビニエンスストアに設置されている ATM を利用し自らの銀行口座(主に X 口座(W 銀行))に入金する方法により着服していた。 3.2.4 本件不正行為(現金横領)による被害金額 当委員会が本件調査に際して収集した GS が開設する銀行口座に係る残高証明書及び会計帳簿上の預金残高(下記 3.4.2 の不正な架空仕訳の解消作業を施し、かつ、下記 3.3.4 の本件不正行為(預金横領)による被害金額(1,586,000,000 円)を控除した後のもの)の突合結果に基づき、本件不正行為(現金横領)による被害金額は合計 569,444,809 円と算定した。 14 3.3 本件不正行為(預金横領) 3.3.1 概要 本件不正行為(預金横領)は、GS の総務課員(2015 年 4 月からは総務課長代理)であった X が、2020 年 7 月 16 日以降、GS 口座(Y 銀行)に預け入れられている GS の預金を、ネットバンキングシステムを利用して、同口座から X 口座(W 銀行)に振込送金する方法によって着服し、合計 1,586,000,000 円を横領していたというものである。 3.3.2 GS における振込送金業務のフロー GS の経理規程によれば、GS において、金銭(現金及び預金)の保管及び出納事務は出納担当者が行い、出納責任者がその指導・監督にあたることとされている。ここでいう出納担当者は総務部総務課員である X であった10。そして、出納担当者が金銭の支払を行う場合は、最終受取人からの請求書その他その取引を証する書類に基づいて、会計伝票により、出納責任者の承認を得て行うこととされている。また、金銭の支払いの際は、原則として、最終受取人の記名捺印ある領収証を受け取らなければならないが、銀行振込の方法により支払う場合には、出納責任者が特に必要と認めた場合を除き、領収証を銀行の振込証明をもって代えることができるとされている。さらに、出納担当者は、会計責任者が特に認めた以外の銀行勘定の調整等の業務に携わってはならないとも規定されている。 もっとも、GS においては、振込送金業務に係る出納責任者による承認というプロセスは徹底されておらず、実際には、出納担当者であった X が、何らの書類にも基づかず、また、出納責任者の承認を得ずに、単独で振込送金を行うことができる運用となっていた。なお、本件不正行為(預金横領)に用いられた GS 口座(Y 銀行)のネットバンキングシステムにおいては、X が経理業務を担当し始めた当初から、X の使用しているデスクトップ PC のみを当該システムに接続できる設定としており、送金処理及び承認について、X が単独で行うことが可能となっていた。 3.3.3 本件不正行為(預金横領)の手口 本件不正行為(預金横領)の手口は、X が、GS 口座(Y 銀行)から、X 口座(W 銀行)に対して、ネットバンキングシステムを利用して振込送金を行う方法によって、GS の預金を着服するというものである。 10 出納責任者については、経理規程において、「本社においては当該業務の主管部門長」であると記載されているが、GS 本社の経理業務の「主管部門」が総務課を指すのか、総務部を指すのか、総務統括部を指すのかは一義的に明確でない。また、経理規程において、「経理に関する総括責任者」は総務統括部長であると記載されているが、「経理責任者」がこれと同一であるかは明確でない。なお、ヒアリングで聴取した内容を総合すれば、GS 本社の経理業務に係る出納責任者は総務部長であると実質的に整理されているようにも思われたが、明確ではなかった。 15 2020.7.16~9.30 2020.10.1~12.31 2021.1.1 ~3.31 2021.4.1 ~6.30 2021.7.1 ~9.30 ~12.31 2022.1.1 ~2.3 合計 上記 3.3.2 のとおり、GS においては、GS の銀行口座からの振込送金業務は、出納担当者が、取引を証する書類に基づいて、会計伝票により、出納責任者の承認を得て行うこととされているが、実際には、かかる承認のプロセスは徹底されておらず、出納担当者であった Xが全て単独で行うことができる状況にあった。そのような状況を奇貨として、X は、2020 年7 月 16 日以降、GS 口座(Y 銀行)から X 口座(W 銀行)に対するネットバンキングシステムを利用した不正な振込送金を行うようになり、下表のとおり、2022 年 2 月 3 日までの間に合計 352 回にわたり、断続的にこれを継続した11。なお、下表のとおり、X は、不正な振込送金を行う傍ら、GS 口座(Y 銀行)に返金を行うこともあった。 年月日 振込送金額 振込返金額 累積被害金額 備考 73,650,000 円 3,900,000 円69,750,000 円 ・振込送金 36 回 141,720,000 円 3,600,000 円207,870,000 円 ・振込送金 47 回 158,470,000 円 4,800,000 円361,540,000 円 ・振込送金 56 回 227,010,000 円 27,860,000 円560,690,000 円 ・振込送金 52 回 143,150,000 円 0 円703,840,000 円 ・振込送金 45 回 2021.10.1 453,050,000 円 115,200,000 円1,041,690,000 円 ・振込送金 70 回 620,300,000 円 75,990,000 円1,586,000,000 円 ・振込送金 46 回 うち、総合振込 1 回 うち、総合振込 1 回 1,817,350,000 円 231,350,000 円 なお、GS 口座(Y 銀行)は、GS の顧客に対する支払等に用いられていた口座であるため、X は、口座残高が顧客への支払等のタイミングで必要となる買掛金等の総額に不足しないように留意しつつ、X 口座(W 銀行)に対して振込送金する金額を決めていた。 X 口座(W 銀行)への振込元として利用された GS 口座(Y 銀行)には、事業上の取引により入金される金銭のほか、GS がグローリーから借り入れた金銭が預け入れられており、当該金銭についても本件不正行為(預金横領)の原資になっていた。具体的には、①グローリーグループの CMS が導入された 2020 年 5 月以降においては、CMS 貸越枠(4.5 億円)に基づく短期借入金(以下「短期借入金①」という。)については、CMS における GS のリン11 本件不正行為(預金横領)における振込の方法としては、GS 口座(Y 銀行)から X 口座(W 銀行)のみに対する振込を行う方法のほか、総合振込を用いる方法も存在した。 16 ク口座として Z 銀行に開設された当座預金口座(以下「GS 口座(Z 銀行)」という。)に一旦振り込まれ、それが GS 口座(Y 銀行)に振替処理されており、また、②2020 年 7 月 20日以降においては、コロナ禍による業績悪化に起因する GS の運転資金不足等を理由として、別途 CMS 貸越枠(4.5 億円)に追加して承認・設定された与信枠に基づく短期借入金(以下「短期借入金②」という。)が、GS 口座(Y 銀行)に直接振り込まれるか又は GS 口座(Z 銀行)に一旦振り込まれた後に振替処理されていた。グローリーグループにおいては、グローリーの全子会社に対する CMS 貸越枠の総額として 73.7 億円が設定されており、短期借入金②に係る追加与信枠は、かかる CMS 貸越枠総額(73.7 億円)の範囲内であることを踏まえ、グローリーが、借入申請に係る GS の取締役会決議に基づき、GS から提出される資金繰り表その他の資料を確認した上で、グローリーの経理・財務本部長の決裁により段階的に増額され、貸付が実行されていた。 経緯は下表のとおりである。 短期借入金①及び短期借入金②の金額の推移及び GS に対して設定された追加与信枠の(単位:円) 年月 総額 短期借入金① 短期借入金② GS に対する追加与信枠の経緯2020.5.7 △10,084,893 △10,084,8930 ・ CMS 導入 2020.5 末 2020.6 末 41,723,156 41,723,1560 449,381,709 449,381,7090 ・ GS の 2020.6.16 付取締役会決2020.7 末 2020.8 末 2020.9 末 592,830,798 442,830,798150,000,000580,514,836 430,514,836150,000,000705,891,025 355,891,025350,000,0002020.10 末 804,442,518 404,442,518400,000,000 ・ GS の 2020.10.21 付取締役会2020.11 末 861,129,597 361,129,597500,000,0002020.12 末 1,005,932,048 355,932,048650,000,0002021.1 末 2021.2 末 1,090,276,244 340,276,244750,000,0001,172,820,401 422,820,401750,000,0002021.3 末 1,299,856,474 449,856,474850,000,000 ・ GS の 2021.3.25 付取締役会決議により短期借入金②の与信枠 4 億円設定の申込み ・ グローリーによる承認 決議により短期借入金②の与信枠 10 億円設定の申込み・ グローリーによる承認 議により短期借入金②の与信枠 12 億円設定の申込み ・ グローリーによる承認 17 年月 総額 短期借入金① 短期借入金② GS に対する追加与信枠の経緯2021.4 末 1,212,828,253 12,828,2531,200,000,0002021.5 末 1,202,974,641 2,974,6411,200,000,0002021.6 末 2021.7 末 2021.8 末 2021.9 末 1,456,154,152 256,154,1521,200,000,0001,503,483,924 303,483,9241,200,000,0001,410,680,580 210,680,5801,200,000,0001,622,090,261 422,090,2611,200,000,0002021.10 末 1,488,891,506 288,891,5061,200,000,0002021.11 末 1,478,841,571 278,841,5711,200,000,0002021.12 末 1,610,750,146 410,750,1461,200,000,0002022.1 末 2,101,304,395 901,304,3951,200,000,000 2022.2.3 2,156,879,609 956,879,6091,200,000,000 ・ 最後に本件不正行為(預金横領)が行われた日 グローリーグループの CMS は 2020 年 5 月に導入されたものであり、GS には、CMS を通じて CMS 貸越枠 4.5 億円の範囲で必要資金が自動的に補充される。また、GS においては、CMS に用いられる銀行口座(GS 口座(Z 銀行))と事業運営上の資金管理においてメインで用いられる銀行口座(GS 口座(Y 銀行))とが異なるため、CMS に用いられる銀行口座の残高をマイナスとすることが可能であり、マイナスの残高は翌営業日に補充されることから、メインで用いられる GS 口座(Y 銀行)に帳簿上多額の預金が計上されているにもかかわらず、CMS に用いられる GS 口座(Z 銀行)の残高をマイナスとすることによりグローリーから CMS に基づく貸越(借入)を受けることができた。かかる状況は、グローリーグループの CMS が 2020 年 5 月に導入されて以降、グループ会社が開設する銀行口座間の資金移動を把握可能とすること等、その実効化に向けたプロセスの途上であったことが寄与した側面もある。 なお、X は、会計帳簿上の現預金の額と GS 口座(Y 銀行)の残高が合致していないことが発覚しないよう、残高証明書及び当該証明書に添付する帳簿残高との間の差異調整表の改ざん(詳細は下記 3.4.1 参照)や、会計帳簿上の現預金の額を減少させるための不正な架空仕訳(詳細は下記 3.4.2 参照)を行う等、本件不正行為(預金横領)の発覚を防ぐための隠ぺい行為を行っていた。また、X は、GS 内及びグローリーに対する運転資金需要の説明に供された資金繰り表の作成を担当したが、短期借入金②に係る追加与信枠設定のグローリーによる承認に向けて、当該資金繰り表において、現預金の金額として(X による着服により減少した)実際の現預金の額ではなく、虚偽となっていた帳簿上の現預金の額を記載するとともに、売上げ、事業運営に要する各種費用等の各種科目においても、専ら自らの着服事実を隠ぺいする目的のもと、合理的な見込みと異なる(収入面については不合理に過少な、支出面については不合理に過大な)数値を記載していたものと思われる。 18 3.3.4 本件不正行為(預金横領)による被害金額 GS 口座(Y 銀行)に係る取引明細及び振込明細表並びに X 口座(W 銀行)に係る取引明細に基づき、本件不正行為(預金横領)による被害金額は合計 1,586,000,000 円と算定した。 3.4 本件不正行為の発覚を防ぐための隠ぺい行為 X は、自らによる現預金の着服によって GS の会計帳簿上の現預金の額と GS 口座(Y 銀行)の残高が合致していないことが判明しないよう隠ぺい行為を行っていた。かかる隠ぺい行為には、残高証明書の改ざん及び虚偽の差異調整表(残高証明書に添付するもの)の作成(下記 3.4.1)並びに会計帳簿上の現預金の額を減少させるための不正な架空仕訳(下記 3.4.2)が含まれる。 3.4.1.1 概要 いた。 3.4.1 残高証明書の改ざん及び虚偽の差異調整表の作成 X が本件不正行為を行っていた時期の上長である総務課長、総務部長及び総務統括部長は、いずれも残高証明書の確認により現預金に係るモニタリングをしていたため、X は、本件不正行為の発覚を防ぐため、残高証明書の改ざん及び虚偽の差異調整表の作成を行って3.4.1.2 預金残高に関する検閲の方法 GS の経理規程によれば、出納責任者は、出納担当者又は小口現金保管責任者による出納及び在高照合の手続について、定期又は不定期に検閲を行わなければならないとされ、銀行勘定に関しては、毎月末現在の帳簿残高と銀行残高について、必要と認めた照合・検閲手続を行うこととされている。また、その方法として、出納担当者は、毎期末には預金残高証明書を徴し、その残高及び帳簿との間の差異調整表を検討して、その結果を経理責任者に報告しなければならないとされている。上記 3.3.3 のとおり、ここでいう出納担当者とは総務課員であった X であり、出納責任者及び経理責任者は X の上長である12。 12 注 10 のとおり、出納責任者については、経理規程において、「本社においては当該業務の主管部門長」であると記載されているが、「主管部門」が総務課を指すのか、総務部を指すのか、総務統括部を指すのかは一義的に明確でない。また、経理規程において、「経理に関する総括責任者」は総務統括部長であると記載されているが、「経理責任者」がこれと同一であるかは明確でない。なお、ヒアリングで聴取した内容を総合すれば、GS 本社の経理業務に係る出納責任者は総務部長であると実質的に整理されているようにも思われたが、明確ではなかった。 19 3.4.1.3 残高証明書の改ざん及び虚偽の調整表の作成の手法 X は、X が Y 銀行から受領した残高証明書に記載されている金額を、X が現預金を着服していなければ存在するはずの残高(会計帳簿上の現預金の残高)に近い金額に改ざんしていた。具体的には、X は、残高証明書の原本に記載されている残高の金額欄に、数字が記載されている紙片を切り貼りすることで残高の金額の記載を偽り、切り貼り後の残高証明書をカラーコピーしたものを上長に提出していた。上長は、これを確認していたが、これが改ざんされたコピーであると気付かずに承認印を押していた。 また、上記 3.4.1.2 のとおり、残高証明書と会計帳簿上の現預金額との差異については調整表を用いて説明することとされているが、X は、虚偽の差異調整表を作成して残高証明書に添付することにより、改ざんされた残高

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